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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
最終章 君と刻む永劫/Nを継ぐ者
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6-6

「おやおや、クトゥルフではダメだったか……まあ、最初からそこまで期待はしていなかったがね」


 唐突に、それこそ今までずっとそこに居たかのような自然体で、クトゥルフの砕けた核を踏みつけながら、ディマイズ・ドラグーンが現れた。

 その肩の上に平然と立ち、冷ややかな目でクトゥルフだった残骸を見下ろしながら、ナイアルラトホテップが嘲笑う。


『ナイアルラトホテップッ!』


 俺の声に、ナイアルラトホテップは頭を上げこちらを向く。その顔には、何の感情も現れてはいない、ただひたすらに薄っぺらな笑顔が貼り付いていた。


「ははは、実に良くやったね、タツヤ。やはりクトゥルフでは、合体した君達の相手として少々不足だったようだ」


 首を傾け、戯けたような仕草で頷くナイアルラトホテップ。その顔には、クトゥルフを討たれた事への焦りは見られない。


『何を言うっ! お前が復活させたクトゥルフは、この通り俺達が倒した……お前の邪悪な計画もここまでだっ!』


「ん? クトゥルフの復活が私の目的、か。ふふふ……ハハハハハッ!」


 これ以上可笑しさを堪え切れない、そう言いたげにナイアルラトホテップが笑う。


「よく覚えておくといい。あの蛙魚供と違って、私にとってはクトゥルフの復活なぞ、只の一要素に過ぎないのさ」


 ディマイズの肩の上で、踊るようにクルクルと回りながら、ナイアルラトホテップは両腕を空に伸ばす。

 その手をゆっくりと降ろし、俺へと向ける。その姿はまるで俺を抱きしめようと両手を伸ばしているようだった。


「とはいえ、この悲喜劇舞台もそろそろフィナーレだ。人の希望、破壊と創造のドラグーンよ……今度は私と戦ってもらおうか」


 俺へと伸ばした腕を降ろし、ナイアルラトホテップが黒衣の中から何かを取り出した。


『……あれはっ!』


「ど、どうしたの、お兄ちゃんっ!?」


 ナイアルラトホテップが取り出した二つの物体、金属の箱に収められた黒い結晶と、歪んだ白色の結晶を見て、俺の体に戦慄が走る。


『……あれが本当に俺の知っている物なら……イオス、マシロ、あれは二人の結晶の……オリジナルだ』


「その通り。そして、今こそ見せてあげよう。君達紛い物では到達する事すら叶わない、神の領域をっ!」


 二つの結晶が黒と白の光を放つ。


「マスター、クトゥルフの体を構成していた魔素がっ!」


 イスミルが驚きの声をあげる。結晶の光が強まると、クトゥルフの残骸が、それに呼応するように次々と光の粒子へと変わり消えていった。おそらく、ナイアルラトホテップの持つ結晶に吸収されているのだろう。


『ああ、魔素の見えない俺にもわかる! これ以上好きにさせちゃダメだ。奴が動くより先に仕掛けるぞっ!』


 餓龍剣を再び手に持ち替え、一気にナイアルラトホテップへと迫る。奴に向かって振り下した剣は、しかしディマイズの片手に悠々と受け止められた。


『くっ! ディマイズにこの餓龍剣が止められたっ!?』


 目の前に居るのは、どう見てもダゴンを喰らう前の、あのディマイズと同型機だ。

 それなのに、奴に掴まれた餓龍剣はピクリとも動かない。コスモ・ドラグーンと合体した俺が、完全に力負けしている。


「ふふん、だから言ったろう? これこそが神の力というものだよっ!」


 ディマイズがその手を軽く振るう。

 ただ、それだけの動作で、俺達は餓龍剣ごと持ち上げられ、有り得ない速度で投げ飛ばされた。


『くぅっ!』


 空中で何とか踏み止まり、地面との激突を避ける。その間に、クトゥルフの残骸は核を残し全て吸収されたようだ。

 光る二つの結晶を携えたまま、ナイアルラトホテップはディマイズの中に、ズブズブと沈み込むように入っていく。

 ナイアルラトホテップが完全に入り込むと、ディマイズが大きく震えだした。

 瞳が赤く光り、混沌卿の時と同じ様に、全身の先端を染める真紅が漆黒へと変わっていく。

 しかし、変化はそれだけで収まらない。

 ディマイズの肉が次々と膨張し始め、甲殻を押しのけ体積を増していく。

 尾も太く長く伸び地に着くと、まるで三本目の脚のように、増大していくその身を支えた。


『Houuuuuuuu!!』


 腹部だった場所に巨大な穴……いや、口が開き空に向かって奇妙な吠え声をあげる。

 決して轟音ではないその吠え声に、俺の、ドラグーンの全身がビリビリと震えた。

 腕や背の翼も大きく伸び、唯一大きく変わらない頭部には、以前よりも赤々と三眼が燃えている。


『さあ……ここが時を越えた君の冒険の終着点だ、タツヤ。せいぜい抗って抗って抗い抜いてみせろ』

 

 圧倒的な存在感と共に、深く響く声でそう言うと、ナイアルラトホテップはその巨大な脚を振り上げた。

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