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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第三章 激戦・熱戦・超決戦!/黄衣の王誕生
45/95

3-2

 そうして目的の場所付近にたどり着いたのは、リミルの言う通り三日目の夜明け前だった。

 全軍を一旦待機させ朝日を待っていると、突然俺達の元に使いの兵が来て、ブライアン王よりお呼びがかかる。

 複数のヤグに牽かせた巨大なヤグ車仕立てで移動式の天幕に出向くと、中ではブライアン王を始めとする諸国の王、将軍、そしてゴルディやシルフィが、車座に座り苦い顔や青い顔をして静まっていた。

 王達が座る円の中央には、何やら丸い水晶状の物が浮かんでいて、これは一体何だろうかと思っていると、横からリミルが小声で一定距離の遠方を見られる望遠術式だと教えてくれた。


「タツヤ、来てくれたか」


 ブライアン王が語りかける。その声はやはり重い。


「何か……良くない知らせですか?」


「うむ、先ずはこれを見て欲しい」


 王に促され、望遠術式の水晶を見る。水晶の表面にTVの様に映し出された映像には、あの白騎士達の集団が見える。


「凄い数……」


 リミルが呟くのもわかる。白騎士達はまるで白い波のように平原を占拠していた。その数はざっと二千はくだらないだろう。


「そうだな……白龍の生産速度を見誤ったか。やはり、魔装甲冑の乗っ取り対策を私達にさせる様に仕向けたのは、奴らの時間を稼ぐ索だったかもしれん」


「かもしれん、では済みませんぞ、ブライアン王よ!! こうまで彼我の戦力差が開いては……このままぶつかれば我々の敗北は必至。如何するおつもりかっ!!」


 一人の猿顔の王が苛立ちをブライアンにぶつける。ブライアンも返答に窮し、低く唸った。

 その反応に他の王や将軍達が、非難の声をあげる。先程までの静けさとは打って変わり、天幕内は責任を擦りつけあう、醜い言い合いの場となった。


「静まらんかっっ!! この阿呆共っっ!!」


 突然、喧騒を遮るように鋭い大声が飛ぶ。いつの間に変わったのか、リミルの体に戻ったイオスが再び静まった王達を見下すように睨みつけた。


「一国の主ともあろう者が、揃いも揃って何たる体たらくかっ! 恥を知れ、恥を!!」


「な、な、なんだ! この小娘はっ!! なら、貴様なら今の状況をどうにか出来るとでも言うのか!?」


「ふんっ! 無論、可能だ。我とマスターとリミルが居ればな」


 キーキーとヒステリックに叫ぶ猿王に向かって、イオスは冷たく言い放つ。


「い、一体、どうやって!?」


 震える手で指差し尋ねる猿王を無視し、イオスがこちらに向き直る。


「すまないな、マスター。こんな下らない言い合い、我はもう我慢出来ん」


「えっ? イオス、何がだ?」


 イオスは俺に応えず再び猿王に向かうと、高らかに宣言した。


「一体どうやって? 決まっておる、そこに見える白騎士達を我とマスターのみで盛大に間引いてやるのさっ! 貴様達はせいぜい我等のおこぼれでも狩っているんだな」


「そんな、そんな荒唐無稽な話、信じられるか! あの軍勢を相手に単騎でなぞ不可能だ!!」


「ほう……信じられんか、不可能か……我を一体誰だと思っている! 我こそは伝説に謳われし黒龍! 世界最強の龍神機よっ!!」


 フスンと鼻息荒く胸を張るイオスを見て頭を抱える。ゴルディは隠れて笑っているが、ブライアン王の視線が痛い……。


「こ、黒龍だと!? あの伝説の黒龍だと? ブライアン王、話が違うではないか。我々は死と破壊を司る黒龍と共に居るのか?」


「なんだ、白龍有する帝国だけでなく、我も恐ろしいのか。では、今すぐ自国に帰り大層な玉座にうずくまってガタガタと震えておるがいいっ!」


 激しい口調から一転、一人一人の顔を見ながら、諭すかのようにイオスがゆっくりと語りだす。


「……よいか? 我等は帝国と戦うぞ。例えここに居る王達が全員怖気付いても、だ。我等に続く気概のある者だけ残ればいい」


「一つ、よろしいかな?」


 王達の一人、牛の角を生やした壮年の王が手を挙げる。歴戦の戦士でもあるのか、顔に刀傷のある、王より武人といった姿だ。


「貴殿が真にあの黒龍様だとして……先程の間引きの件、本当に単騎で行くおつもりか?」


「うむ、無論だ。我が体……黒龍には強力な兵装がある。下手に周囲に居られるよりは、それで減った白騎士共を殲滅する役を担ってもらった方が、こちらもやりやすい。なあ、マスター?」


 イオスの問いかけに頷く。確かにその方が、無理に周囲と歩調を合わせるより、余程ドラグーンの力を活かせるだろう。


「……わかりました。我が軍はその案に乗りましょう。ブライアン王も構いませんか?」


「勿論、ミンバの軍もこのまま進軍しよう。だが、その前に……先ずは各国の王に、黒龍様の存在を強力な魔装甲冑だと隠蔽した事、いらぬ混乱を避ける為とは言え、結果的にこのような事態を招いた事を謝罪したい」


 ブライアンは立ち上がると頭を下げる。大国の王のその姿に、周囲に動揺が走った。


「その上でどうか聞いてほしい。今ここで帝国を止めねば、あの白騎士達は更に数を増やし、いずれ雲霞の如く我等の国々に攻め入り蹂躙するだろう。それを防げるのは、ここに居る黒龍様とその操手であるタツヤ、そして何より我等のみである。黒龍様も伝説にある破壊神では無く、こうして会話も出来れば、筋も通ったお人だ。どうか、手を取り合い協力してくれないだろうか?」


 ブライアンの言葉に、一人、また一人と王達が賛同していく。反対派の猿王を含め全ての王達がそうなるまで、さほど時間はかからなかった。


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