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62:それからのこと……

最終話です。

 あれから数年経ちました。

 私は今、王室の秘書としてアステア国で働いています。


 コルン王国を始めとした諸国の助けもあって、アステア国は無事に復興しました。

 アステア国の頂点に立つのは、もちろん女王であるディア様です。


 もともとお綺麗な方でしたが、最近ではより一層美しさに磨きが掛かって、各国からの縁談が沢山届いています。

 全部断っていらっしゃるようですけど、大丈夫なんでしょうか?



 さてと……お仕事もひと段落しましたし、皆さんがどうされているのか、ちょっとだけ覗きに行きましょう。


◆◇◆◇


「エゴイ君、いい加減高等魔法くらい覚えなさいよ」

「無理ですよー。僕なんかが、上級まで使いこなせるようになっただけでも奇跡なんですから……」

「あんたはそうやって、すぐ諦めるね……いいわ、あたしがみっちり教えてあげるから!」

「そ、それって、手取り足取りですか!?」

「エゴイ君……やっぱあんたエロイ君だわ……」


 メアリ様は、宮廷魔道士の副長に就任しました。

 ディア様は魔道士長になってほしかったそうなんですけど、自由が減るから嫌だと断ってしまったそうです。副長になるのも本当は嫌だったみたいですね。

 そして、メアリ様に怒られている男性、彼がこの国の魔道士長です。

 アステア国にはそもそも魔道士が居なかったので、コルン王国から数名の方に来ていただく事になりました。エゴイ様もその一人です。


「それよりも、凄いのよ!」

「何がです?」

「魔王が滅んでから、闇の属性魔法にも【デオ】の加護が付くようになったの!」

「それってつまり……?」

「禁術も安全に使えるようになるかもしれない!」


 禁術とか、何やら物騒なこと言ってますね……。


「メアリさん、一体何を企んでるんですか……?」

「ふっふっふ……とっても良い事よ!見てなさい!メアリ様に不可能は無いってところを見せてやるわ!」


 ここは、いつ来ても賑やかです。メアリ様とエゴイ様のコンビ、私は結構好きだったりします。

 だって、見ていて面白いんだもの。

 メアリ様も、彼と話す時はなんだかんだ言っても嬉しそうにしてるんですよね。


 でも、ちゃんとお仕事はして下さいね?


◇◆◇◆


「斧を振る時は重さも利用するんだ!」

「「「オッス!」」」

「流れに逆らうんじゃねえ!」

「「「オッス!」」」


 アステア国の兵士長に就任したレド様。

 今日も部下の人達に、斧の訓練をしているようです。


 兵士と言えば、槍か剣を武器に魔物と戦うイメージがあったんですけど、レド様が兵士長になってから斧が主流になってしまったようです。

 レド様いわく、“斧は防御にも攻撃にも対応できる優れもの”らしいですよ?


 魔王の脅威が無くなったとはいえ、世界にはまだ魔物が溢れています。

 以前の様な凶暴性は無くなりましたが、魔物が危険なのは変わりありません。

 有事に備えての日々の訓練は大事ですね。


 そういえば、町の方から木の伐採の依頼がきていたような気がします。

 ちょうど良いので、今度レド様達にお願いしちゃいましょうか。


◆◇◆◇


「あー、もう!なんでこんなに仕事がいっぱいなの!?」


 ディア様は、執務室で各国に送る書状を書いていました。

 お部屋のあちこちに、丸まった紙が捨てられています。


「ディア様、ハーブティーの用意ができましたよ」

「ありがとう、リズ。あら、とっても美味しいわ」

「修行の成果です」


 ディア様はハーブティーを飲みながら仕事を続けています。

 どんどんそのお背中が丸くなっていって、大きく息を吐きました。


「……ちょっと休憩しましょうか!」

「そうですね」

 

 私とディア様は、お城を抜け出してある場所へと向かいました。



 ここは、アステア国で亡くなった方々が眠る場所です。

 コルン王国で亡くなったロデオ様の遺体も、こちらの墓所へと移されました。


「また来たわ」


 ディア様は、ロデオ様の眠る場所に花を添えました。

 小さな花弁がたくさん付いた綺麗なお花です。


「どこを探しても、あなたのようにかっこよくて、頼りになる人は見つからないわ……。ふふっ、このままじゃ私、お婆ちゃんになっちゃう」


 ディア様はそう言って、ロデオ様の墓標に触れました。

 とても優しく、愛おしむように……。


「そんな事を言ってたら、あなたに叱られちゃうわね。私ももう、一国の女王だもの……わがままばかり言っていられないわ」


 悲しそうな笑顔で、ディア様は呟きました。

 しばらく沈黙が流れます。



「さてと……仕事が溜まってる事だし、戻りましょうか」

「はい、ディア様」

「リズも、あんまり体を冷やしちゃいけないものね。付き合わせちゃってごめんなさい」

「いえいえ、大丈夫ですよ」


 風が強く吹きました。

 木々がざわめき、大きな音を立てています。


「また来るわ……ロデオ……」


 ディア様はそう言って、微かに笑いました。


◇◆◇◆


 そういえば、デミアントの女王様からもお手紙が届いていました。


 つい先日、成長したオスアリの方々が、お嫁さん探しに旅立たれたそうです。

 親としては息子の巣立ちは嬉しいけど、ちょっと複雑な気分ですと書いてありました。

 でも、デミアントのオスアリは、前世の私の兄弟達と違って子を為しても死ぬ事は無いみたいです。

 来年には、沢山のお孫さんのお顔が見られそうですね。



 さてと、今日の分のお仕事も片付きましたし、お家に帰りましょう。


 騎士団の休憩室へ来ました。

 クルスも帰り支度をしているところです。

 アステア国が復興して騎士団へ戻った彼は、騎士団長へ就任しました。


「リズ、お疲れ」

「クルスも、お疲れさま」


 クルスが騎士団長になってから、騎士達の間でも魔法剣を覚えたいという方々が続出したそうです。

 もともと素質のあった方も居たみたいで、すぐに魔法剣を使えるようになった騎士様を見て、クルスは複雑な心境だと言っていました。


 あなたは薪割りから頑張っていたものね。

 でも、誰よりも努力家だったあなたを、私は尊敬しています。



 城下町を出て、二人で一緒に帰ります。

 街道は綺麗に整備されて、夜でも安全に使う事ができるようになりました。


「そろそろ休みを取らなくて大丈夫か?」

「まだ大丈夫よ。シアさんがそう言ってたもの。それに、私はディア様のお手伝いがしたいの」


 クルスは相変わらず心配性です。

 ……それだけ私を大事にしてくれているという事ですね。


「ありがとう、クルス……」

「本当に、無理だけはしないでくれよ」


 二人で手を繋いで帰ります。空を見上げれば、満天の星空が綺麗です。

 お家が見えてきました。今日は彼の大好きな、お肉の入ったシチューでも作ろうかな。


「あ、流れ星!」


 私はお星様に祈りました。

 この先もずっと、世界が平和でありますように、と……。


……

…………

………………



 働きアリだった私は、異世界で人間に生まれ変わりました。



 辛い事もありました。

 悲しい事もありました。

 その度に、何度も挫けそうになりました。 



 嬉しい事もありました。

 楽しい事もありました。

 その度に、また頑張ろうって思いました。





 もうすぐ、私はお母さんになります。

 愛する人達と一緒に、これからも頑張っていこうと思います。





《働きアリだった私は、異世界の人間の町娘へ転生しました。 完》

これまで応援していただいて、ありがとうございました。


皆様のおかげで、こうして無事に最終回を迎える事ができました。

こんなにも沢山の方々に読んでいただけるとは思ってなかったので、とても嬉しく思っています。


ブクマや評価をいただいたり、読んだ!をしていただいたり、感想をいただいたり、初めてのレビューまでいただいてしまったりと……私にとって、この作品はきっと記念すべきものになったと思います。


これからは、ちょっと定期的な連載から離れてしまいますけど、一応新しい連載も考えています。

ただ、こちらの連載は忙しくなる事もあって、不定期更新になると思います。

あとはのんびりと、好きな作品を読んだり、短編や前作の番外編なんかも書いていこうかなと思っています。


それでは、最後に────。

これまでアリさんの小説にお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

本当に、皆様には感謝してもしきれないほどです。

また次回作で、皆様とお会いできたら嬉しく思います。


てぃろろ


==================

※後日談投稿しました。

http://ncode.syosetu.com/n2009da/

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