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8章 by羊

「お〜い、羊、起きてくれ!美琴が話したい事があるって言ってるぞ。」

美琴様が?

急いでドアへ。

「美琴様がですか。何か思い出されたのでしょうか?」

夏葵様は顔を一瞬しかめて、

「あ...うん。悪いな、聞きそびれた。」

何だか予想通りですね。

「問題は御座いません。ご本人に直接お聞きすればいい話ですから。」

「そ、そうだな!」

「主様も起こしてきていただけますか?主様は私が起こしにいく事を好まれませんので。」

「分かった。任せてくれ。」

良かった。上手くフォローできただろうか。

「では夏葵様、私は先に行っておきます。」

「おう、頼んだわ」

私が美琴様のもとへ付いた時にはまだ美琴様しか居なかった。

「他の皆様はまだなのですね。」

「はい。話の内容なんですけど、ここ最近、おかしな夢を見る様になりました。」

?おかしな夢?

「おかしな夢、ですか?」

「はい、毎晩全く同じ夢なんです。しかも、この街に来てから夢はどんどん鮮明になっていくんです。」

は?全く同じ夢を毎晩?

「夢とは...侮れませんね。」

「え?」

美琴様が首をかしげた時、

「お〜い、全員集めてきたぞ。」

と言って夏葵様方が来た。

「美琴といったか、お前、何か思い出したのか?」

主様の目が...!信用されているのですね、ならば...私も皆様にあの事を話すべきなのか?

「はい。羊さんには先に少し話したんですが、ここ最近毎日変な夢を見る様になりました。しかも、ここに来てから鮮明になっていくんです。」

「その夢の内容は?私も不思議な夢を時々見るわ。美琴の物と同じかも知れないわ。」

と、佳奈が言う。

「僕は知らない研究所みたいな所に居て、髪の長い佳奈さんが何ていうか、鳥と戦っているんです。しかもソイツは佳奈さんが『ファントム』と言っていた物とそっくりなんです。」

「......。」

佳奈?黙っているという事は何かあるのか?

「...はぁ。夏葵も知ってたから隠す程のことでも無いわね。けど、今はお預け。」

「は?!」

皆驚く中、佳奈は静かに告げる。

「いつまでもじっとしてられないのよ。早くこのまちから出るの。その後に話しても遅くは無いもの。」

全員が納得した。忘れかけていたが確かに早く街を出なければならない。主様の仕事にも既に支障が出ている。

「皆様十分に休息を取られたようですので、奴のアジトに向かいましょう。佳奈様のおっしゃっていた通り、手紙の裏に地図が描かれていました。」

「佳奈、数時間前は悪かったな。」

「気にしないで。私も悪かったわ。」

良かった、夏葵様と佳奈が短時間しか喧嘩しなくて。

「さて、皆様、参りましょう。」


     ────────────────────────────────────────


私達は地図に従い、印の付いた場所まで到着した所まではよかったのだが、

「............入り口と見なせるものは無いな。」

そう、主様の言う通り、道路と疎らな建物しか視界に入っては来ない。

「ん?なぁ、あの四角い切れ込みみたいな物何だ?」

と月様がおっしゃった方を見ると確かに有る。

「お手柄じゃねえか、月!」

夏葵様が言う。

「凄いわね。」

それをどかすと、階段が現れた。

「全員、気をつけて行くぞ。」

しばらく地下道を進んだ時、

「何、ここ?」

と、佳奈が呟く。無理も無い先刻までは鉱山跡の用だった道がきれいな岩が重なった洞窟へと変わったのだから。そして、

ギェェェェェ!

この声は...。

「あっ、来ちゃったね...。」

「ああ。やるぞ、佳奈。」

「ええ。『風神:死神の鎌』!」

「『糸の海マリオネット:蜘蛛の糸』!」

一瞬で化物達は蜂の巣となった。私と佳奈と夏葵様と撫子様以外は全員引いていた。

「アンタ容赦無さ過ぎだろ...。」

そう言った月様を皆様スルーしたのでした。

そのまま地下道を進むと、

「...扉、だな。」

夏葵様がアイコンタクトで言った。

『警戒して行くぞ。』

全員頷いた事を確認して部屋に入る。

「ダレカ卜オモエバタダノニンゲンカ。」

そう片言の言葉で話すキマイラがいた。恐らく作られてからそう時間が経っていないのだろう。

「お前達のボスのとこに行くんだ、通しやがれ!」

なっ!?月様?...はぁ、危険かもしれない。

「フハハハハハハハ!オマエタチガアノカタニカテルハズガナイ!!イマココデオシエ」

        ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ドスッ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

キマイラの胸部をレイピアが貫いている。キマイラが倒れた先に居た人影に私は見覚えがあった。

「ナ、ナニヲ...

ドスッ

彼は一瞬でキマイラを倒してしまった。

「何で仲間を...。」

事情を知っている主様は動じていないが、美琴様や撫子様はビビっている。ここらで助け舟を出しますか。

琴息ことぶき、私の仲間を脅かすのは止めてもらえますか?」

「羊君、久しぶりであるな。」

全員が驚きの顔でこちらを見る。

「えっ、羊、コイツと知り合いなのか?」

「はい、夏葵様。彼は琴息ことぶき 刀磨とうまと言って、『触れた物を武器に変える』という能力を持っている能力者です。」

「能力名は『戦の鐘』と言うのである。」

私は琴息の目的を知っているが、皆様は...。

「そこまでは納得するけど、何で仲間を殺してんだ?羊が琴息を知っている事も理解できないぞ。」

やはり理解されてはいないようですね。

「彼はこの組織の裏切り者と言う訳ですよ。私と同じように。」

「え?!」

と美琴様、佳奈。

「は?!」

と夏葵様、月様。

「はい?!」

と、撫子様がそれぞれの反応を見せる。

「どういうことなのよ、羊!?」

佳奈様、『どういう事なのか』、と聞かれましても説明の仕様が無いため、スルーさせて頂きます。

「それで琴息、我々と共に首領ボスを倒しに行きませんか?」

「聞きなさいよ」

佳奈につっこまれた

「スルーして話すと羊君、」

「ちょっと」

「実を言うと我輩も首領を倒す仲間が欲しかったのである。吾輩の戦闘力では首領を倒せないのでな。」

なるほど。

「コイツは信用できるのか、羊?」

「はい。信用、と言うより信頼できますよ、夏葵様。」

「だから聞きなさいよ!!」

佳奈が大きな声を出す。

「何だよ佳奈。」

「何だよ、じゃ無いの!何故羊がこの組織に所属してたのかを聞いてるのに流れでこんな事になってるし!!」

「そうだっけ?」

「そうよ!」

おっと、ボケとツッコミが逆転している。

そんな事よりも...

「佳奈様、私は『所属している』ではなく、『所属していた』、ですよ。」

「「どっちでも良いわ!!」」

と佳奈と夏葵様、同時に突っ込まれました。

「じゃあ羊さん、話していただけますか?僕達きちんと聞きますから!」

美琴様、そんなにも無邪気な笑顔で...。はぁ、仕方ない。

「私は、妹がこの組織に捉えられていると脅迫を受けまして。その理由で従っていましたが、捕まってはいないと琴息に聞いたので」

「だからコイツはこの組織から逃げているという訳だ。おかげで僕も散々な目に合っている。」

「申し訳ありません、主様。」

「別に構わん。最近慣れてきた。」

私と琴息、主様以外のカタはポカンとこちらをみている。が、佳奈だけは誰にも追えないほどのスピードで情報を処理している様で、目まぐるしく変わる瞳の中に一瞬、煙が見えたきがした。

辺りに沈黙が流れる。それを破ったのは琴息だった。

「ところで、君たちは首領の所まで行く道は分かるのであるか?」

「「うっ!」」

佳奈も夏葵様も何も考えずに来たようですね...。

「ならば吾輩が案内しよう。吾輩は『フロアボス』なる称号を持っているのである。故に首領に会う機会も多かったのである。」

「フロアボス?」

「それは初耳ですね。」

佳奈とハモる。佳奈に凄い形相で睨まれた。

「まあまあ。フロアボスとは1フロアにつき一人に渡す称号である。ここは地下一階、二階、三階の3フロアに分かれていて、首領は最下層、三階にいるのである。だが......。」

急に琴息が押し黙る。私もここの構造は知らないため、琴息に頼るしか無い。

「だが、何だ。さっさと続きを言え。」

主様、ぶっこんで来ましたね。

「だが、第二フロアのフロアボス、煉獄鳥の『プロブレン』のもとへ辿り着くには『真実の部屋』と呼ばれる部屋を通らなければいけないのである。」

『プロブレン』、それが第二フロアのフロアボスの名か。

「『真実の部屋』ねぇ。名前からして嫌な予感しかしないんだけど。」

佳奈が急に話に入ってくる。きちんと聞いていたんですね。

「『真実の部屋』は自分の重要な秘密をすべて話さなければ進めないのである。」

なんというか...。

「面倒くさいな。」

私も同じことを考えていました、月様。

それにアレに関しても言わなければいけないということか。言いたくないが...

「皆様、行きましょう。それ以外に方法がありません。」

「では、行くのである。」

琴息に道案内をしてもらいながら聞いてみた。

「琴息、琴息の能力ならばどんな敵でも一撃で倒せるのでは?なのに何故我々に協力をしているのです?」

「羊君、言葉使いが優しくなっているのである。自分の主の前だからであるか?」

「質問に応えて下さい!!」

!まずい、声を荒げてしまった!!

      ───────────────ギェェェェ───────────────

「羊お前なあ、折角ここまでデカイ戦いなくこれてたんだから、静かにしててくれれば良かったのに!」

「申し訳ありません、月様。」

これは明らかに私のミスだ...。

「来ます!」

美琴様、撫子様が同時に叫ぶ。

「吾輩が行くのである。」

琴息が静かに歩いて行く。そして、

─────パァァァン─────

何処に隠していたのか拳銃を発砲。

─────ギェェェェェ─────

音につられ、バケモノが現れる。

「能力『戦の鐘』」

琴息に攻撃しようとしたバケモノ達はマシンガンや刀等に変わっていく。

「これで進める。さ、行くのである。」

琴息が笑顔で言う。皆様引いていた。

再び進むこと三分。

「さて、ここが『真実の部屋』である。」

琴息が扉を開けるとそこには暗闇が広がっているだけで足場が無い。

「コレが部屋だと?」

主様のおっしゃっていることは正しいと思う。

これは部屋と言うよりも暗闇が集う空間だ。

「コレって真実言おうが進めねえんじゃねえのか?そもそも道がない時点でおわりだろ。」

月様が呟く横で美琴様が考え込む。そして

「僕、やってみます!」

?美琴様?

「僕の能力は『能力無効化』だと思われがちですが、本当は『能力の出力を調節する』能力なんです。」

黄色の光が現れる。そちらを見ると、黄色いクリスタルが輝いていた。

黄色い物も含め、クリスタルは計8つ。赤、オレンジ、黄、緑、水、青、桃、紫の8色。

皆同じ様に見えるが色を除いて何かが違う、そう感じる不思議な形だそのうちの黄色いクリスタルが輝いている。

「これってひょっとして...。」

「ひょっとっしなくても...。」

撫子様、夏葵様がポツンと呟く。

全員がなんとなく確信した。『このクリスタルが全部光ればどうにかなるだろう』と。

「じゃあ次は俺だ!」

月様が前へ進み出る。

「俺は...実は暗いところが苦手なんだ!」

……...は?

美琴様以外ポカンとする。

「暗いトコ苦手だから明るくなればいいのにってずっと思ってたら本当になったんだ!」

まさか顔を真っ赤にしながらもきちんと言ってくれるとは...。

「ブフッ」

「あっ、佳奈てめっ!今笑いやがったな!?」

オレンジのクリスタルが輝く。が、全員笑いをこらえるのに必死だ。それに対して私は笑いを通り越して感心していた。いくら能力を持っていても扱える者は少ない、余程強く願ったんだろう。並大抵ではなかっだろうな。

「それじゃあ次は私が。」

撫子様だ。

「私は...実は戦いとか、争いごとが苦手なんです!私自身も、能力も...。」

それは皆様ご存知では...

「そうなのであるか。」

そうか、琴息がいたんだった。

桃色のクリスタルが輝く。

「じゃあ次は俺だな...。」

おや?何やら夏葵様のテンションが低い。

「しゃあねえ、言わなきゃ進めねえ...。」

ブツブツ何かおっしゃっていらっしゃるようですが、皆様に聞こえていなければ意味が無いのでは?

「俺は吸血鬼が苦手だ!」

うわっ、びっくりした。

「バカバカしいと思われるかもしれないが、その理由はただ怖いからだ!!」

…………...はい?.............ふっ

「クスッ」

「あっ、美琴、月、お前ら笑ったか!?」

「すみません、でも...。」

「その年で吸血鬼が怖いとか、いくら何でもビビリすぎだろ...プッ」

「それを言うならお前の『暗闇が怖い』も俺と同格かそれ以下だろうが!」

「あ”!?」

月様、夏葵様で喧嘩を始める。

「次は吾輩であるが...。」

見ると、紫と赤のクリスタルが輝いている。

「じゃ、琴息はスルーで。」

「なっ...。」

佳奈が琴息を落ち込ませる。あの頃から変わっていないようだ。

「次は僕だな。」

次は主様ですか。

「僕は実は......女だ。」

はい!!?

「へっ?!」

と美琴様と琴息

「え!?」

と佳奈

「ふあ!?」

と撫子様が叫ぶ。

月様と夏葵様の喧嘩も一瞬で終わった。

水色のクリスタルが輝くが、そんなことはもう誰も気にしていない。

「『優君』じゃなくて『優ちゃん』だったの!?」

「その割に男子制服来てたけどね。」

「何でそんな事をしてたんだよ?!」

佳奈、撫子様、夏葵様から一気に質問された主様は

「うるさいっ!」

と、終わらせた。

その後もしばし口論になる。

「あっ」

佳奈が何か思いつく。

「次は私が言うわ。」

佳奈...

「私は...。」

大きくなったな。

「半分しか人間じゃないの。もう半分は......吸血鬼なの。」

     ──────ズザッ──────

主様、琴息が佳奈と距離を取る。

「吸血鬼って事は...。」

「我輩達の血を...」

と、青白い顔をして言う。

「そんなわけ無いでしょ。私にとって人間の血は美味しくないものなのよ。」

「そうなんだな。」

「うん、夏葵。」

緑のクリスタルが輝き始める。残るは青のクリスタルだけ。そして

「残るはお前だけだぞ、羊。」

主様.........言いたくなかった。

「私は......私も佳奈様と同じ半分吸血鬼です。」

「そうなの!?」

全員がハモるが、クリスタルは輝かない。あれも言え、と言う事か。

「そして、私の本名は風切かざきり 氷我ひょうがと言います。」

「えっ、風切?風切って...。」

と撫子様が呟く。

「まさか...。」

夏葵様が『は?』と言わんばかりにこちらを見る。そして佳奈は

「矢っ張り.........氷我兄ちゃん...良かった...良かったけど、何で?何で顔見せてくれなかったの?」

佳奈が泣き出しそうになっている。そんな中でもクリスタルは輝き出す。そして

      ────ゴゴゴゴゴ────

そんな音と共に下から道が出て来る。

「佳奈、聞きたいことは山程あるかも知れないが、今は先を急ぐぞ。主様、隠していた事、申し訳ありません。」 

主様は笑顔で

「気にするな。妹と再会できて良かったな。」

主様...

「はい。有難う御座います、主様。」

夏葵様が『理解できない』といった表情で呟く。

「羊が言ってた『妹』って佳奈の事だったのか。...なんともなあ。」

そう言った夏葵様の言葉に撫子様も反応する。

「確かにそうだね、私も何か納得いかないもの。佳奈ちゃんって捕まっても逆に捕まえてきた人達を捕まえそうだもんね。」

(私と佳奈以外)「確かに...!」

「酷いわね。私もか弱い乙女なのよ。」

「佳奈くん...であったか、初めて会った時も殺気満々だった事から察するに君は」

「琴息、ちょっと黙ろうね。」

出た、佳奈の殺人スマイル。

「すみませんでした。」

あの琴息がこんなにあっさり謝るとは。

「と、ともかく、先を急ぐのである。」

ん?琴息震えていないか?

しばらく進むと7つに分かれた道。

「こっちである。」

中央の道へ五歩歩いた場所で止まった。そして

「佳奈くん、ここの床を落とす事は可能であるか?」

一体何を言っているのか。

「ええ、できるわよ。『風神』」

────バコンッ──────ドンガラガッシャン!─────

凄い音がしたが、琴息死んでないだろうな。

「琴息さん、大丈夫ですか...?」

撫子様が言う。返事が無い上に土煙が凄いため確認もできない。

「だ、大丈夫である。」

あれで生きているとは、琴息もなかなかにバケモノじみている。

「殺す気であるか!?」

佳奈に掴みかかる。

「だって『床を抜け』って言うから...。」

「だからと言って吾輩ごと抜く事は無いのである!」

まあ確かに...。

「さっさと行こうぜ。永久に終わらないだろ。」

夏葵様、少々怒っていませんか?殺気がとてつもないんですが。

「「!はい...............。」」

佳奈と琴息が同じようにビクッと反応し、従う。相当怖かったのだろう。

しばらく進み、再び扉。此処が『プロブレン』の部屋か。

「ここが第二フロアボス、煉獄鳥の『プロブレン』の部屋である。」

ここが、プロブレンの部屋か...

「皆、行くわよ!」

佳奈の一言で部屋へ突入した。


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