いろいろ事件です!
そういえば、とシスティナはこの家に本棚があることを思い出す。それに伴い、運ばれた荷物の中にも本が何冊か入っていたはずだ。もしかしたら、その本の中に魔物の解体について書かれているかもしれない。
「あった、これだ!」
急いで家に戻ったシスティナは、地下倉庫の木箱の中の一つから本が入っているものを見つけた。
「あとで本棚に並べなきゃ……」
そんなことを考えつつ、システィナは目当ての魔物についての解体の本を手に取った。周囲が森ということもあり、魔物の本も用意してくれていたようだ。
ネズズのことも書いてあって、『肉は食べることができるが硬くてあまり美味しくない』とある。有用な瓶詰素材はないようだが、小さな魔石が稀に取れると記載されていた。
「……なるほど、瓶詰の素材にはならないのね。でも、魔石は使うからやっぱり解体してみたらいいよね?」
そして瓶詰以外に、システィナが気になっていることが一つ。
「ネズズはお肉が食べられる……!? お肉って、すごく美味しいやつだよね? でも、まずいって……どういうこと? まずいお肉なんて、あるのかな?」
システィナはずっと塔で残飯のような食生活を送ってきたため、いまいち食に対する美味しくないを想像できないでいた。
「とりあえず、解体してみて――あっ!」
本で解体手順を読み進めていると、解体ナイフというものを使うことに気付く。が、システィナはナイフなんてもっていない。というか、この家には武器になるような刃物の類は一切置いていない。キッチンはあるけれど、包丁は用意されていないので、何かを切るという行為をするのは難しいだろう。
「……うん、とりあえず今日は諦めるしかないかも」
システィナは肩をしょんぼり下げつつ、先ほどの場所に戻ることにした。
「………………あれっ?」
しかし戻るとネズズの死体は消えていて、小さな魔石だけが落ちていた。
『キュイ!』
「え、もしかしてスライムさんがネズズ食べちゃったの?」
『キュイキュイ!』
まさかそんなと思ったけれど、スライムの反応を見るにどうやら本当らしい。その証拠だとばかりに、スライムはさらに隣に転がっていたネズズの死体を体の中に取り込んで溶かしてみせた。
「すごい! でも、魔石はないみたいだね」
二匹目のネズズの死体からは魔石は取れなかった。本にも稀に手に入ると書いてあったので、全ての個体から魔石が出るわけではないようだ。
「わたしが家に戻ってる間に、さらにネズズを倒してたの? スライムさんも、森ネコさんも強いね! ありがとう!」
システィナは使い魔の二匹をいっぱい褒めて、たくさん撫でる。
『キュイ~』
『にゃあ!』
それから少し森の中を探索しながら使い魔二匹のレベルを上げて、システィナたちは家へ戻った。
***
森の家で、瓶詰を作りながら使い魔と仲良く暮らす生活をしていたシスティナだったけれど――今、困難に直面していた。
「お腹空いた……」
システィナを森に送ってきた騎士たちが、物資を一〇日に一度届けると言っていたのに来る気配がない。もう一五日だ。
最初に運ばれた食料はすべて食べてしまったので、システィナの手元には何もない。
「このままだとお腹がすきすぎて死んじゃう。あと数日なら我慢できるだろうけど……どうしよう」
システィナが悩みながら部屋の中をうろうろ歩いていると、『にゃ!』と森ネコの声が聞こえてきた。見ると、棚に置いていた森ネコの入った使い魔の瓶詰の中からシスティナのことを呼んでくれたようだ。
「森ネコさん、どうしたの?」
システィナが森ネコを瓶詰から出すと、こっちだよと言うようにドアをカリカリして外へ出せと要求してきた。
「外に行きたいの? でも、そうだよね。外で木の実とか手に入れれば、お腹は満たせるもんね!」
『にゃ』
となれば善は急げ! とばかりにシスティナがドアを開けて外に出たら――背中から羽が生えた、小さな妖精が家の前にいた。
『あなたがここの家主?』




