世界一の英雄
「変われ」
有の頭の中で、そう声がした。
「その体を僕に少しだけ貸してくれ」
分かった。
誰に言われているかもわからない、だが不思議と変わらなければいけない気がする。声を疑う気持ちが、一ミリも無い。
そして有は、力を抜く。
♢♢
「っ!?」
死んだはずのドラゴンから、黒い光線が日向達目掛けて高速で発射される。
「なっ!!!!」
だが、その光線は日向達には届かない。
シャキィィン
そう音がすると、死んだはずのドラゴンから発射された光線が、縦に真っ二つに切れる。
「は?」
日向は何が起こったのか理解が追いつかない、他のみんな、誰も分かっていない。
何故なら、光線が切られた場所、そこには、知らない薄い赤髪の少女が立っていたからだ。
「ふふふ、ふふ、あはははは!! 帰ってきた! 僕は、帰ってきた!! ははは!」
知らない少女は、興奮して、飛び跳ね、よほど嬉しいのか笑っている。
「誰?」
なにあの子、さっきまでいなかったよね?
急に現れ光線を斬った謎の少女がはしゃいでいるのを見て、日向は戸惑う。
そして、あることに気がづく、
「てか有は?」
何故か先ほどまで日向の横にいたはずの有がいなくなっている。
まさか! ……いやそれはないよな
日向は一瞬巻き込まれたのかと思うが、日向の真横にいたのでそれはないか、と安心する。
それだと、ほんとにどこに行ったんだ?
日向が困惑していると、それお聞いていた謎の少女が日向の方に来て、
「有くんの心配はしなくて良い、僕が有くんだからな! 身体はだけど」
何言ってんだよ、有はこんな性格じゃないだろ。て言うかは男だし。
「いや、流石にそれは」
性格も、性別も違う少女がいきなり、有だと言っても信じれる訳がない。
日向が、この状況に戸惑っていると、
「マハサーーーー!!」
その時、遠くにいたはずのコートルが、涙を流し、英雄の名を口にしながら謎の少女に、抱きつく。
「久しぶりだね! コルちゃん」
そして、抱きついているコートルの頭を少女が撫でる。
「え? ドユコト?」
この人って泣けたの?
日向はコートルが泣いていることでさらに困惑する。
「ああ、説明をしよう。何故僕が有くんなのかを」
「は、はい」
コートルさんのことは後にしよう。
泣いている、コートルを見て、日向はそう思う。
そして、少女は説明を始める。
「まず、私について話そう。今、私の体は有くんだ、だけど魂は違う。僕は、有くんに体を借りている状態なんだ。そして、この能力、僕のいや、今は有くんのスキル、剣の奥義が進化し、新しくゲットしたスキル、変身だね!」
そう説明する。
いやまあ、それなら筋は通ってるけど。
体を借りているのも、スキルと言われれば納得はする。
「じゃあ、あなたはもしかして、マサハ?」
コートルの反応や、少女を読んでいた名前からして日向は心当たりがある。
「そう、私こそが世界一の英雄のマサハである!」
自信満々に少女が名乗る。
まじでそうなのかよ。
日向は驚く。当然疑いもあったが、コートルの反応的に、嘘ではないと判断する。
「有とは交代できるの?」
体を借りていると言うなら、当然だが、一応聞いてみる。
「もちろんだよ、優先度どは有くんの方が高いから、有くんが変わりたいと思えば、変われる。ぼくから有くんに変わる場合、僕でも有くんに変わることはできる」
なるほど。
それを聞きひとまず日向は安心する。
「あ、じゃあ変わって見ようか?」
マサハが不意にそう言う。
「いや流石に今は……」
コートルがマサハに抱きついて泣いているのに、今変わるとコートルも有も可哀想だと日向は思い、止めようとするが、もう遅かった。
「なんで、なんで今なんだよ!」
ずっと気を遣って出てきていなかった有が不意に変わられて、文句を言う。
だが、有の第一声、そこで違和感が生まれる。
「っーーーー!?」
自分がどう言う状態か気づいた有が顔を真っ赤に染め、声にならない悲鳴を出す。
「なんで、なんで……戻ってないんだよ!!」
有はマサハの姿から、戻っていなかった。
「有なの? まじで?」
日向はいつもと違う親友の姿に驚く。
「戻るんだよなこれ!」
有は誰かに聞く感じで言う。少しすると落ち着く。
そして、
「1日はこの状態みたい」
安心はしたが、1日と聞いて少し落ち込んで有が言う。
今の感じ、有はマサハとの会話は出来るのか。
「ううああああ!?」
すると不意に、コートルが変な声で叫ぶ。
今、マサハは有と交代していると気づいたらしい顔を赤らめマハサの姿をした有から離れる。
「なんでも、なんでもないんじゃ! 今のは忘れてくれ」
いや忘れれる訳がないだろ。
今だに、大粒の涙を流しているコートルを見て日向は思う。
「いや、多分無理ですよ。あとさっきから咲がずっと動画撮ってるし」
「え?」
日向の言葉を聞き咲の方をコートルが見る。
「コートルさん! 可愛かったですよ!」
咲が、コートルに親指を立てる。
「咲!? 何しとるんじゃ! 消して! 消してくれ! あと撮らないでくれ!」
コートルは今も泣いているコートルのことを撮っている咲の方を向き、必死に懇願する。
だが、咲が消してくれるはずはなく、
「それは無理な話ですよ」
ニヤニヤと笑いながら咲はコートルに言う。
「日向の気持ちが分かってしまうとは……」
コートルは諦め、そう言う。
色々起きすぎて、意味がわからないので、とりあえず日向達は、コートルの家に帰ることにした。
「有、服も変わるんだな」
帰ろうとしていた時日向は気がつく。
有は変身したことにより、服が変わっていた。
「ほんとだ」
今有は剣士の服を着ている。
元々剣士の服を着ていたので、大きく変わったことといえばサイズが小さくなったぐらいだが。
「それとマサハって意外と小さかったんだな」
日向はマハサを170センチくらいあると思っていたが、今有は、日向より少し高いくらいなので150センチくらいだ。
「あー、けどそれは俺が元のマナハより弱いのが原因らしい。強くなると、体も、元に近づくとか言ってるよ」
少し置いて、マハサの声を聞いた有が答える。
「そうゆうことか」
自分がどれくらい強いかが分かりやすいな。
それを聞き日向は納得する。
そして、帰ろうと歩き始めようとすると、
「うわ!? コートルさん?」
有に何か聞いて欲しそうにコートルが触る。
「お、おぶって……くれんかのう」
恥ずかしそうにコートルは言う。
あ、これはそう言うことだな。
有は一瞬で理解した、実はコートルは甘えん坊なのだと。
なので
「あれ? 変わっちゃった」
有はマハサと交代する。
「あー、分かったよ、そうする」
有から事情を聞いたのだろう、は、しゃがむと、
「じゃあコルちゃん帰ろうか」
「……うん」
そして、コートルは、マハサにおぶってもらうと、
「うううう」
ポロポロとまた泣き出す。
そして、今の一連の行動を見ていた日向コートル、マハサ以外の皆は、こう思う。
日向に似てるな、と




