表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/28

地の賢者


 時間は少しさかのぼり、ししょうーー里実さとみーーは、地の賢者の住むログハウスを訪れていた。

(建物はバージョンアップ前と変わっていない。賢者もバグのままだと、無駄足になってしまうな…)

 旧スピリットクラスタでは、物語の背景などを解説する「地の賢者」というNPCが設定されていた。

 しかし、当時はプレイヤーの応答に対して、ちんぷんかんぷんな答えを伝えるというバグがあり、ほとんどプレイヤーが訪れる事はなかった。

 ししょうは、このゲームについて、実は危険な要素があるのでは?と考えていた。

 それを調べるために、運営や、開発者を探したり、色々なことを試したが、大きな情報を得る事が出来なかった。そして、思い出したのが「地の賢者」だった。


 ししょうがギギギギギという音でドアを開けると、陳腐なロッキングチェアーに黒猫が寝ていた。

 黒猫は来訪者にあくびで出迎えると、毛づくろいを始めた。


「やっぱり、君が一番だったね」

「黒猫の黒ノ信、2度目まして」

「だから、僕の名前は神だってば……まあ、いいけどね…」


 黒猫は猫特有の伸びをして、ロッキングチェアーを降りた。スタスタと部屋にあるソファーに飛び乗ると、ししょうに「まあ座りなよ」と席を勧めた。


「色々と質問があると思うけど、ここではルールがあってね」

「ルール?」

 ししょうは黒猫に勧められたまま、向かいのソファーに腰掛けた。


 初めてスピリットクラスタのゲームにログインした後、こうとりょうの二人と同じように、ししょうも黒猫と出会っていた。黒猫はししょうにもオススメスキルは「賢さ」だと教え、ししょうはそのまま賢さのスキルを集め続けた。

 その結果、ししょうのスキルは賢さで埋め尽くされている。


ししょう

 賢さ+3

 賢さ+3

 賢さ+3


「まさか、こんな短時間で賢さ+9にするなんてね。君にはビックリするよ…」

 黒猫はビックリというよりは、呆れた表情をしている。

「いやな予感がするので、先にルールをどうぞ」

「ふふ、さすが賢さ上限値。やりにくいなあ…」

(やっぱり、9が上限値だったか…)

「まず、この家にたどり着けるのは賢さが+3以上が条件になっているんだ。そして、+3毎に1つ質問ができるよ」

「なるほど、それでオススメを賢さだと言ったのね。これは個人の感想だから、質問じゃないよ」

「そんな言葉のあやをとる事はしないよ…僕は神だからね…まあいいや。それでは質問をどうぞ!神の名に誓って正しい解答をしよう」

(+9なので、3つまで質問が出来る。ここは慎重に選択しなければ、必死に集めたのだから…)


 ししょうは数秒間の後、静かなトーンで質問を始めた。

「質問1まずはプレイヤーの絶命について、危険性(リスク)を正しく説明してほしい。現実に戻った場合、何かしらのペナルティーがあるのでは?」

「ない。このシステムに適合できる魂は非常に少ない。君たちは瞬き光を放つ、希少な宝石にも等しい。むしろ、リアル側で死亡する危険が発生した場合、こちらで肉体を含めて全力で保護する」

 黒猫は間髪を入れずに、ししょうに説明する。感情が読み取りにくい、事務的な返答だった。

(1つ目の質問で、このゲームがデスゲームではなく、安全である事が確認できた。あと2回の質問で、このゲームの全貌を聞き出さなければならない)

 ししょうの考える最も最悪なゲームではないようだ。黒猫からは神をロールプレイするだけではなく、プライドの高さが感じられる。賢さの件も嘘は言っていないし、1つ目の解答も信じられる物だろう。


「質問2、このゲームの目的は何なのか?プレイヤーを宝石に例えていたが、それらで利益をもたらしているのか」

「このゲームの目的はスピリットクラスタ生成の実地検証だ。君たちにはデータを集めてもらうために、参加してもらっている。この世界における貢献は、計り知れない。私個人の利益という意味では違うが、今後、全ての生命にとって有益である」

(スピリットクラスタ生成?これを聞くべきなのか。しかし…)


「質問3、データを集めるのが目的と言ったが、集め終わったらどうなるのか?」

「このゲームはデータを集める対価として、プレイヤーに与えた物であり、データを集め終えても、自由に使ってもらって構わない。ログインしたく無ければ、ブラウザから設定できる」

「は?ブラウザ?設定画面?なにそれ?」

「いやいやいや、ホームページにログインボタンあるでしょうが!」

「えええええ、TOPページにサービス停止のお知らせが……、でも、ログインできたのね…」

「う、うん…そこに説明もあったんだよ…今の3つ……」

(それで、事務的な口調だったのか…)


「ずるい、もう1回。質問させて」

「ダメ」


 ししょうは腹いせに、わしゃわしゃと黒猫を撫で回して、その日はログアウトした。


「ふわわわわ、閃きはセンスだからね。賢さスキルは影響しないか…」

 黒猫は呟くと、再びあくびをして眠りについた。


ちょっと早いですが、メリークリスマス!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ