7章 by美琴
突然現れたのは性別、年齢不詳、という生物。かろうじて人のような形だが、ソイツは自分の周りに黒い影、と言うよりも闇と言ったほうが正しいかもしれない。黒い何かをまとっていた。そして佳奈さんも、
「まさかこんなところでアンタと会うなんて。」
と笑顔で言ってはいるのだけど、目が全然笑っていないし、殺気が出まくってメチャクチャ怖い。
「佳奈が此処まで怒る事なかったからなのか?...こんな量の殺気は殺人鬼に会う時くらいしか無いと思ってたのに。」
夏葵さんが此処まで言うなら佳奈さんがこんなに怒った事はなかったんだ。ってことは、佳奈さんの夏葵さんへの暴力は愛情表現だったのかな?
「この方は...。」
あれ、羊さんも知ってるんですか?!それに、佳奈さん程では無いにしろ、少し殺気を出してるし。
「『風神:紅葉旋風』!」
先に攻撃したのは佳奈さん。でも、その影は軽く後ろに押されただけだった。
「それなら、『風神:死神の鎌』!」
佳奈さんの風が黒い人影も薙ぎ払った。そこにはやっぱり誰もいない。
「チッ、やっぱり影ね。アイツの十八番の。」
と、憎らしげに呟く佳奈さんに少し不安を覚えた。何で佳奈さんはそんなこと知ってるんだろう?って。
「はあ、終わった。」
佳奈さんは結構疲れてる様に見えるけど、皆さんはもっと疲れてそう。特に夏葵さん。
「もう今日はずっとこの館にいても良いんじゃないか?俺も撫子も妙に疲れたぞ。」
「ん?私のせいなの?」
佳奈さん、そんなにキラキラした目で言わないで下さい!!って、自覚無かったんですか?!!
「佳奈ちゃんの殺気で気絶しないようにするの、大変だったんだからね?!」
ああ、撫子さん落ち着いて下さい、それとご苦労様です。
「それじゃあ皆は結界張り直して休んでて。私はストレス解消のために街の中の化物達を襲ってるわ。」
「ああ、逆に化物を『襲う』んですね。」
と、心の声を出していた。
「うん。」
あっさり肯定された。
「なら俺と撫子は休んでるぞ。」
「気をつけてね。」
「僕も休ませてもらう。」
「俺も。」
夏葵さん、撫子さん、優さん、月は各々の部屋に戻っていった。
「あの...。」
佳奈さんに言わないと、倒れる前に休んで下さいねって。いくら佳奈さんが半分吸血鬼だろうが、倒れてしまえばやられ放題だ。
「僕も手伝っていいですか?相手側に能力者がいたら苦戦します。それに僕は武道習ってるから結構強いですよ。」
あれ?何言ってるんだろう、僕?佳奈さんのことを心配するのは良いんだけど。
「それなら私も化物襲撃に参加しますよ。」
「いや言い方を考えてくださいよ。」
羊さんが参加することで訂正できそうに無い...。こうなったら化物に鬱憤を晴らすために八つ当たりしよう。こうなったのは全部化物のせいだ!!
「はいはい、勝手にして。」
僕が頭の中で叫んでいた時には佳奈さんも半ば諦めた、といった感じで言った。
「はい、勝手についていきます。」
「そう言う意味じゃないわ。」
はい、なんとなくわかってました。
「それじゃ作戦を決めましょう。この館から三方向に進みながら化物を討伐、ですね。」
「ついでにアイツのアジト見つけられれば万々歳ね。」
「では始めましょうか。」
羊さん、その残忍な笑顔はやめていただけますか。
「それじゃ、化物襲撃作戦、開始!!」
───────────────────────────────
それから数時間、僕達三人は化物を倒しながらアジトを探した。でも、怪しい場所なんて何も無かった。
「結局化物以外収穫なしね。」
「どういたしましょう?美琴様もお疲れのようですし、少しの間休憩にいたしましょう。」
えっ、何で気づかれてるの?!
「はい、すみません...。」
「美琴、謝らないで。貴方の疲れをガン無視した私達にも非があるわ。」
「ありがとう御座います。」
佳奈さんも羊さんも優しいな。それになんだかこの二人、似てる気が...。
「あ」
今とても大切な事を思い出した。何で今まで忘れてたんだろう?
「なに、何か思い出したの?!」
「どうかなされましたか?」
佳奈さんと羊さんが興味深そうに僕の顔を見る。
「たしか、この館から500Mくらい行った辺りにマンホールがあって、それの周りに四角い切込みが入ってたんです。」
「それ、あからさまに呼ばれてるわね。」
「私もそのように考えていたところでした。」
やっぱり発想が似てる...!!
「ん?美琴、本当に大丈夫?」
「あ、はい、大丈夫です。行きましょう。」
「では私はここで化物達の襲撃に備えておきましょう。念のためですがね。」
「気をつけてね。」
「はい。」
僕たちはその場所へ行った。
「確かに四角い切れ込み...美琴、こっちに。」
そう言って佳奈さんがマンホールから20mくらい離れた物陰に誘導してきた。
「ここで待ってて。」
そう言って佳奈さんはマンホールまで行き、躊躇せず蓋をどけた。
ドンッ
という音とともにマンホール内部で爆発が起こる。
「佳奈さんッ!!」
頭で考える前に走っていた。煙の中で倒れている佳奈さんをみつけ、駆け寄る。
「佳奈さん!?大丈夫ですか?!!」
「う...ん...美琴?もう少しだけ寝かせて、今の爆発でちょっと疲れたの。」
倒れてたんじゃなくて寝てただけ?!!ややこしいっ!
「ここで寝かせるわけ無いでしょう!やっぱりここは罠だったんですし、館に帰りますよ。」
そう言って佳奈さんを横抱き、いわゆるお姫様抱っこ状態で連れていく。
「ちょっ、美琴!?自分で歩けるから、ていうか何でお姫様抱っこな訳!?」
佳奈さんは慌てて僕から離れた。
「いやいや、だって佳奈さん普通の人間だったら即死でしたよ、それに佳奈さん、ここで寝ようとしたって事は、自分が大変な状態なんだってわかってるんですよね?」
そう言ったら佳奈さんは崩れ落ちる様に倒れ込んだ。慌てて支える僕に、
「美琴って結構『勘が良い』って言うの?鋭いのね、びっくりだわ。」
そう笑って、
「そうよ、かなりヤバイと思うわ、運んでってもらえる?」
と力なく言った。
「わかりました。任せて下さい!」
館までの帰り道で気になっていたことを聞いてみることにした。
「あの、佳奈さん。どうして僕らと会ったあの夜に『みんなには黙ってて。』なんて言ったんですか?皆さん知ってても問題ない気がするんですけど。」
佳奈さんは『ああ』って小さく呟いて
「私の友達の一人に吸血鬼がダメな子がいるのよ。嫌われるのは嫌だし、だったら黙っておこうかな、って考えただけよ。」
……なるほど。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈館┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「佳奈様はやられたようですね。」
羊さんがなんだか面白そうに言った。
「何笑ってるの?こっちはすごく疲れてるのよ。少しはいたわってくれる?」
佳奈さんメチャクチャ不機嫌、まあそうですよね。
「佳奈さんが爆発に巻き込まれてしまって...!」
「なるほど、ではこちらに...!」
羊さんに案内されたのは救護室。
「こんな所が有ったなんて知りませんでした。」
そう言うと羊さんは笑って、
「ここは主様が見つけられまして、街で食料を探していた時に救護用具も発見したので食料と共に運んできてこの部屋を救護室に、と云う訳です。」
そうだったんだ。でも、
「教えてくれても良かったんじゃないですか?」
「盗聴器が無いか警戒していたのです。確認がつい先程終わりましたので、案内させて頂きました。」
「ところで、佳奈さんがずっと静かなんですけど、大丈夫ですかね??」
羊さんが脈を経ったりして、
「大丈夫です。お疲れだったのでしょう。」
「よかったです。」
肩をなでおろしたのはつかの間だった。
「そういえば、美琴様と佳奈様が外出なさっている間にこのような手紙が届いたのですが、ご覧になりますか?」
そう言って縦17cm、横26cm位の大ぶりの封筒。すでに開封されている。内容は
───────────────────────
謹啓
この街で生き残り、館にお住まいの皆様におかれましては、益々(ますます)ご健勝のこととお喜び申し上げます。皆様に解いて頂きたい謎が御座います、それ故にご多忙中とは存じますが、筆を取らせて頂きました。その謎とは
Who killed Cook Robin? “I killed him” the Chick said.
To be or not to be this is the question.
Everyone know where he is.
この英文三文を解読し、回答となる行動を取って頂きたく存じます。今回は制限時間を設けたいと思います。猶予は3日。そちらに手紙が着き、封筒が開封されてから3日とさせて頂きます。
なお、この謎が解けなかった場合、地下に眠る爆弾で皆様同時にお亡くなりになります。
地下に眠る爆弾の量は人が月まで飛ぶことが可能な量でございます。
誠に勝手ながら、宜しく御願い申し上げます。
末筆ながら、皆様のご武運とご多幸をお祈り申し上げます。
敬白
──────────────────────
皆さんに見せると
「ふざけんな!!」
夏葵さんが近くにあった紙にあたる。
「夏葵、物にあたらないの。」
佳奈さんが止めるけど...
「これで落ち着いてって言われても落ち着けないよ!!」
と撫子さんも一緒に怒ってる。逆に佳奈さんは
「.........」
ずっと黙ってる。まるで自分のせいだと思ってるみたいで、
「佳奈さんのせいじゃありませんよ。」
佳奈さんがこっちを向く。瞳には力ない光。
「......!」
気づいたことに気づいたのか弱々しく笑って、
「ごめんね、美琴。私が犯人を知ってたのは皆分かっただろうけど、アイツの狙いは私なのよ。」
え......?
「だから私一人で行くわ。皆はここで待ってて。」
と、一瞬前とは大違いな力強く決心した、という感じで言った。
「悪いな、佳奈。そりゃ無理だ。」
夏葵さん?
「俺もお前とソイツを倒しに行く。」
な、何だろう、今の夏葵さん。静かなんだけど、殺気と言うか、剣幕が凄くて怖い。
「私も行きたいよ。少しはお返ししたいもの!」
撫子さんからも何か底知れない恐怖を感じるのはどうして?
「はぁ、行きたい奴は手を挙げて。」
勿論全員手を挙げる。
「本当に良いのね?」
全員が頷いたのを見て佳奈さんも諦めたらしい。
「分かったわ。その代わり、私はアイツを見つけるまでできるだけ力を温存するから、どう なっても知らないわよ。」
そんなのは覚悟の上です。そう思って皆を見たら、皆同じように考えているらしかった。
「それでは皆様、この手紙の英文三文の意味を解読しなくてはなりません。
まず一文目ですが、何か案のある方はいらっしゃいますか?」
皆が押し黙る中、
「なるほどな。」
と、優さんだけは得心顔で言った。
「最初の文。Who killed Cook Robin? “I killed him” the Chick said.だが、これは恐らく、僕らの中の誰かに黒幕を殺せという指示だろうな。」
「!!」
僕を含めた全員の心臓が一瞬止まった気がした。
「はぁ。だからやらないほうがいいと思ったのに...。」
か、佳奈さん?!この状況を予想していたんですか?!!
「おい佳奈、これ予想してたんだな??」
夏葵さんも何やら納得した様に言った。
「仮にコレの意味がそうだって仮定して話を進めるぞ。二文目の
To be or not to be this is the puestionだけど、これはそのままだろ?実行するか決めろ、だよな?」
月の向こう見ずが今はありがたく感じる...。
「うん、そうだと思うんけど、三文目。
Everyone know where he is.『彼が何処にいるのか皆が知っている』?」
「難問ですね。」
あれ、コレってもしかして...?
「美琴、分かるか?」
「月。うん、わかったかも。」
ヴッ!皆さんの視線がなんだか痛い。
「それで、美琴の意見は?どう考えたんだ?」
夏葵さんの後押しが嬉しいな。
「はい。恐らくですが、黒幕の居場所について十分な情報を渡しているから、自分達で考えてもわかるだろう、ということではないでしょうか?」
僕の言葉に皆が頷く。
「確かにそうだわ。美琴、やるじゃない!」
「佳奈がここまで言うなんてな。美琴、すげえじゃん!!」
確かに佳奈さんがここまで褒めてくれた事無いな。
「って事は、黒幕であるあの人を殺すかどうかを決めて、この手紙の封筒の裏の地図を見ながら行くだけね。」
ん?んん?!!
「おおおい!佳奈!?」
「ちょっと待って!?」
「何よ。大声出して?」
「気付いてたんなら言えよ!!」
佳奈さん、撫子さん、夏葵さんで喧嘩?!
「ちょっ!止めてください!!」
佳奈さんを殴る気満々で胸ぐらをつかむ夏葵さんを月が引き止める。同じく叩こうとしている優さんを僕が止める
「!月君、離して......!!」
「美琴、離してくれ...!!」
「今は仲違いしてる場合じゃねえだろ!」
「月様の言う通りだと思われます。」
羊さんがなだめようとするけど、
「外野は黙ってろ!!」
全員が驚き、夏葵さん、撫子さんから手を離す。
「気付いてたんなら言ってくれてればいいだろうが!!何でいっつも大事なことだけ言わねえんだよ!!!」
夏葵さん...。
「夏葵達には分からないでしょうね!!親しければ親しい程、巻き込みたくなくなるこの感情が!」
「んだと?」
佳奈さん?
「私はあの時からずっと思ってたのよ!もう誰も巻き込まないようにしようとしてたのに!!」
佳奈さんが声を荒らげる。
「あの時に親友が一人私のせいで重症を負ったのよ!もうあんな事にしたくないから一人で行動しようとしてたのに!!」
「それが大問題だって言ってんだろ!!大事な奴なら丸ごと守れば良いじゃねえか!佳奈ならそんなの簡単に」
「できないのよ!」
皆で一斉に佳奈さんを見る。
「私がいつ『能力を使いこなせてます』なんて言ったかしら?!」
「『能力を使いこなせてません』とも言ってないだろ!!」
佳奈さん、夏葵さんの間で喧嘩になっちゃった?!
「佳奈ちゃん、夏葵ちゃん、いい加減にして!!」
な、撫子さん?
「二人の喧嘩に皆を巻き込まないの!!皆怖がってるよ!」
すごいです、撫子さん。あの佳奈さんと夏葵さんが黙ってる!
「ほら、皆に謝る!!」
「「ごめんなさい」」
凄い、あの二人に言うことを聞かせるなんて賢者でも無理だと思ってた!!
「はぁ。取り敢えず皆様、もうこんな時間ですし、おやすみになられては。」
羊さんの提案に皆落ち着き、寝ることになった。
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄丑三つ時┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
今何時だろう?時計を見ると二時十五分だった。
「全然寝れない...。」
そう言って起き上がり、外に出る。
「寝れねぇのか?」
そう言って夏葵さんが顔を出す。
「あ、夏葵さん。さっきは散々でしたね。」
「さっきって言うよりは数時間前だけどな。」
笑顔で答える夏葵さんは優しい顔をされていて、佳奈さんと言い争いをしたとは思えない。
「びっくりしただろ?」
「え?ああ、言い争いした事ですか。」
びっくりしたけど、
「喧嘩するほど仲が良いって言いますし、」
「そうだと良いんだけどな。」
そう言う夏葵さんは悲しげな笑顔が辛そうで...。
「佳奈さんはきっと夏葵さんの気持ちに気付いていると思いますよ?」
そう言ったら夏葵さんはちょっと驚いたような顔をして、
「ああ、そうだろうな。」
と笑って言った。え?
「えっと?」
「あははっ。まあ美琴から見ても佳奈の表情は分かり辛いだろうからな。」
た、確かに...。
「佳奈さんは賢者でも黙らせられないと思ってました。」
夏葵さんは一気に青くなって、
「撫子は絶対に怒らせないようにした方がいいぞ、美琴。」
と、言った。そういえば...
「あ、美琴は知ってるか?佳奈は吸血鬼なんだってよ。」
心臓が一瞬止まった気がした。
「その顔じゃ知ってるっぽいな。ったく、俺にだけ秘密にしやがって。」
え?佳奈さんが夏葵さんだけに話してない?っていうことは...
「佳奈さんは吸血鬼嫌いの人がいるって言ってましたけど。」
「ああ、それ俺の事。」
けろっと言われたそのことばに
「じゃあ何で知ってんですか?!」
って本音をこぼす。
「佳奈が撫子に話してたのを盗み聞きしたんだよ。」
満面の笑顔でいわれた...。これはどう返事したら良いんだろう?
「...何か悪いな。」
?...夏葵さん?
「佳奈には悪い事したと思ってる、けどな、佳奈は大事な事ほど言ってくれねえんだよ。お前も見たろ?」
ああ、だからあんなに殺気満々で。
「はい。理由が分かったら何だか佳奈さんが可愛く見えてきました。」
「今何て言った??」
「すみませんでした!!」
夏葵さんの笑顔無茶苦茶怖い!
「さて、冗談は置いといて。」
「ん?今ガチギレしてたような...。」
「あっはっは!してねえよ。そんなにキレやすかったら今頃佳奈はオダブツだろうよ。」
「あはは。ですよね。」
うん、踏み込まないでおこう。そうしよう。
「ホントに優しいわよね、夏葵って。」
「はい、そうですよね。って、佳奈さん!?」
いつの間に!?
「おっ、佳奈、まだ起きてたのかよ。子供はもう寝る時間だろ。」
「いや、私も高校生だからね。」
佳奈さん呆れ顔で言われても...。あっ!
「夏葵さんに」
「ああ、聞こえてたから大丈夫よ。しっかし、盗み聞きするなんて、、随分趣味が悪いわよ。」
ああ、聞こえてたんだ。
「仕方ないだろ、どうしても教えてくれねえんだから。」
「嫌われたく無かったのよ。」
「吸血鬼は怖いってだけで、佳奈は平気だぞ。」
え......?ぷっ、
「「あははは!」」
佳奈さんと同時に笑ってしまった。
「おい、笑わなくったって良いだろ?!」
「いや、だって怖いからって、幼稚園児じゃあるまいし。プックク」
「あっまだ笑ってやがる!この野郎、人の恐怖の対象で笑いやがって。」
少し悔しそうな夏葵さんを茶化す佳奈さんを見ていたら嫌なことを思いだした。
「夏葵さん、佳奈さん、皆を起こして来てもらえますか?」
二人はニッと笑って、
「OK、すぐに起こしてくるよ。」
と言って、館の中に入って行った。
「さて、いい加減にこの夢にけじめをつけないと。」
そう呟いた。