第一話 なんかあったようなそんな気がしなくもない
本日より第一章です。
第一章からは12時30分(昼)に投稿させていただこうと思います。
まだ投稿頻度は未定ですが、決まり次第すぐにお伝えします。
(とりあえずは週一では確実に上がると思っておいて)
それでは、本編どうぞ
――ここはどこだろうか?
思考を巡らせようと頭を回転させるも頭に閃光が走るような痛みを受け、かき消される。
「っう」
思わずこぼれた声に意識を失う前もこんな感じだったなとおぼろげな記憶が蘇り始める。
「目を覚ましたかい?」
その声が再度、記憶を覆う霧と連れ立って強烈な違和感を主張する。
内容の認識と状態の認識、どちらが先に意識されたのか分からないが、頭はとある結論をはじき出す。
(小屋の中、じゃない)
状況を把握しようと徐々に視界の範囲を広げていく。
どうやら馬車の中のようだった。
しかし、その情報は疑問を増やす役割を担うだけだった。
仕方がないので、ようやく声の主の方へ視線を向ける。
視界に映ったのは煌びやかさを飼い慣らした金髪の男性と不思議な魅力を放つ漆黒の髪の男性だった。
――誰だったか。
記憶に新しい顔ではあったが、その存在が
どういうものだったかはすっかり抜け落ちて
思い出せなかった。
違う。
思い出す気がない、の間違いだろう。
だって、初めから考えちゃいない。
目の前の人物たちは俺がそちらを向くまで待っていたらしかった。
腰掛ける姿はまさに余裕そのものとも言えようか。
その身なりも振る舞いもとにかくすべてが「俺」の前に現れるにしては合わない。
空間的異物、おかしな奴ら
それは半ば強制的に、しかし、的確に記憶を引き出す。
「とんだ物好きもいたものだな、帰れと言ったはずだったが。
ああ、それとも、殺してくれる気にでもなったか、ははっ…」
最初に口にしたのは皮肉だった。
一体どんな目的があったら、あんな扱いを受けていた俺を、
無理やりにでも連れ出すなどという思考に至るのか。
たいそうご立派な偽善者だと、確かな威力を持って、拳を放った。
しかし、そんなものは一瞬たりとも存在しなかった、というように余裕を崩さない微笑みが返される。
「元気そうで何よりだよ。
そろそろ、警戒を和らげてほしいものだけど。
君を殺そう、なんて思いやしないさ。
それなら最初から助けていないよ。」
――ならば、恩の押し売りじゃないか。
その言葉を第二の矢へ変換しようと、口を動かしかけ…やめた。
正確にはその必要性を奪われたというべきだろう。
「ああ、恩を売ろうと言うわけでもないよ。
そうだね、強いて言うなら、ヴァルネア王国の王族として…
いやもっと簡単なことかな?
ヴァルネアの地に住まうものの責務と誇りとして君を助けたんだ。」
まるで恩を押し売るような言い方に自覚があったらしい。
――やっぱり面倒なタイプだったじゃないか
…適当にあしらっておこう。
「で?その責務だか、誇りだか、それがなんだって?」
「孤児を大切にする。
それがこの地に住まうものが他の何を破ったとしても守らなくてはならないことなんだ。」
「正確には別に守らなくても、
国家によって何か罰が与えられるわけではありませんが…
非国民と見做されるのは確かでしょう。
それから…神の怒りに触れるかも。」
金髪の男ばかりが喋っていた中、少しばかりの補足を黒髪の男がした。
――神って、さすがに飛躍しすぎじゃん。
「それで、事の次第には興味がないのかな?
開口一番はそれだと思うけどね。」
「…どうだっていいよ。」
「うんー、さすがに興味を持ってほしいところかな。
君はどういうわけか、小屋の中で突然倒れた。
医学の心得のある者が調べたところ、栄養失調などは確認されたが、
急に倒れるようなほど危険な状態でなかったそうだよ。
曰く、ただ意識が飛んでいるだけだ、と。」
――意識が飛んだだけ…
突然の引っ掛かりを覚えた。
何か味わったことのない不思議な違和感があったが、その正体は掴めずじまいに終わった。
「それと、君が小屋から出られた理由についてもさっぱりわからない。
まあ、こちらに関しては、
小屋から出られないというのが事実であるかどうか、
私の知り得る範囲ではなかったから、
なんとも言えないのだけどね。」
――気持ち悪い。
さっきの感覚は去ったはずなのに後味がひどく悪かった。
「体調、まだ優れませんか?
あと数日は馬車に揺られている予定ですから、
休んでいてもらって構いませんよ。」
――誰がコイツらの前で!
…もういいか。
信用したわけではない。
そうでないなら何か。
だんだんと黒い沼に引きずり込まれる。
――ただ、ひたすらにひどく疲れた。
そもそも、どうせ死を望んでいるのに警戒するのもばからしい話だ。
はっ そうだよ、な。なんで…
それはまた、だった。
死を望む心に似合わぬ、生存本能ともいえようものが異才の輝きを放つ。
いつも、いつも、まるで生にしがみ付こうとする人間を演出してくる「それ」が嫌いだ。
まるで、リードが外され、自由になった犬だが、所詮、それはケージの中だったから、とでもいうような
受け入れがたいそれから目を逸らそうとして、ふと思った。
――てか、どこに向かっている、ん、だ…
しかし、急激な眠気にその疑問を声にすることは出来ず、意識が途切れた。
◇ ◇ ◇ ◇
「……眠ったようだね。急に警戒心が薄れたというか、消えたように思えたけど。」
「ただ、本当に気が休まっているだけであれば問題ないですけれど、そんな感じではなかったですね。
突然、顔色も悪くなりましたし、少し心配です。」
「王都までの辛抱だ。」
「それはそうと、ご報告です。やはり一人足りなかったとのことです。」
――そうか。
一つの証拠も残さない、なんて完全犯罪のようなことまではできなかったようだ。
これすなわち、
目覚めた村長ら数人の様子についても少年を小屋に縛り付けたことについても
その「空白」のせい。
…随分と魔法が得意なようだね?
最近の国民は皆、この地で神を愚弄する行いがどれほどのことかを忘れたのだろうか。
その、秘めていた何かが空気に伝わる、ゾワリ、と―――
少年が起きている間だけは、そう思い取り繕っていたものが露わになっていく。
津波のように侵食してくるそれがついに貼り付けの笑みを歪めようというとき、わずかに漏れ出た声。
「――はっ、はは!」
その音は冬の空気より遥かに乾いて、それでもなお深い海の底のように重々しく広がりを見せていた。
「……。
――。……
――。……兄上、消えた人物に関しては王宮に帰り次第、私の方で調査しておきます。」
「.......」
――その企み、次に私の前に現れた時には
すべて暴いてみせよう、神の御名において
こんにちは、一ノ瀬 リマです。
というわけで、第一章スタートとしました~。
執筆活動の方、出来たと思ったところからの修正が多いタイプなので進まないんですよね。
なんとか、投稿しやすい頻度つかむのでそれまで少々お待ちください。
さて、長くなりましたが、第一章も頑張りますので応援よろしくお願いします。
それではまた次回!




