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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第四章:極星たちの休息と最強の姉編

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第255話:Eランク迷宮『ゴブリンの洞窟』と、本物の初心者たちの死闘

翌日の放課後。

東京郊外にあるEランク指定迷宮『ゴブリンの洞窟』の入り口前に、即席の五人パーティが集結していた。

「よし、全員揃ったな。いいかお前ら、今日から俺がこのパーティのリーダーだ。俺の指示には絶対に従うこと。分かったな?」

大剣を背負った少年・リョウタが、腕を組んで偉そうにふんぞり返る。

その隣では、弓使いのケンが鼻を鳴らし、魔法使いのアオイが少し緊張した面持ちで杖を握りしめていた。

「はい、よろしくお願いします、リーダー。俺と姉さんは荷物持ち(ポーター)に徹しますから」

如月拓也(きさらぎ たくや)は、無地のパーカーの上に『虚無蜘蛛(ヴォイド・スパイダー)』の絶対防衛コートを羽織り、ペコペコと愛想笑いを浮かべて頭を下げた。

その後ろでは、淡いグリーンのワンピース姿の姉・如月三月(きさらぎ みつき)が、ピクニックにでも行くような足取りで「よろしくねー!」と手を振っている。

(……それにしても、彼らの装備、本当に『初心者』って感じだな)

拓也は、右眼の眼帯の下でこっそりと『深層言語・限定解析』を起動し、リョウタたちの装備のステータスを読み取っていた。

リョウタの大剣は、市販の量産品で魔力伝導率はほぼゼロ。ケンの革鎧はサイズが合っておらず、アオイの杖に至ってはただの「少し硬い木の枝」レベルの代物である。

十年前、突如として世界にダンジョンが発生して以来、探索者の装備は迷宮素材を使ったものが主流となっている。しかし、彼らのようななりたてのFランクには、高価な魔導武具など買えるはずもないのだ。

(これが、ごく一般的な中高生の探索者デビューのリアルなんだろうな。……極星の連中や、大吾さんたちの装備が異常すぎただけだ)

「おい、そこの眼帯! お前ら、なんでそんなラフな格好なんだよ。迷宮を舐めてんのか?」

ケンが、拓也のパーカーと三月のワンピースを見て呆れたように言う。

「すみません。俺たち、お金がなくて防具が買えなくて。でも、足手まといにはならないように頑張ります」

拓也が適当な嘘でごまかすと、アオイがため息を吐いた。

「はぁ……。まあ、あなたたちはただの数合わせなんだから、後ろで大人しくしててよね。リョウタくん、行こう」

「おう! 俺の背中から離れんなよ!」

こうして、五人は薄暗い『ゴブリンの洞窟』へと足を踏み入れた。

洞窟内は、ヒカリゴケの微かな光に照らされているだけで、ひんやりとした湿った空気が漂っている。

先頭をリョウタが進み、その後ろをケンとアオイが歩き、最後尾を拓也と三月がついていくという陣形だ。

「……ねえ拓也。この子たち、足音大きすぎない? これじゃ魔獣に『食べに来てくださーい』って宣伝してるようなものだよ」

三月が、拓也の耳元でヒソヒソと囁く。

「シッ。ねえさん、静かに。これが『普通』の探索者の動き方なんだ。俺たちの隠密歩法がおかしいだけだから」

拓也は小声で姉をたしなめながらも、内心では激しく同意していた。

リョウタの歩き方はドスドスと踵を鳴らしており、ケンの索敵は正面しか見ていない。アオイに至っては、怖がってリョウタの背中に隠れるように歩いているため、両サイドの死角が完全に無防備だった。

バエル戦でSランクたちの無駄のない完璧な動きを見続けてきた拓也にとって、彼らの動きはあまりにも隙だらけで、見ているだけで胃がキリキリと痛んでくる。

(索敵も甘い。足運びも素人。……これ、本当に大丈夫なのか?)

拓也の不安が的中したのは、洞窟に入って十分ほど経過した時だった。

「ギャッ!」

「ギギィッ!」

前方の岩陰から、三匹の緑色の小鬼――Eランク魔獣のゴブリンが、粗末な棍棒を振り回して飛び出してきたのだ。

「うわあっ!? で、出たぞ!!」

ケンが悲鳴を上げ、腰を抜かしそうになる。

「ビビんじゃねえ! 俺がぶっ飛ばしてやる!!」

リョウタが、雄叫びを上げながら大剣を振りかぶり、先頭のゴブリンに向かって一直線に突進した。

「リョウタくん、気を付けて! 『ウォーター・ボール』!!」

アオイが後方から魔法の詠唱を開始するが、極度の緊張のせいで魔力収束が乱れ、水球が明後日の方向(天井)へと飛んでいって弾けた。

(……ひどい。ひどすぎる)

最後尾で戦況を俯瞰していた拓也は、戦術指揮官としての脳が焼き切れそうになるのを必死に堪えていた。

リョウタの攻撃は大振りすぎて、コンマ五秒もあれば容易にカウンターを合わせられる。

ケンの弓は手が震えていて全く狙いが定まっていないし、アオイの魔法は詠唱に五秒もかかった上に命中率がゼロだ。

「死ねェッ!」

リョウタの大剣が、ゴブリンの頭上をかすめて地面に激突する。

「ギィッ!」

ゴブリンはそれを嘲笑うかのように横に跳び退き、リョウタの無防備な脇腹に向けて棍棒を振り下ろそうとした。

「あっ、リョウタ危ない!!」

ケンが叫ぶが、弓を引き絞る手が震えて矢を放てない。

(……駄目だ。このままじゃ死ぬ!)

拓也は、咄嗟に動こうとした。しかし、ここで自分が完璧な体術でゴブリンを制圧してしまえば、彼らとの関係(初心者の観察)は完全に破綻してしまう。

あくまで『運良く助かった』という形にしなければならない。

「うわあっ! 足元に石が!」

拓也は、わざとらしく大きな声を上げながら、持っていたリュックを「うっかり」前に向かって放り投げた。

三十キロの荷物が入った特大リュック(中身はポーションと食料)が、見事な放物線を描いて、リョウタを殴ろうとしていたゴブリンの顔面にクリーンヒットする。

「ギャンッ!?」

予期せぬ質量兵器(リュック)の直撃を受けたゴブリンは、目を回して後ろにひっくり返った。

「えっ……?」

リョウタが目を瞬かせる。

「す、すみませんリーダー! 足が滑って荷物を投げちゃいました!」

拓也が慌てて謝るふりをする。

「お、おう……! よくやった眼帯! ナイスアシストだ!」

リョウタは勘違いしたまま、ひっくり返ったゴブリンに大剣を振り下ろして見事に討伐した。

(……ふぅ。とりあえず一匹)

拓也が安堵の息を吐いたのも束の間。

「ギシャァッ!」

残りの二匹のゴブリンが、今度は後衛のアオイとケンに狙いを定めて飛びかかってきた。

「ひぃぃっ! 来るなっ!」

ケンがデタラメに矢を放つが、当然のように外れる。

「きゃあっ!」

アオイが尻餅をつき、杖を落としてしまった。

ゴブリンの錆びたナイフが、アオイの腕を切り裂こうと迫る。

(マズい、あそこにはリュックは届かない! ねえさん、お願い!)

拓也が視線だけで姉に合図を送る。

「あっ! 私も足が滑っちゃったー!」

三月は、これ以上ないほど棒読みのセリフと共に、ペタンと可愛らしくその場に転んだ。

しかし、その転ぶ瞬間に『右足のつま先』で地面の小石を、ほんの僅かな殺意(デリケート・コントロール)を込めて弾き飛ばしていた。

ピュンッ!!

音速を超えた小石が、暗闇を一直線に切り裂き、アオイに飛びかかっていたゴブリンの『膝の関節』を正確に撃ち抜いた。

「ゴベッ!?」

膝を粉砕されたゴブリンは、空中で不自然に体勢を崩し、そのまま顔面から地面に激突して気絶(無力化)した。

「えっ……? 勝手に転んだ……?」

アオイが、目の前でひっくり返ったゴブリンを見て呆然としている。

「チャ、チャンスだアオイ! 『ウォーター・ボール』だ!!」

ケンが叫び、アオイは慌てて杖を拾い上げ、至近距離から水球を放って二匹目のゴブリンを仕留めた。

残る最後の一匹は、仲間がやられたことにパニックを起こし、なぜか最後尾にいた拓也に向かって一直線に突進してきた。

「おい眼帯! 逃げろ!!」

リョウタが叫ぶ。

しかし、拓也は逃げるどころか、怯えたふりをしてその場にうずくまり、背中を向けた。

ゴブリンの棍棒が、拓也の背中――『虚無蜘蛛(ヴォイド・スパイダー)』のコートに激突する。

ドスッ!

「ギャッ!?」

凄まじい魔力反発によって、ゴブリンの方が自身の棍棒を弾き返され、両腕を脱臼して壁まで吹き飛んだ。

「い、痛いなぁもう……!」

拓也は、全く痛くない背中をさすりながら、わざとらしく涙声を出してみせた。

壁に激突して完全に気を失った三匹目のゴブリンを、リョウタが駆け寄って大剣でトドメを刺す。

「はぁ……はぁ……! や、やったぞ! 俺たちだけで、ゴブリン三匹を討伐した!!」

リョウタが、大剣を天に掲げて歓喜の声を上げた。

「すごかったよリーダー! アオイの魔法もバッチリだった!」

ケンも興奮してアオイとハイタッチをしている。

「……ま、まあね! 偶然転んでくれたから助かったけど……」

アオイも、ホッと胸を撫で下ろして座り込んでいた。

誰も、自分たちが全滅の危機に瀕していたことにも、それを最後尾の「足手まといのポーター姉弟」が全て裏からコントロールして救っていたことにも気づいていない。

「……ねえさん。初心者の引率って、Sランクの大人たちを指揮するより百倍疲れるかもしれない」

拓也は、ペラペラのコートの裾を整えながら、完全に胃を痛めた顔で呟いた。

「えー? 私は小石蹴るの楽しかったよ! 次は、もっと大きな岩を蹴ってあげようか?」

「絶対にやめて。洞窟が崩落するから」

本物のFランク初心者たちの、あまりにも無軌道で危なっかしい戦いぶり。

これからの迷宮探索が、拓也にとってかつてないほどの「過労(胃痛)クエスト」になるであろうことは、もはや疑いようのない事実であった。

魔力を持たない少年指揮官の、平和な(?)初心者観察日記は、前途多難なスタートを切るのであった。

最後までお読みいただきありがとうございます!

正体を隠したまま、リュック投げや「偶然の小石キック(音速)」で彼らを裏からサポートする姉弟。

最強の指揮官は、初心者の引率という新たなデスゲーム(精神的な意味で)に直面しています(笑)。

もし「面白かった!」「拓也の胃がもたない(笑)!」と思っていただけましたら、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、執筆の大きな励みになります。

次回も引き続き、如月姉弟のドタバタな日常をお楽しみに!

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