第七章 終着駅発! おもいで紀行
次の駅は「富永」。終着駅だ。
緩やかなカーブを曲がった後、すぐにホームが見えた。
「車掌さん、ここは駅間がすごく短いですね。」
「富永を過ぎると、北九州石炭礦業の富永坑の手前まで行きますからね。そこに貨物の駅があって、転回して、また富永に戻ってくるんですよ。あと、まあ、いろいろな事情があって、駅間が短いわけです。」
「へえ~~。」
「お客さん、富永に何しに来たんです?」
とっさに私は考えた。
「あ、あ、父の家が吉牟田にあって、そこに行くんです。」
「吉牟田は猿が出るから、気を付けた方がいいですよ。」
「そうなんですか。昔は出なかったのに。」
「団地を作るために炭鉱周辺の山を切り開いたからですよ。」
今にもこういうことは(悪い意味で)つながってしまうんだな、私はそう思った。
「まもなぁく 富永ぁ 富永ぁ 終点ですぅ
この電車はぁ 富永をでますとぉ 転回しぃ 杉本いきとぉ なりますぅ
本日もぉ 国鉄ぅ 有山線をぉ ご利用いただきぃ 有難うございましたぁ」
キキキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
列車が止まった。私は軽い荷を持ち、客車から出た。駅は木造、いかにも国鉄らしい。
久しぶりに私たちが昔住んでいたアパートへ行ってみよう。今は住んでいないから大丈夫だろう。
富永駅を出てすぐ右折、しばらく歩くと二股に道が分かれる。
その左側に足を進め、しばらくすると吉牟田だ。ここらへんは2019年の世界は過疎化してしまって、数人しか住んでいないが、今このときはまだまだ人が住んでいる。
「ここだ。」
アパートについた。「吉牟田マルトミ・ハイツ」とかいている。
201号室にいた。いまは空室らしい。
あ、大家さんだ。洗濯物をなおしている。
声をかけてもわからないだろうから、あきらめた。
駅へ戻った。ここから中村駅へだったら歩いて帰れそうだから、帰ろう。
未舗装の道を線路沿いに歩き、数分。あっという間に中村駅に着いた。丸寺の店からは笑い声が聞こえる。普通の商店だから、お茶でも買おう。少し中も見たいしな。
「ごめんください。お茶一つ買いたいんですが。」
奥から曽祖父が出てきた。
「お茶一つですね。50円。」
「はい、50円。」
「まいどあり。」
少ししか話せなかったがいい思い出だろう。
さあ、中村駅で次来る列車を待とう。




