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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第三章 激戦・熱戦・超決戦!/黄衣の王誕生
44/95

3-1


 全ての準備が整い、ブエラリカを軍が出立したのは、それから八日後の朝だった。

 集まった魔装甲冑は千に届くかという数に膨れ上がり、当然操手以外の兵や物資も相当量になる。

 いくらブエラリカが大きな都市とはいえ、到底収まりきらず、ブエラリカの外周にはいくつもの他国軍キャンプが出来上がり、只でさえ活気のあるこの都市は連日狂乱じみた熱気に溢れていた。

 そんな中、俺達はともかく全ての魔装甲冑への注入作業を終わらせるべく奔走したが、その甲斐あって何とか今日この日に間に合わせる事が出来た。


「皆、ここミンバが首都ブエラリカへよくぞ集まってくれた。未だかつてここまでの兵力が、ミンバに集まった事は無かった。では、皆は何故集まったのか? そう、それは昨今の聖光龍帝国の横暴極まりない侵略行為を止める為であるっ! 良いかっ! 我等の後ろには兵は居ない。ただ、皆の愛する故郷と家族が居るだけだっ! その全てを守りぬくため、皆の力を私に貸して欲しい!!」


 ブライアン王の拡声された声がブエラリカ中に響く。街中のあちらこちらで一斉に上がる歓声が、混じり合い大きなうねりとなって、ブライアン王に応えた。


「うむっ、皆ありがとうっ! では、私……ミンバの王ブライアンの名において、ここに聖光龍帝国への開戦を宣言するっ! いざ立て戦士達よっ! 今こそ出陣の時なりっ!!!」


 ブライアンの声を合図に、魔装甲冑が、人が、荷車が、一斉に動き出す。

 目指す先は聖光龍帝国王都、俺達も見送りに来ていたリズさんに別れを告げ、イオスのヤグ車に乗り込み出発した。


「い、いよいよ始まるんですね、帝国との戦争が……」


「はじまる、戦争?」


 ヤグ車の座席で身を硬くしているリミルを、マシロが不思議そうに膝上から見上げる。

 そんな姿を見て、リミルの対面に座った俺の肩の上で、イオスは腕を組みながら笑う。


「ふふん、リミル。今からそんな調子では、いざ戦いとなる時に保たんぞ。常に普段と変わらぬ心の柔軟さを意識せよ」


「そ、そうは言ってもですね、イオス様」


「な〜に、心配せずとも皆の事は我等がマスターがちゃんと守ってくれるさ。なあ? マスター」


「おう、リミルもマシロも俺がちゃんと守る! だから、安心してくれ……な?」


「……はい、ありがとうございます、タツヤさん」


「にいちゃ、マシロ、守る、一緒!」


 ふうっと一息吐いて落ち着いたのか、こちらを見ながら微笑むリミル。俺は両手を挙げてムンッと力こぶを作るマシロを、指先で撫でながら笑い返した。


「それで、トーヨ平原まではどれくらいかかるんだ? というより、トーヨ平原ってどこにあるんだ?」


 リミルに尋ねる。両陣営の数や行軍速度、地形を含め考えると、帝国側が迎撃の為に展開しているのは、おそらくここで間違い無いだろう……そう出立前の軍議では出ていたが、実際の場所は俺にはサッパリ分からなかったからな。


「えっと……トーヨ平原は、霊峰ルーディアの西からちょうどミンバと帝国の国境辺りまで広がる大きな平地で、カケナの森にも隣接しているので、私達もミンバに来る途中通ってはいるんですよ。さっきの話の通りなら、だいたい三日程で着くと思います」


「なるほど、意外と早く着くんだな」


『おーい! タツヤ兄ちゃん!!』


 俺とリミルの会話に割って入るように聴き馴染んだ声が聞こえた。ヤグ車の窓を開けると、こちらに並走しながら、タービュレンスが覗き込むように見ている。


「シルフィか! どうしたんだ?!」


『えっとね……」


 その時、シルフィの後方から、タービュレンスの何倍もある影が現れる。ミンバが誇る巨大魔装甲冑。あの一件で漆黒に染まった虎楼閣だ。


「王まで? 一体?」


『いや、俺は親父じゃないさ』


「その声、ゴルディか!? どうして、虎楼閣に?」


『なに、今回は大戦。大将である王が前線で出張っちゃ仕方ないってんで、俺が譲り受けたのさ』


『ははは、それは建前で、ゴルディ兄は単純に虎楼閣に乗りたかっただけでしょう?』


『ふふん。ま、それもあるけどな。というわけで、今回の戦よろしくっていう陣中見舞いついでに、見せびらかしに来たのさ』


「なるほどな、王が前線に出るよりは、その方がいい」


『しかし、タツヤ達のドラグーンだったか? あれはどうしたんだ?』


「ふん、お前達の魔装甲冑の様な、短距離に限定された不出来な転移と違って、我が体は時空間の制限無しだからな。それに今は、お前達の魔装甲冑に注入した分を補修中だ」


『相変わらず凄い性能だな』


「ふふん、当然だ」


 ゴルディの素直な賞賛の声に、イオスが胸を張る。その後も取り留めのない会話は続いた。

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