#023 リーゼロッテはアドミスを出迎える。 ⋯⋯そして
「ふう⋯⋯やっと故郷に戻ってこれたわね。 やっぱり都会は苦手だわ」
そう私は私の仲間たちとこの故郷のエルリーフ王国に戻ってきたのだった。
私リーゼロッテはこのエルフの国エルリーフ王国の王族の1人である。
といっても王家は100歳くらい年上の兄様が継ぐから私は好きに生きていけるんだけどね。
そんな私の活動の一環が今やっている帝国からの奴隷解放である。
「こうやって帝国の力を削いでいき、こっちは仲間を増やしていく⋯⋯完璧」
しかしそんな完璧な計画にも狂いがあったのだ。
「⋯⋯まさかセレーナと出会うとはねえ」
覆面で顔を隠していたからバレてないと思うが⋯⋯大丈夫だろうきっと。
セレーナはそういうおバカな子供だからきっと平気だ。
「でもセレーナも亜人族開放を目指して戦ってるのね⋯⋯ふふ、変わらないなあ」
私は思いだす、セレーナと初めて出会った頃のことを。
あれは5年くらい前だったかな?
人間にとっては5年は長いかもしれないが私たちエルフにとっての5年などつい昨日のことのように思い出せる。
帝国からやって来た次期皇帝の妻。
そして⋯⋯このエルフの森に封印されている魔王の様子を見に来た聖女、それがセレーナだった。
最初は何考えてるかわからない子だったけど⋯⋯。
しだいにアホ皇子のアドミスの悪口を言い合ってるうちに仲良くなっていった。
私はアドミスが生まれた時から知っているけど⋯⋯。
毎年お城のパーティーで会うたびにバカになっていく残念なガキである。
あんなのと結婚させられるセレーナがマジで不憫だった⋯⋯。
「しかしまあ逃げ出せてよかったわねセレーナ。⋯⋯そういやあの時セグレイト共和国に行くって言ってたなあ、忘れてた」
それさえ覚えていればセレーナと再会することも無く⋯⋯ムーンライト仮面などというトチ狂った言い訳も無かったはずなのに⋯⋯。
「⋯⋯失敗だったアレは」
忘れようアレは⋯⋯。
バレなきゃいいのよ。
バレたら大変なことになる⋯⋯私の人生が!
私たちエルフはこの森で穏やかに過ごす種族なのだが⋯⋯。
中には「私は他のエルフとは違うのよ!」という自己主張が強い子も居たりする。
私の場合はそれは魔法修行に向かっていたんだけど⋯⋯。
やっちまったエルフの中には人間の里ではっちゃけてやらかして黒歴史を作りすぎて⋯⋯。
エルフの里に戻り、人間たちの記憶が消え去るまで100年間くらい引きこもる若者が絶えないのだった。
まだそれで済めば傷は浅いと言える。
中には100年以上経っても人間の世界の歴史に残ってしまって恥ずかしくなり⋯⋯一生森から出ないエルフも居たりするのだ。
そんな末期のエルフの中には精神を病んでしまい、
『私はハイエルフ⋯⋯有象無象のエルフと一緒にするでないわ!』
⋯⋯そんな設定で記憶を塗り替えて自分を騙して生きて行く老害もわずかに居るのだった。
「ムーンライト仮面とかどうして私はあんなバカなことをセレーナに言ってしまったのか? もしバレたら私も廃エルフ人生まっしぐらに⋯⋯」
それはヤダな私だった。
だからこの秘密はぜったいに墓に持っていくと私は誓った。
さて⋯⋯そんな里帰りをした私はしばらくは今後の計画を立てつつ⋯⋯セレーナが忘れる時間経過を期待していたのだが⋯⋯。
「リーゼロッテ様! 帝国の皇子アドミスがやってきました!」
「なんですって!?」
バカな⋯⋯!?
勘づかれたというのか、私達の亜人族開放計画が!?
奴はそんな切れ者だったとでもいうのか?
⋯⋯いや、アドミスは愚か者だがその後ろのアグネス宰相は油断できない女傑だ、奴の指示かも?
「⋯⋯とにかく対応しないといけないわね」
こうして私はアドミス皇子と再会することになったのだった。
「ようリーゼロッテ、久しぶりだなー。 あいかわらずまっ平だなお前! いつになったら育つんですかねー」
⋯⋯イラッ!
我慢だ⋯⋯我慢しろリーゼロッテ。
「うふふ⋯⋯私達エルフは長寿。 そう簡単に見た目が変わるものではありませんわ」
「エルフってばカワイソー。 いつまでも大人になれないなんて!」
そう無駄に成長しきった贅肉をゆらす不愉快な女まで一緒に来た。
この女はたぶんアドミスと一緒にいた従妹の子にちがいない⋯⋯たぶん。
もう完全に大人の色気を持った少女なので以前の可愛らしい面影があまりないが⋯⋯こういう生意気な言動は変わっていないから間違いない。
「あなたはたしかロザンナさん⋯⋯ですよね?」
「覚えてたんだ! へー記憶がいいんですね、エルフなのに!」
どういう意味だ? なんかエルフに偏見でもあるのかこの女は?
なんにしても失礼な態度だった。
私はオリハルコンのメンタルで話を受け流す。
「それでアドミス皇子。 どうしてこのエルリーフ王国へ?」
とりあえずいきなり焼き討ちとか言い出す雰囲気ではないが?
「おうそうだ! 僕がこんなド田舎まで来てやったのはアレだ!」
「アレ⋯⋯とは?」
「聖剣だよ、せ・い・け・ん」
⋯⋯は?
「このエルフの国にあるんだろ? 僕の聖剣が! それをわざわざ取りに来てやったんだ」
ここまで言われてやっと私はこのアドミスの考えがわかったのだった!?
「聖剣って封印のアルテミスの剣の事!? あれは聖剣なんかじゃなくて!」
そう⋯⋯あれは魔王を封印するための剣で魔王を倒せるような聖剣とは違うのだ。
「神託があったんだ。 僕に魔王を倒せと神が! だから僕にふさわしい聖剣を取りに来たんだ!」
「ちょっと待って! あの剣は魔王を封印している剣で! このままだとあと200年くらいは封じておけるのよ! だから触らないで!」
そう私は必死に止めるが。
「なに! あと200年で魔王が復活だと! 大変じゃないか! そうか! だから僕に魔王を倒せと⋯⋯」
なんかヤバい妄言を垂れ流すバカ皇子だった⋯⋯。
「あんたには関係ないでしょ! そりゃ200年なんて私達エルフにしてみれば今から対策している真っ最中だけど⋯⋯あんたは100年後は死んでるんだし関係ないじゃない!」
そうだ、だから私達は200年後に合わせて魔王討伐の準備を進めていたのだ。
「200年か⋯⋯それなら僕たちにも無関係じゃないな」
「はあ?」
意味がわからん?
「私は神より不死の加護を授かりました。 そして私とこの聖痕でつながるアドミス様もまた不死の存在なのです!」
そうドヤ顔でわけわからん事を言い出すロザンナだった。
「不死ですって⋯⋯? あなた達が?」
「そうだ! だから僕たちは魔王には絶対に負けない! なら200年も待つ必要はないだろ? 今ここで最強の力を持つ僕が魔王を倒す!」
ヤバ⋯⋯こいつら今すぐに取り押さえないと!
「者ども! こいつらを封魔神剣アルテミスに近寄らせるな!」
「「「はい!」」」
私の指示でエルフ兵が駆けつけるが⋯⋯。
「貴様ら! 僕が聖剣を手に入れる時間を稼げ!」
「「「⋯⋯はい」」」
死んだ目をした人間の兵士が立ちふさがる。
「じゃあなあ!」
「まってアドミス様!」
「ちょ!? 待ちなさいよ! ⋯⋯⋯⋯どけ、お前ら!」
そう私は人間の兵に怒鳴りつけるが。
「すまんな⋯⋯これも仕事でな」
「逆らったら故郷がどうなるかわからんし⋯⋯」
彼らの苦悩もよくわかるが⋯⋯。
「だったら通しなさい! いま魔王が復活したら、その故郷も無くなるわよ!」
だめだ! こいつらに何を言っても通じない!
もうすっかり判断力が無い死んだ目の人間たちだった。
そのくせしぶとい!
「こうなったらもう! ストーンウェーブ!」
私は周囲を薙ぎ払う石の津波をおこして兵士たちを蹴散らした。
「リーゼロッテ様! ここは我らに任せて!」
「わかった! ここは頼んだわよ!」
私は走り出す⋯⋯アドミスを追って封魔神剣の所まで。
だがしかし⋯⋯!
「おー! これが僕の聖剣か!」
「すごいですわ! アドミス様にふさわしい!」
その剣に触れようとしていた!
「ダメ! 触っちゃダメ! 剣が壊れる!」
あの剣は封印の魔力は残っているが⋯⋯構造的な強度はもうほとんど無いから⋯⋯。
「ふんッ! ⋯⋯あ」
パキンッ。
そう渇いた音が鳴り響いたのだった。
「折れた!? 僕の聖剣が!? なんで!」
「そんな聖剣が折れるなんて!? そうよ! これは偽物の聖剣よきっと!」
「偽物とかじゃなくて聖剣じゃないって言ってるでしょ! それはただの楔なんだから!」
ゴゴゴゴゴゴゴッ。
ヤバい振動がエルフの里に鳴り響く。
私は悟る。
もう魔王復活は止められないと!
「逃げるわよ! あんたたちも逃げなさい!」
そう私は退避する!
「ちょっと待ちなさいよ! これどういう事よ!?」
「そうだ! 僕の聖剣はどこに──」
その瞬間。
2人のバカは消し飛んだのだった。
魔王の復活によって。
「クカカカカ⋯⋯。 セレマーサめ⋯⋯。 我を封じたくらいで神きどりとか片腹痛いわ。
返してもらうぞこの世界を。
そして我がスキルもな!」
この日⋯⋯魔王が復活した。
お読みいただき、ありがとうございます。
続きを読みたいという方はブックマークの登録を、
面白いと思って頂けたなら、↓の☆を1~5つけてください。
感想もいただけると励みになります!
皆さまのご支援・応援を、よろしくお願いします!




