第80話【天界の神々達】
一方で、天界では【破壊の邪竜】の異名を持つ魔王・レッドクリムゾンが復活した。その挨拶代わりなのか自身の眷属である飛竜達の封印を力ずくで解いてしまった。
神の力をも粉砕する出鱈目な膨大な魔力の赤紫色の閃光はそのまま天界の地に直撃していたのだ。
レッドクリムゾンから宣戦布告であったからだ。
慌てた神々達は早急に対策するべく集まり、緊急会議を開いていた。
【癒しの女神】・ティア。白い羽衣を纏った金髪の美女。人間らに信仰されている女神の1人。
【戦いの女神】・アテナ。ビニキアーマーに大盾と槍の達人である女神。アマゾネスから信仰されている女神の1人。
【狩猟の女神】・アルテミス。弓矢の名手でありエルフ達から信仰されている女神の1人。
【豊穣の女神】・デメテル。大地の新緑を産み出す女神。人間らに信仰されているもう1人の女神。
【薬師の神】・ディオス。薬草学・薬理学の知識を与えているが信仰は女神らほど地上に影響を及ぼさない程度に見守っている男神。
【鍛冶の神】・ガルス。聖剣や神剣・武具を造り出すドワーフの神。鍛冶職人やドワーフ達から信仰されている男神。
【創造神】・ガウディーン。この世界の産みの親であり一応この世界の管理者であり一番偉いお爺ちゃんの神。
それぞれが深刻な顔をして自席着くと創造神・ガウディーンが口を開いた。
「破壊の邪竜・レッドクリムゾンが復活してしまったのはお主らも知っておるな?」
「そりゃ、攻撃されて被害出てるのに気づかない馬鹿が神様やってるワケないよ? てか、どうするンの? レッドクリムゾンと巨人族を相手にするなんて俺はヤダよ?」
薬神・ディオスが溜め息をついて速攻で匙を投げ出したのである。
「ディオスよ。もう少し何とかしようと神として知恵を絞らんか?お前さんも一応は神だぞ?」
鍛冶神ガルスがディオスを説得するが『どうやっても無理なもんは無理だってぇの~!』と思考を放棄していた。
「そもそも、レッドクリムゾンも巨人族もガウディーン様やアテナらでも手に負えないから追放したんじゃん?
ガルスの爺さんがまた徹夜で聖剣や神剣とか造ってデメテルの姉ちゃんが試練の場所造ったりして【異世界人】にやらせるんでしょ?
なら、俺、必要ないじゃん。俺、薬神よ?」
「ヌゥ、それはそうじゃがのぉ。レッドクリムゾン相手となると儂の作品でも攻撃が通るかわからんぞ?」
ガルスも蓄えられた髭を触り渋い顔を見せる。
「それに異世界人を呼び寄せたとしても武具を使いこなせるかは別ですものね。確かにディオスの考えも事もわかりますよ? それにレッドクリムゾン相手となると・・・ねぇ?」
豊穣の女神・デメテルもその為に地上を造り出し魔物や魔獣を育てるのに怪訝な顔を見せたのだ。
だが、癒しの女神・ティアは地上の惨劇をどうにかしなければないという。
「け、けど、私たちが何とかしないと地上の人間や他の種族に被害がでてしましますよ?」
「まぁ、ティアは今回は仕方ないだろう?フェンナト王国の国王は【聖女殺し】で処罰が確定してたし、フェンナト国王が死ぬはどうでもいい。
けど、聖女の娘が魔族と契約って問題あるんじゃねぇの?」
「そ、それは・・・そうですが・・・」
「ディオス、お前は先ほどから文句ばかりではないか!!」
「そうですよ? もう少し真剣に・・・」
癒しの女神ティアに反論すると戦いの女神・アテナと狩猟の女神・アルテミスが庇った。
「はぁ、だ~か~ら~、俺たちじゃレッドクリムゾンの撃破は無理って話だろう?
アルテミスの矢もアテナの槍も効かない。ガウディーン様の力を跳ね返す化け物だぞ?
まぁ、ただ別に手段がないワケじゃない。
けど、アルテミス関係でこっちから神託出しても拒否される可能性が高いから無理って話なんだよ・・・」
「ハッ?わ、私なのか!!?高貴なエルフの女神である私のせいだと!!?」
「そうそう。お前の御神体にゲロ掛けたエルフのリザーナって子覚えてるか?
その子がラビュリンティスのミノタウロスを使い魔にしてるんだけどねぇ?
どういう訳か、異世界人の魂と入り交じってるみたいなんだわ」
「ぬ?ディオス。お主が地上の者を気に掛け見守っているのは珍しい事だな?」
ディオスは長テーブルに両足を乗せて横暴な態度を取ったが、薬剤師で気になるやつに加護を与えようとしたら拒否されたというのだ。
その加護を与えようとした者こそドラッグであり、その様子を観察していた矢先にリザーナらの存在を知ったと話し始めた。
実際にディオスが観察していた映像を他の神達にも見せた。
「俺達が復活してから騒いでたのにアイツらは復活するのを感じ取って最善の策を取っているし、俺らに敵意ある5匹の怪物の一匹。迷宮の怪物【ミノタウロス】が大迷宮・ラビュリンティスに破壊の邪竜レッドクリムゾンと巨人族を封印しようとしてる最中みたいだけど?」
「・・・はて? 異世界人の魂が来たという情報は訊いておらんが?」
「何かどっかから迷い込んだらしいよ?けど、これなら俺らが余計な事しなくても大丈夫だと思うけどねぇ?
まぁ、その功労者であるリザーナによりにもよって女魔王リリスの呪いを着けるってちょっと器が小さくない?まぁ、ゲロ掛けたのは悪いかも知れないけどさぁ~」
「グヌゥッ・・・!!ま、まさかあのリザーナがあのミノタウロスを使い魔にするとは思ってもみなかった」
「後は割と伸び代ありそうな蛇身のエレーナに元大魔導士のメルディアが水妖魔になって使い魔になってるし、こっちから神託する必要はないかもよ?」
意外なことにもしっかりと地上の事をリサーチをしており、現状をこの中で一番理解していたのは薬神・ディオスであった。
少なくとも復活したから加護を馬鹿みたいに与えて粗悪品や火力不足の勇者や賢者を呼び寄せるよりもこちらのが面白そうだとディオスは進言した。
だが、他の神は半信半疑であった。本当にあの狂暴で獰猛なミノタウロスが素直に力を貸してくれるのかという疑問であった。
すると、ミノタウロスに名前をつけるとアステリオスを名乗り自分が食いたいから異世界の食い物をこちらの世界にも広めてくえるようにしろという衝撃の事実にディオスは大笑いし、他の神達は唖然としていた。




