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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第五章 ブエラリカを覆う影/終焉の龍神機現る
77/95

5-10


「お兄ちゃんっ!!」


「おっと……」


 再び、イオスとリミルに戻った二人と家に帰ると、ずっと待っていたのだろう、門扉の影からマシロが飛び出し抱きついてきた。


「ただいま、マシロ。約束通り、ちゃんと戻ったぞ」


「はい! 姉さん達もおかえりなさい!」


 目に涙を滲ませ、マシロはそれでも笑顔を見せる。


「心配かけちゃったね、マシロちゃん」


「うむ、マスターのお陰で我等は無事だ」


「さて、とりあえず皆家に入ろうか。ヤルバ爺やリズさんも心配しているだろうし……マシロも体を暖めた方がいい」


 外で待っていたせいか、俺に抱きつくマシロの体はだいぶ冷えていた。まだそこまで冷え込む時期では無いが、体の為にも早く暖を取った方がいいだろう。


「いいえ、大丈夫です。こうしていると……お兄ちゃんの温もりが伝わってきて……」


 そう言いながら、マシロは俺の手を取ると、自分の頬にあて目を閉じ、ほぅと息を漏らす。


「うむ、そこまでだ、マシロ。リミル、やれ!」


「はい、イオス様。さぁ、マシロちゃん、お家に入りましょうね」


「えっ、な、なんでリミル姉さんまで? ちょっ、ちょっとま……」


 俺の肩に座るイオスから指示が飛ぶと、笑顔のリミルがグイグイとマシロの背中を家に向かって押しだす。


「マシロちゃん、あんまり甘えちゃ駄目ですよ? タツヤさんは、疲れているんですからね」


「そ、それなら大丈夫! 疲れた男の人を癒すのは、彼女の役目ですから!」


 リミルからヒラリと逃れると、マシロはグイっと胸を張って、そう言った。


「むっ、誰がマスターの彼女だと……?」


「当然、私です、イオス姉さん。既に二人は、熱いく……口づけを交わした仲なんですから!」


「ほぅ……我等が敵の手に落ちている間に、随分と楽しい事をしていたんだな、マスター」


「タツヤさん……」


 二人の冷たい視線が、俺へと注がれる。


「いや……してたというか……」


 しどろもどろに答えると、何故だか変な汗が流れる。そんな俺を見つめながら、イオスとリミルは笑いだした。


「ははは、わかっているさ、マスター。どうせ、マスターの隙をついて、一方的にしたのだろう? なぁ、マシロよ」


「うっ、ま、まあ、そうですけど……」


「助けに来てくれた時のタツヤさんを見れば、それくらいわかりますもんね、イオス様。さぁ、マシロちゃん、行きましょうね」


「う〜、わかりましたよ……お兄ちゃん、今度はちゃんとしましょうね!」


 こちらにウィンクすると、マシロは再びリミルに背中を押され、家の中へ入っていった。

 それを見送りながら、イオスがため息を漏らす。


「やれやれ……マシロめ、心配をかけたようだし、多少目を瞑ってはみたが、すぐ調子にのりおって……だいたいキ、キスくらい、我とマスターだって既に……」


「えっ? 俺とイオスがキス?」


 全く身に覚えの無いイオスの発言に、思わず聞き返す。

 何故だかイオスもおや? と首を傾げた。


「むっ? 我は今何故マスターとキスした事があると思ったのだ? うぅ……す、すまない、マスター……今のは忘れてくれ」


 黒い今のイオスではわからないが、おそらく恥ずかしくて赤面しているのだろう。両手で顔を覆いイオスが俯く。


「そうか? でも、それにしても……」


「うん? 何を笑っているのだ、マスター?」


 小刻みに揺れる肩に、イオスが顔を上げ尋ねる。


「ははは。なに……やっぱり俺達には、重い空気よりも、こうやってバタバタしている方が似合うなと思ってね」


「そうか? ふふん……そうなのかもしれんな」


 笑う俺を見て、イオスもニッと笑う。


「さあ、俺達も家に入ろう。……改めて、お帰り、イオス」


「うむ、ただいまだ、我がマスターよ」


 イオスが俺の耳たぶをムニュッと掴む。

 家の中からは、リミルの無事を知ったヤルバ爺の、歓喜の声が響いていた。



 薄暗がりの部屋の中、テーブルを囲んで影が二つ、ボソボソと会話を続けている。


「そうですか……混沌卿がその様な……それで教主様、彼は今は仕置中か何かですかな?」


 影の一つ、親しい者共からは師父と呼ばれるその男は、蛙のような目をクルリと動かし尋ねる。

 その問いに応えるように、教主と呼ばれたもう一つの影……あのタツヤと混沌卿の戦いに割って入った、もう一人の混沌卿が首を振る。


「いいや、混沌卿はバグを含んだイオス・ドラグーンの能力完全開放という目的を完遂した。それさえ為せば、多少の遊びは許容範囲内だ。そうだな……彼なら今は自主鍛錬中だ」


「自主鍛錬? あの混沌卿がですか!?」


 師父は驚き、また目をクルリと回す。

 師父の知る混沌卿という人物は、およそ努力などという概念からは程遠い人物だ。


「それだけ、ドラグーンと操手タツヤにやられた事が許せなかったのだろうな。まあ、私としては、計画が上手く運べばそれでいいのだがね……それは君も同じだろう?」


「まあ、それはそうですな。では、今後の動きも予定通りという事で、構いませんな?」


「ああ、全ては我等が主、眠れるCの為に……」


 教主が呟くと、師父もまた同じ語句を繰り返した。


「ええ……全ては我等が主、眠れるCの為に……」


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