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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第五章 ブエラリカを覆う影/終焉の龍神機現る
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5-14

 それは、巨大な魔装甲冑だった。単純に大きさだけなら、あの虎楼閣に匹敵するだろう。

 見た目は鱗甲冑に似て、全身に鱗状の甲殻があり、頭部は巨大な古代の肉食甲冑魚のようだ。

 右手には、それぞれが捻れ、鋭利に伸びた三本の刃を備えた三叉槍も所持している。


『ふふふ、どうです? 我が最高の魔装甲冑、海王機ダゴンの勇姿は』


 両腕を広げ余裕を見せつけるダゴン。その巨体をディマイズが押しのけた。


『リグナン、お前はコスモをやれ! こいつは俺の獲物だ!』


『いいえ、混沌卿。まず打倒すべきは、最大の障害である、このイオス・ドラグーンです。そうやって、あまりワガママが過ぎますと、教主様に仕置きしてもらいますよ』


『くっ……ちっ! 仕方ない、遊びはお終いだ、イオス・ドラグーン!!』


 舌打ちし、ディマイズが踏み込んでくる。振り上げられる右上段蹴りを屈んで躱す。

 しかし、そこを狙ったように、今度はダゴンが脇から三叉槍を突き立ててきた。

 咄嗟に身体を捻りながら、バク転で躱す。俺の脇すれすれを、三叉槍が風切り音をたてながら通過した。


『くっ、イスミルッ!』


「いつでもいけます、マスター!」


『よしっ! 《メテオライトスプラッシュ》!!』


 ディマイズとダゴンに向けた両手の先から、召喚した隕石群が光の矢となって放たれる。


『ぬぅぅっ! この程度では私達を倒せませんよっ!』


『小賢しいぞっ! イオス・ドラグーンッ!!』


 先の戦いで、白騎士達の装甲を易々と貫き穴だらけにした、このメテオライトスプラッシュも、ダゴンとディマイズの堅牢な甲殻の前では効果が薄いようだ。

 しかし、たとえ貫通出来なくとも、今放っているのは、腐っても超超高速の隕石だ。

 十分な足止めにはなっている証拠に、二体とも腕でガードしたまま動けない。


『イスミル、行くぞっ!』


『はいっ!』


 イスミルの返事と共に、地中から巨大化した黒水龍が現れ、サイズは異なるが、あの時と同じように、構えた俺の右腕にグルグルと巻き付いた。


『喰らえっ! ドラグ・インパクトッ!!』


『がぁっ!』


 メテオライトで動けないダゴンの腹部に、俺の拳が深々と刺さる。その瞬間、解き放たれた黒水龍がダゴンの腹を大きく食い破って突き抜けた。


『よしっ! 次はディマイズ、お前だっ!』


『ふんっ、今のでリグナンが本当に終わったと?』


『何っ!? くっ!』


 混沌卿の言葉に慌てて振り向くと、裂けた腹部をそのままに、ダゴンが俺へ三叉槍を突き立ててきた。

 間一髪、横ステップで回避するも、槍の動きが突きから横薙ぎへ瞬時に変化し、俺の体を大きく吹き飛ばす。

 

「うっ、……油断しては駄目です、マスター! あのダゴンとかいう魔装甲冑、我等に匹敵する力を持っていますっ!」


「すまない、イスミル! ……どうやら、そうらしいな」


 既にグニグニと塞がり始めた、ダゴンの腹部の傷を見て唸る。冗談のような再生能力を持つコスモ・ドラグーンには遠く及ばないが、少なくとも並みの魔装甲冑が見せる回復速度では無かった。


『やれやれ、困りましたな、混沌卿。せっっかくの好機でしたのに、敵にヒントをやるなんて……』


 やんわりと責めるようなリグナンの言葉に、混沌卿は鼻を鳴らし答える。


『ふんっ、あれで仕留められないお前が間抜けなのさ』


『まったく……ふう、仕方ないお人ですね。では、続きといきますかな』


 再び二体同時に迫るディマイズとダゴン。俺は、餓龍剣を構え意識を集中させると、思考を最高速へと加速させ迎え撃つ。


『シィィッ!!』


 打ち込まれるディマイズの右拳撃を、餓龍剣の柄で叩き逸らす。同時にダゴンから突き出された三叉槍は、振り上げた脚先で絡め、踏み付けて抑えつけた。


『ハァァッッ!!』


 下から擦り上げるように、餓狼剣で体勢の崩れたディマイズの首を狙う。

 しかし、刃は背後に大きく体を逸らしたディマイズによって躱され、わずかに甲殻の一部を削るに留まった。


ーーガゴンッ!ーー


 その時、頭部に強い衝撃が走る。

 ダゴンによって蹴り上げられたのだと理解するより前に、追撃するディマイズの右上段蹴りを腕でガードした。


『くっっ!!』


 ガード越しに伝わる衝撃に耐えながら、ズザザと数歩分横に滑る。

 俺はそのまま、後ろに飛び退くと、一旦ディマイズとダゴンから距離を取った。


「……まずいな……やはり、あのレベルの相手を二体同時というのは分が悪い……」


「確かにそうですね。でも、数の不利が無ければどうでしょうか、マスター」


「えっ……?」


 その時、ヒラヒラと白い物が舞い落ちる。見れば、それは大きな白い羽だった。

 そして、その羽の持ち主が、上空より降下し着地すると、俺を庇うようにその腕を大きく広げる。


『お兄ちゃん、お待たせしましたっ! お兄ちゃんがこいつ達を抑えてくれた間に、鱗甲冑はもうだいぶやっつけましたよ! ここからは、私もお兄ちゃんと一緒に戦いますっ!!』

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