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転生したら最悪の領主で破滅寸前の領地を押し付けられたので内政チートで立て直します  作者: レモンティー


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第三十話:地下の牙――異質なる者

夜の商業都市。

かつて繁栄の象徴だった石畳の下――

そのさらに奥深くで、“何か”が蠢いていた。


「位置は特定できたか」

レアルの問いに、ミディアは頷く。

「はい。旧倉庫街の地下……かつて密輸に使われていた坑道です」

「規模は?」

「……不明です。ただし」

一瞬、言葉を切る。

「人ではありません」

沈黙が落ちた。

老将軍・ヴァルクが低く言う。

「……魔物、か?」

「それとも、別の何かか」

若き戦術家・エリオが続ける。

レアルは、静かに立ち上がった。

「確認する」


地下坑道。

湿った空気、腐臭、そして――異様な静けさ。

アルフォンス領の精鋭部隊が、灯りを手に進む。

先頭には若き戦術家・エリオ。

後方には老将軍・ヴァルク。

そして中央に――レアル。

「……音がしないな」

「ええ。生き物の気配が薄すぎる」

ミディアの言葉通りだった。

“いるはず”なのに、“感じない”。

その違和感。

次の瞬間――

「――来るぞ」

レアルの声と同時に、

影が、壁から“剥がれた”。


それは、人の形をしていた。

だが、人ではない。

黒く歪んだ体。

目も口もない“顔”。

そして――

音もなく、襲いかかる。

「散開!」

若き戦術家・エリオの指示が飛ぶ。

だが敵は、速い。

兵の一人が反応する前に――

“影”が、その身体を貫いた。

「なっ……!」

血が、遅れて噴き出す。

「実体はある……だが軽い!」

老将軍・ヴァルクが剣で斬り裂く。

手応えはある。

だが――

「数が多い!」

次々と、壁から影が剥がれ落ちる。

十、二十――いや、それ以上。


「下がれ」

レアルの声は、冷静だった。

その手に、淡い光が宿る。

「……やはり、そうか」

影の動き。

反応。

そして――“殺意”。

「これは“生物”じゃない」

ミディアが息を呑む。

「では――」

「“作られたもの”だ」

レアルは一歩、前へ出た。

「つまり、制御者がいる」


その瞬間。

坑道の奥――

“何か”が笑った。

「……気づくとはな」

低く、歪んだ声。

影が割れ、その奥から現れる。

フードを被った、人影。

だがその目は――異様に光っていた。

「貴様が、この領の主か」

「そうだ」

レアルは一切揺れない。

「お前は?」

フードの男は、ゆっくりと手を広げた。

その背後で、影が蠢く。

「我らは、“影を喰らう者”」

「この都市は、良い“餌場”だったが――」

歪んだ笑み。

「奪われたのでな」


若き戦術家・エリオが低く構える。

「敵対確定だな」

老将軍・ヴァルクも剣を構える。

「久々に、骨のある相手か」

だがレアルは、手を上げて制した。

「……いや」

静かに言う。

「これは“戦”じゃない」

「は?」

若き戦術家・エリオが振り向く。

レアルは、影使いを見据えたまま言った。

「交渉だ」


空気が凍る。

「……正気か?」

影使いが笑う。

「我らと?」

「そうだ」

レアルの声は揺るがない。

「お前たちは、“餌場”を求めている」

「ならば――与える」

その一言に、

ミディアの目がわずかに細まる。

「……レアル様」

だが止めない。

理解しているからだ。

これは――計算された一手。


「条件は三つ」

レアルは淡々と告げる。

「一つ。無差別な殺傷は禁止」

「二つ。指定区域でのみ活動を許可」

「三つ。俺の命令には従え」

影使いは沈黙した。

そして――

「……断れば?」

レアルは、わずかに笑った。

「ここで全滅させる」

その背後で、

兵たちの殺気が一斉に高まる。

老将軍・ヴァルクの剣。

若き戦術家・エリオの構え。

ミディアの冷たい視線。

逃げ場はない。


数秒の沈黙。

やがて――

影使いは、肩を震わせた。

「……面白い」

笑い声。

「人間にしては、狂っているな」

「よく言われる」

レアルは即答する。

「いいだろう」

影使いは手を下ろした。

「契約だ」


影たちが、静かに消えていく。

戦いは――終わった。

だがそれは、“勝利”ではない。

“取り込んだ”のだ。

異質な存在を。


地上へ戻る途中。

若き戦術家・エリオがぽつりと呟く。

「……あれを、飼うのか」

「違う」

レアルは否定する。

「使う」

ミディアが静かに言う。

「新たな“刃”として」

老将軍・ヴァルクは苦笑した。

「……底が知れませんな」


【統治システム更新】

・統治度:90 → 88(未知勢力導入による不安)

・資金:微増(地下資源・裏取引ルート確保)

・影響力:上昇(裏社会への支配拡大)

・人口:84,000 → 85,000(微増)

【新規状態】

・地下勢力:「影を喰らう者」従属化

・リスク:内部不安増大(統治度低下要因)

・アルフォンス領:表と裏、両面支配へ


そして――

レアルは理解していた。

これは“力”であると同時に、

“爆弾”でもあることを。

「……さて」

次の一手を考えながら、

彼は静かに呟く。

「どう使うかだな」

影は、従った。

だが――

本当に“支配した”と言えるのかは、

まだ誰にも分からなかった。

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