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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第二章 商業国家ミンバ/吼えよタービュレンス
41/95

2→3 ①


 翌日から俺達は帝国への開戦に向け、慌ただしく動く事となった。

 まずはブエラリカ中の魔装甲冑へ、そしてそれが済んだ頃、ミンバ中から続々と集まる魔装甲冑へのドラグーン組織注入が待っているのだ。

 さながら今のブエラリカは、魔装甲冑の一大予防接種会場だ。

 勿論、俺達だけではなく王やゴルディも連日軍議やら兵站の調達やら、何かと忙しそうにしている。


「ふむ、タービュレンスには必要無いぞ、シルフィ」


「え〜、なんでさ?」


 今日も魔装甲冑の置かれた工房にイオスを連れて行き、俺も注入作業を手伝う。

 あらかじめ出しておいた触手を差し込み、青い肉に黒い筋が流れるように混ざっていくのを見ていると、タービュレンスに乗ったシルフィがやって来た。

 タービュレンスにも黒龍の組織を注入しようというのだろう。しかし、イオスは首を横に振り断った。


「タービュレンスの中に強い力を感じる。マスターが渡したという霊王結晶に、タービュレンスが上手く適応出来ている証だな。それだけの力があれば、易々と白龍の組織に敗れる事もないだろう」


「本当!? 凄いやっ! タービュレンス!」


 満面の笑顔で見上げ褒める主人に応えるように、タービュレンスはグォォォンと低く鳴いた。


「それで? ルーベ・ゴッチェっていう奴はまだ見つからないのか?」


「そうみたい。もうブエラリカには居ないんじゃないのかなってゴルディ兄も言ってたよ」


 あの動乱があった翌日、ブエラリカ軍はすぐに関係者と思われるゴッチェ商会のボス、ルーベ・ゴッチェの身柄を拘束するべく動いた……が、肝心のゴッチェ商会には誰も居らず、ブエラリカの街でも遂に発見される事はなかった。


「ブエラリカに居られないから、帝国に行った……とかなのかな?」


「いや、我が思うに、既に帝国によって消された確率の方が高いだろうな。帝国にとって保護するべき人物とも思えんし、その方が手っ取り早いだろう」


「そっか、じゃあ探すだけ無駄かもしれないね……あ、そうそう!お父様が、周辺の軍事協定を結んだ国とも話がついて、そちらの所有する魔装甲冑にもドラグーンの組織注入をお願いしたいって! あはは、タツヤ兄ちゃんに伝えるの忘れる所だったよ!」


「あははって、笑い事じゃないだろ、シルフィ。その周辺国の魔装甲冑ってどれだけいるんだ?」


 俺がそう言うと、シルフィはブツブツと指折り何かを数えだす。


「ん〜……はっきりとした数はわからないけれど、全部合わせてもミンバ程じゃないかな。多分、ミンバの魔装甲冑所持総数の八割ってところだと思うよ?」


「八割!?……おい、イオス……」


「ああ、ほぼ倍になるとはな……マスター、作業を続けるぞ!」


「えっ! どうしたのさ、二人とも!?」


「悪いな、シルフィ! 作業に戻るから、続きはまた今度だ!」


 手を振り作業に戻る。結局、その後休まず作業を続け、昼をだいぶ過ぎた頃に、今日予定していた三倍の魔装甲冑を仕上げる事が出来た。


「うむ、マスター。今日の所はこんな所だろう

。これ以上は我が体自体の修復が間に合わなくなる可能性がある」


「もう少し続けたいけれど……そういえば注入しているのはドラグーン、つまりイオスの体そのものだったな。わかった、今日はもう辞めにしよう」


「終わったんですか?」


「にいちゃ、お疲れ?」


 建物の陰から突然リミルが顔を出す。肩にはマシロも乗っていた。


「リミルか。いつの間に来てたんだ?」


 そう尋ねると、リミルにしては珍しく不満気にプクッと頬を膨らませた。


「いつの間に? じゃあないですよ。お昼になっても戻らないから、心配して来たんですよ? なのにいくら声をかけても、タツヤさんは魔装甲冑にかかりきりで全然気づかないんですもん!」


「そ、そうか……それは悪かったな、リミル」


 慌てて頭を下げると、リミルは膨らませた頬を戻しクスクス笑い出す。


「ふふ、嘘ですよ。タツヤさんは皆の為に頑張っているのに、怒ったりなんてしません。でも、体には本当に気をつけてくださいね?」


「にいちゃ、マシロ、心配」


「ああ、二人とも心配かけてごめんな。気をつけるよ」


「よろしい。では、そんなタツヤさんにお弁当のご褒美ですっ!……えっと、お弁当だから簡単な物しか入れられなかったんですけど……」


 差し出された包みを受け取る。作業に集中している間は気にもならなかったが、今の俺は確実に空腹だった。


「ありがとう! 正直、お腹空いてたんだ!早速いただくとするよ」


「それじゃあ、私はお茶淹れてきますね」


 適当な場所に座り、用意されたお茶と弁当を味わう。

 リミルの言う通り、決して豪勢な食事とは言えなかったが、一つ一つ丁寧に作られた彼女の手料理は、この上なく俺の疲れた体を癒してくれた。


「あの……どうでしょうか。美味しいですか?」


「ああ! リミルの御飯はいつだって美味しいさ」


 物欲しそうにしているマシロに少しだけ弁当を分けつつそう答えると、リミルの顔が綻ぶ。


「ふふふ、それなら良かったです。あっ、タツヤさん。リズさんが作業が終わってからでいいから、一度工房に顔を出すようにと言っていました。何でも見せたいものがあるそうです」


「見せたいもの? わかった、ちょうど作業も終わったし、これから行ってみるよ」

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