第八章 帰路(いえじ)
キキーーーーーーーーーーッ!!!!
「中村ぁ 中村ぁ」
駅に列車が着いた。サボには『富永←→有山←→杉本 TOMINAGA ARIYAMA SUGIMOTO FOR SUGIMOTO』と書かれている。行きとは逆だ。
「あ、お客さん、また会いましたね!」
このまえの車掌が乗っている。
「この列車は、お客さんがさっき乗った客車と同じですよ。奇遇ですねェ。」
「あ、そうですね。杉本まで乗ります。」
「360円です。」
「はい、ちょうど。」
客車に揺られながら、私は思った。
(この旅も終わりか。)
駅を何度かやり過ごしながら、とうとう杉本につきそうだ。
「杉本ぉ 杉本ぉ 終点ですぅ」
キキキキキーーーーーーッッッ!!!!!!!!!
杉本駅へ着いた。私は降りた。これで1983年は終わりか。
駅舎を出る。木々のトンネルの先には、まぶしい未来、現実の世界が待っている。足を進めるにつれて、光のおかげでまぶしくて前が見えない。
私は光に包まれた。まぶしいので目を閉じたが、目を閉じても赤い光が目を傷めた。
「あ、ここは・・・・・」
振り返ると、大きな森が堂々と構えていた。
杉本駅はまた、森と化していた。
「楽しかったなあ」
また来よう、そう思った。
私は、最寄駅へ足を進めた。
この思い出は忘れない。神戸へ帰っても。こんどは富永駅から『タイムスリップ』してみようかな。
「嗚呼、一九八三年よ。万歳ーーーー!」
「まもなくぅ 新神戸ぇ 新神戸ぇ 新神戸ですぅ」
ふと聞こえた。あの車掌の声だ。私にはそう聞こえた。
「あっ!」
車掌か?いや、あの車掌のような男が車両にやってきた。でも、80歳くらいの老年男性だ。そう思ったとき、私のところに・・・
「すみません、違ったらすみませんが、どこかで会ったことありませんか?」
あ、乗った時と同じ服装だ。
ちょっと正装をしようとして、パナマ帽を被り、灰色の背広の中にはベストとネクタイ。同じく灰色のスラックス。
「あ、どうでしょう・・・ あった、かもしれませんね・・・」
「F県のK郡の有山線で、たしか1980年くらいの夏に。」
ギクッ・・・
「あ、わたし、もう降りなければなりませんので・・・」
「あ、車掌やってました。私は。」
足が止まった。
「じゃあ一言、あなたに伝えたいことがあります。筑前煮弁当、あの味は忘れません。では。」
(そういえば、硬貨。あれ平成のやつ使っちゃたのに、なんで通用したのかなぁ。)
転勤で神戸に来て約3年。神戸で単身赴任中の私。次の転勤先は福岡がいいな。




