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オーバードーズ  作者: 昭島吾郎
第2章 半グレ組織 Remnant Shade
22/22

第21話 再編

(第2章のあらすじ)

RSに捕らえられ意識を失った恋莉たちは、立川市辺理恵町の喫茶Gehennaで4週間後に目を覚ます。エリックと接触するため住み込みアルバイトをしながら情報収集を続け、やがて辺理恵城へ乗り込む。RSナンバー3の牛浜、そしてエリック本人を次々と撃破した恋莉は、エリックから立川脱出を許可される。東京へ戻る道中、ニコは本名「笑心」を明かし、恋莉の仲間となった。

──────────────────────────────────────


12月20日、午前7時。


東京の朝は、相変わらず騒がしかった。


立川を出て以来、久しぶりに見る歌舞伎町の景色は、どこか別の街のように感じられた。いや、街は何も変わっていない。変わったのは、俺の方だろう。


ニコ・シンキバ「……やっぱり昼間でも人多いね。」


中神 恋莉「慣れれば普通だ。」


バスから降りて以来、ニコ・シンキバはずっと周囲を観察し続けている。辺理恵町の静かな石畳に慣れた目には、この街の騒がしさはまだ落ち着かないのかもしれない。慶悟たちとは現地で合流する手筈だが、まだ連絡はない。


病院まであと数分というところで、スマートフォンが震えた。


沢城 仁「恋莉か。今どこにいる。」


中神 恋莉「歌舞伎町だ。これから病院に——」


沢城 仁「悪いが、先にこちらへ来てくれ。話がある。場所を送る。」


有無を言わさない口調だった。沢城さんがこういう言い方をする時は、大抵急を要する話だ。


中神 恋莉「……わかった。」


電話を切ると、すぐに位置情報が届いた。新宿区内、歌舞伎町から少し離れた場所にある雑居ビルだ。


ニコ・シンキバ「病院は後回し?」


中神 恋莉「後でいい。先に寄るところができた……」


しかし何か嫌な予感がしてきた。一考してから、


中神 恋莉「ニコ、すまないが1人だけで病院に行ってもらえるか?」


ニコ・シンキバ「……病院? あたしが?」


中神 恋莉「俺の妹が入院している。顔を見てきてやりたいんだが、先に本部に寄らないといけない。場所はこれだ。」


そう言って、恋莉はスマートフォンに住所を打ち込んでニコに渡した。


ニコ・シンキバ「うん、わかった。」


中神 恋莉「……ただ様子を見てきてくれるだけでいい。」


ニコ・シンキバは住所を自分のスマートフォンに控え、静かに頷いた。


ニコ・シンキバ「じゃあね〜。」


中神 恋莉「頼む。何かあればすぐ連絡を。」


───


指定された雑居ビルの4階。エレベーターを降りると、廊下の奥に明かりが灯っている部屋があった。ドアをノックすると、すぐに開いた。


沢城 仁「よく来た。入れ。」


久しぶりに見る沢城さんの顔は、相変わらず涼しげだった。細身の体躯に、シンプルなジャケット。飄々とした雰囲気は変わっていない。


部屋の中には、もう2人いた。


馬連田 紫流「お久しぶりです、中神さん。」


窓際に立っていたのは馬連田 紫流だ。短く整えられた黒髪、表情の動きが少ない。相変わらずだ。


そして、もう1人。ソファに腰を下ろし、こちらを静かに見ている男。


沢城 仁「紹介しよう。桜井 剛だ。俺の古い知り合いで、警視庁公安部外事二課課長だ。」


桜井 剛「桜井だ。よろしく。」


短い挨拶だった。細身で、沢城さんと同じくどこかクールな雰囲気を纏っている。しかし、その目には鋭さがある。


中神 恋莉「中神 恋莉だ。よろしく。」


沢城 仁「座れ。」


全員が席に着くと、沢城さんが口を開いた。


沢城 仁「単刀直入に言う。今の青梅連合は、かなりまずい状況だ。」


中神 恋莉「焼き討ちの後処理か?」


沢城 仁「それだけじゃない。焼き討ちを機に、黒澤派が一気に幅を利かせた。舞津さんが不在の今、組織内で声が大きいのは黒澤だ。穏健派の千石さんや西武さんは、完全に押さえ込まれている。」


中神 恋莉「……そうか。」


馬連田 紫流「加えて、蛇竜との抗争が激化しています。焼き討ち以降、蛇竜側の動きが露骨に活発化していて、青梅連合の末端組織がいくつか壊滅しています。」


桜井 剛「蛇竜は今、東京を完全に制圧するつもりだろうな。青梅連合が内側から崩れかけているのを、好機と見ているんだ。」


中神 恋莉「舞津さんは?」


沢城 仁「……俺にも連絡がない。」


短い沈黙が落ちた。


沢城 仁「蛇竜に撤退勧告をしに行ったという話は聞いているが、それ以降は何もだ。生死すら確認できていない。」


中神 恋莉「そうか。」


部屋の空気が、少しだけ重くなる。


沢城 仁「だから、今動ける人間が動くしかない。」


桜井 剛「具体的には、黒澤の動向を把握することが先決だ。あいつが組織の中でどう動いているか、何を企んでいるか。それが分からない限り、手が打てない。」


沢城 仁「というわけで、恋莉。黒澤の追跡を頼みたい。」


中神 恋莉「……俺に、か。」


沢城 仁「お前が適任だ。黒澤とは一度直接やり合っている。向こうもお前のことを知っている。それに——」


沢城さんが少し間を置いてから、珍しく口元を緩めた。


沢城 仁「料理勝負で勝ったんだろう?随分と派手なやり方で。」


中神 恋莉「……良太から聞いたのか。」


桜井 剛「俺も聞いた。ホームレスを大量動員したそうじゃないか。」


馬連田 紫流「私も報告書で読みました。」


中神 恋莉「……。」


微妙な雰囲気になったが、


中神 恋莉「わかった。受けよう。」


沢城 仁「よし。馬連田は情報収集で支援する。桜井は——」


桜井 剛「俺は現場に出る。」


沢城さんが頷いた。


沢城 仁「以上だ。ただし黒澤の足取りについては、やつは居処を変えるから掴めていない。やつに近い部下から探るしかないだろうな。馬連田がすでにある程度掴んでいる。詳細は後で共有しろ。」


馬連田 紫流「了解です。」


立ち上がりながら、恋莉はふと思った。病院はまた後回しになった。


中神 恋莉「……愛莉、すまない。もう少しだけ待っていてくれ。」


その言葉は、誰にも届かない独り言だった。


スマートフォンを見ると、ニコ・シンキバからのメッセージが入っていた。


「病院、着いたよ〜。近くの庭園散策してるね。」


それだけだった。恋莉は短く返信した。


「わかった。」

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