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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第四章 時空の放浪者/時を越える想い
65/95

4-8


「おい、聞こえているのか、マスター!! シルフィ!!」


「二人共、どうしたんですか!」


 イオスとリミルの叫び声で、ハッと意識が覚醒する。


「イオス?……それにリミルなのか?」


「我は我だ! ……そんな事より、いったい何があった? 一瞬とはいえマスターとシルフィの接続が消え、まるで最初から居なかったかのように存在すらも検知出来なくなったぞ!」


「え?」


 見ると、俺はあの時そのままに、キング・ドラグーンとして立っていた。前方には、右半身を融解させたコスモ・ドラグーンが、やはり直立したまま動く気配が無い。


「……イオス、ハイパーノヴァを撃ってからどれだけ経った? 奴の……コスモ・ドラグーンの攻撃は相殺出来たのか? 周辺に被害は無いか?」


「ああ、無事に相殺出来たし、発生させた黄金風の結界で、周辺に被害は無い。……むしろ、タービュレンスの力が後押しとなった分の余剰エネルギーが、ああしてコスモ・ドラグーンの半身を消し去ったぞ。マスターとシルフィの接続が切れたのは、そのすぐ後だな。存在そのものはすぐに確認出来たが、再接続しても応答が無い。まあ、我とリミルで呼びかけていたら、マスターはすぐに気付いたようだが」


「そうか……」


 という事は、向こうで過ごした時間に対し、こちらではほんの一瞬しか経っていないことになる。


「……んっ……ふぇ? あ、あれ? 僕戻って来たの?」


 その時、驚くシルフィの声が響く。


「戻って来たって……まさか、シルフィも?」


「え? うん! 凄かったんだよっ! タツヤ兄みたいな種族しか居ない場所で、悪い奴等をやっつけてたんだ!」


「なるほど……だいたいわかった。実は俺もそうだったんだ」


 おそらくシルフィも、俺と同じように過去の何処かへ飛ばされ、やはり同じように戻って来たのだろう。


「……さっきから二人共、一体何を言っているんですか?」


 リミルが疑問を口にする。どうやら、飛ばされたのは俺とシルフィだけで、リミルは過去に行っていないようだ。


「あ〜……いや、詳しくは後で話すよ。それよりイオス。奴の……コスモ・ドラグーンの動きが無いけど、何か解るか?」


「むぅ、それがな。あれだけの痛手、奴の力であっても瞬時の回復は難しいはず。なのに回復どころか距離も取らず、あのように立ったまま……あの状態そのものが、我等を釣る餌で、何か罠がある可能性もあるにあるが……どうする、マスター?」


「そうだな……」


「っ! タツヤさん、イオス様、待ってください! 向こうに動きがっ!」


 リミルの指摘通り、コスモ・ドラグーンに変化が現れる。融解を免れた半身の表面が、沸騰した鍋のようにボコボコと泡立ち始めたのだ。


「あれは……一体?」


「むっ、これは……まさかっ!? マスター! 奴の動きに警戒しつつ待機していてくれ!!」


「わ、わかった!」


 表面のボコボコとした、泡状の細いそれが、段々と他の泡と併さり大きな泡へと成長していく。

 やがて、一つの大きな泡となったそれは、コスモ・ドラグーンの胸で、心臓のように膨張と収縮を繰り返す。


ーーバンッーー


 その泡が突然、破裂したように破れ、中から何か塊を飛ばす。塊は地面に落下すると、数度ゴロゴロと転がった後、ムクリと起き上がった。


「何故だ! 何故、我を拒んだ、光龍!! 答えよ、ゼロッ!!」


 塊……コスモ・ドラグーンと一体化した影響か、全身を白く染上げたドミニアスが絶叫する。


「なあ、イオス……あれって……」


「ああ……間違いない、ドミニアスだ! マスター、マシロが遂にやったようだぞ!」


「マシロが!?」


「おそらく、マスターやシルフィ同様に、ドミニアスも先の攻撃時、一時的にドラグーンとの繋がりが切れたのだろう。ドミニアスの意識に呑まれぬよう、潜み耐えていたマシロが、その機を利用し一気に体の支配を奪還したようだ」


「そうか……やったんだな、マシロ!」


「マシロちゃん、頑張ったんですね!」


 絶望視していたマシロの生存と、思わぬ結果に、俺とリミルが喜びの声をあげる。

 その時、再生を始めたコスモ・ドラグーンに向かって、ドミニアスが走りだした。


「ええいっ! 主人を忘れた痴れ者めがっ! 今一度その体、我が意思で塗り替えてやろう!!」


「なっ!? マズイッ!」


 慌ててドミニアスを追う。だが、奴を捕らえようと俺が腕を伸ばすよりも早く、奴に近づいた影が一つ。


「グァッ……!!」


「ダメじゃ無いか、ドミニアス。お前の役目はここまでなのに、何時迄も俺の舞台の上に残っていちゃあ」


 漆黒のローブで全身を覆い隠し、ツルリとした凹凸の無い、やはり漆黒の仮面で顔を隠した、黒い……本当に影法師かと思わせる人物だ。男か女かもわからないそいつは、背後から素手でドミニアスの胸を、肘まで刺し入れ貫き、よく響き渡る声で語る。


「おっと、もう退場したか? 最初からそうしてくれるといいんだがね……さて、と」


 腕を引き抜き、既に絶命したであろうドミニアスを持ち上げ放り捨てると、奴がこちらに向き直る。


「黄衣の王、キング・ドラグーンか……いずれお前達に破滅が訪れるその日まで、俺のためにそうやって踊り続けるといい。それでは、さらばだ」


『ま、待てっ!!』


 吹き抜ける風と共に、一瞬でそいつの姿は消え去る。後にはドミニアスの骸だけがポツンと残っていた。

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