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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第五章 ブエラリカを覆う影/終焉の龍神機現る
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5-15


『マシロッ! 助かるが、気をつけろ! 相手はどちらも手強いぞっ!!』


『大丈夫ですっ! 私だって伊達にドラグーンの操手じゃありません! それに……お兄ちゃんを護る為なら、私はいくらでも強くなれますっ!』


 グッと、コスモが構える。俺はそんなコスモに並び立つと、同じように構えた。


『そうだな……俺もお前達を護る為なら、どこまでだって強くなってやる! これで最強無敵のドラグーンが二体……もう俺達が負ける要素は無いっ!!』


『ふははは、下らない精神論ですねっ!!』


 三叉槍を構えダゴンが突撃してくる。だが、その巨体の突撃は、コスモの背後から出現した、極太の触手三本に止められた。


『何とっ! 我がダゴンの攻撃を真っ向から止めた!?』


『よしっ……お兄ちゃん、こっちは私向きの相手みたいだし任せてっ!』


 まるで力比べをするかのように、ググっとダゴンと押し合いながら、マシロが叫ぶ。


『わかった!』


 マシロならば問題ないはずだ。俺はマシロへそう応え、ディマイズと改めて向き合う。


『ふふっ、図らずも俺の望み通りとなったか。俺と貴様、今度こそ一対一で雌雄を決する時っ! 行くぞ、イオス・ドラグーンッ!!』


 地上を飛行するように、飛び込んでくるディマイズ。途中でクルリと体勢を反転し、飛び蹴りの姿勢を取る。

 高速かつ水平に飛ぶ姿は、まさに一本の巨大な矢だ。


『フンッ!』


 超高速で迫るディマイズの脚を、掌で斜め下に逸らし受け流す。


『チッ!』


『ハァッッ!!』


 着地したディマイズの頭部に、振り上げた右脚を勢い良く落とす。

 その攻撃を身を捻り躱すディマイズ。更に捻りを利用した尾を鞭のようにしならせ打ち込んできた。


『甘いっ!』


 俺もディマイズ同様に身を捻り、ディマイズの尾に俺の尾をぶつけ合う。

 尾と尾の衝突に両者ぐらつくが、それを事前に予想してから、ぶつけた俺の方が体勢を整えるのは早かった。

 ディマイズの胴に鋭く蹴撃を放つ。俺の脚はディマイズの腹部を打ち抜く。


『グハァッ!』


『チャンスッ!』


 身体をくの字に曲げたディマイズの上空に跳躍し、餓龍剣を振り上げた。

 それを察知した混沌卿は、頭上でディマイズの腕をクロスし、甲殻を変形させて防御体勢を取る。


『餓龍剣をナメるなぁっ!!』


 ディマイズの防御を無視して、頭上の腕にそのまま餓龍剣を振り下ろす。


『がぁぁぁぁっっ!!』


 戦いの間、ずっと周囲の魔素を吸収し続けた餓龍剣は、輝く刀身へと変化し、ディマイズの両腕を肘から先でスッパリと切断し、勢い止まらず胴も斬り裂いた。


『トドメだっ!』


 堪らず膝をついたディマイズに、再び餓龍剣を振り上げる。


『くっくっく……やはり貴様は強いな』


 小刻みに肩を震わせ、ディマイズが笑う。


『だからこそっ、俺の全てをかけて貴様を打倒する意味があるっ!!』


 ダッと、勢い良くディマイズが飛び跳ね立つ。その全身に変化が現れた。

 ディマイズの甲殻、その先端を染めていた真紅が漆黒へと変色する。肩の甲殻が大きく盛り上がり、そこに眼のような紋様が浮き出る。

 チラリとディマイズがコスモとダゴンの姿に目を向けた。どうやら向こうも、マシロが押しているようだ。


『なっ!?』


 俺の意識が一瞬マシロに向いたのを察したのか、ディマイズが駆け出し急加速する。

 だが、向かう先は俺にでは無い。コスモと戦っているダゴンに向かってだ。


『むっ、混沌卿、どうされまし……ぐぅふっ……』


 ディマイズの接近に気付いたリグナンが声をかけるが、ディマイズはスピードを緩めることなく接近し……その脚でダゴンの胸を深々と刺し貫いた。


『こ……混沌卿……何故……』


『ふはははは、悪いな! リグナン・マーシュ、お前御自慢の海王機、いただくぞっ!!』


 そのまま、ディマイズの黒い体が脚を残しドロリと崩れ、泡立つ粘着質な巨大スライム状の物体に変わると、刺さった脚を使って持ち上がりダゴンの全身を包み込む。


『ぐぁぁぁぁぁ!』


 断末魔の絶叫を上げ、スライムの中でダゴンが悶える。しかし、すぐにそれも止まった。

 ボコボコとスライムの表面が変形し硬化していく。瞬く間に、そこには一体の巨大な魔装甲冑が立っていた。

 色が漆黒な事を除けば、多くの部分はダゴンの形状を継承していた。しかし、頭部を始め身体の各所は禍々しく捻れ伸び、更に巨大な皮膜翼と龍の尾が生えていた。


『お兄ちゃん……あれって……』


 飛翔したコスモが隣に降り立ち、マシロが不安気に呟く。


『ああ……合体……なのか?』


『いいえ、マスター、マシロ、それは違います。混沌卿はディマイズにダゴンを喰わせたのです。ドラグーンの同化能力を最大限に発動して!』


『ははは、正解だ! これで俺のディマイズは更に力を増し、最早ドラグーンを超えた! ディマイズ・ハイドラグーンとでも名乗っておこうかっ!!』


『しかしっ、ドラグーンの同化能力は、操手にすら及ぶはず! 貴様だってタダでは……』


『言ったはずだ。俺の全てをかける、と』


 イスミルの言葉に、ディマイズが首を振る。


『もちろん、俺の肉は全て喰われたさ。今の俺はディマイズそのものだ……もっとも、ディマイズでも俺の意識までは喰いきれなかったようだがなっ!』


『なんて奴だ……』


『ふんっ、貴様と同じ顔の体なぞ元より未練は無い。……さあ、仕切り直しだ、イオス・ドラグーン!!』


 翼を広げ、ディマイズが大きく吠えた。


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