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街を抜け辿り着いた遺跡発掘跡は、クレーターのように巨大な円形の盆地で、その内側では更に縦穴と横穴が設けられ、地下へと続いているようだった。
その盆地の底、ちょっとした運動場ほどの広場に三十人くらいのゴロツキが何かを取り囲むように円形に並び何やら興奮しているようだ。
「マスター、ジルバはあの円の中だな」
「ああ、どうやらそのようだな」
イオスの言う通り、中央にはヤモリに似たつるりとしたトカゲ男と一対一で向かい合っているジルバが居た。円の外側には、ゴロツキに腕を掴まれたタニアの姿も見える。
俺は、盆地の中にある、採掘で出来たのだろういくつかの盛り土の山に隠れながら、気付かれないように、タニアを掴んだゴロツキへと近づく。
「さて、どうする? マスター」
「決まってるだろ、二人共助ける!」
スーツの他の場所を犠牲にし、黒龍の組織を脚部に集め脚力を最大限にすると、一番近い盛り土からタニアの下へ一直線に駆け寄る。
最接近する直前、右足の爪先を鋭い刃状に変え、タニアを掴んだゴロツキの腕を、駆け寄る勢いのまま素早く蹴り上げ切り捨てた。
「熱っっ! な、何だ!? ぐべっ!」
そんな声を尻目に、驚くタニアを片手で抱き抱え、腕を切られたゴロツキを踏み台に一気に跳躍すると、円の中央、ジルバとイモリの間に割り込むように降り立つ。
「に、兄ちゃん!?」
「て、てめえはっ!」
驚く二人を無視して、イモリの腹に蹴りを放つ。ヌヘッという叫び声を出しながら、イモリは吹き飛び円を構成していた他のゴロツキにぶつかった。
俺は空いていた片手でジルバも抱えると、前方のゴロツキに向かって跳躍。
ゴロツキの肩に降りると、そこを足場に更に跳躍し、ゴロツキ達の円の外、少し離れた場所に着地する。
「ふぅ……なんとか成功したか」
二人を降ろし一息つく。いくらイメージ通りの動きをスーツが強力に補助してくれるとはいえ、ここまでの動きが出来るか正直不安だったが、どうにか上手くいったようだ。
「兄ちゃん……来てくれたんだ……んっ!」
ジルバが腹をおさえ顔をしかめる。どうやら既にイモリにやられたらしい。
「どれ、我に見せてみろ」
イオスがジルバの上に降り、ジルバのおでこにピタッと触る。ジルバとタニアは突然のイオスの登場に目を白黒させた。
「に、兄ちゃん! このちっこいのって!?」
「あ〜、うん。こいつの事は気にするな……で、どうだ? イオス」
「うむ、腹に一撃喰らったようだが、骨や内臓には大した損傷も無い。しばらく痛むだろうが、生命に問題は無いな」
どうやら大事になる前に間に合ったようだ。俺はホッと胸をなでおろす。
「良かった……だけどなジルバ、ちょっと無理し過ぎだぞ」
「だってあいつら、一対一で勝ったらタニアを解放するって言うから……僕……」
「ああ、そうだな。お前は頑張ったよ。だけど、タニアは助けたし、こっからはお兄ちゃんに任せときな」
二人の頭を優しく撫でると、立ち上がりゴロツキ達に向き合う。
ゴロツキ達も突然現れた俺への動揺が薄れたようだ。中心に居る見覚えのあるワニ男が、こちらを指差して下品に笑う。
「よく来たな、兄ちゃん! 昨日の落とし前、兄ちゃんの命で払ってもらうぜ!!」
「命か……そのセリフ、俺と命のやり取りする覚悟があるって事だな」
「はんっ! これだけの人数、兄ちゃんに勝ち目は無ーよ! 構わねえ、皆やっちまえ!!」
ワニ男の合図でゴロツキ達が武器を取り出し襲いかかってくる。
俺はジルバとタニアを後ろに下がらせ、右手のスーツを一本の杭のような形状に、左手のスーツを鋭い刀の形状に変え迎え撃った。
「くらえぇ!!」
安っぽいカンフー映画さながらに、青龍刀に似た幅広の刀を振り回す豚男の攻撃が、チッと音をたてて俺の前髪を掠める。
俺は、思考速度を上げ、それに伴い高速化した動きでしゃがみ、豚男の懐に入り込むように斬撃を潜り抜けると、その顔目掛け右手の杭を叩き込む。
肉をえぐる嫌な音と感触を残し、豚男は生き絶えた。
すぐさま杭を引き抜くと、倒れる豚男に構わず数人のトカゲ男が一斉に槍で突いてくる。まるで槍衾だ。
だが、それですら今の俺には遅過ぎた。脇にステップで回避し、突き出し伸びきった槍を戻す前に、その槍を持つ腕ごと左手の刀で叩き斬る。
その時、突然空中から火球が飛び上がる。おそらく後方のゴロツキが発した術式だろう。
しかし、放物線を描く火球の軌道は、俺ではなく離れて俺を見守る子供達へと向かっていた。
慌てて子供達の方へ向かおうとする俺の脚を誰かが掴む。見ると、突然現れた樹のツタが俺の脚に絡みついていた。
「くそっ!これも術式かぁっ!!」
脇に居るトカゲ男を杭で刺し火球に向けて全力で投げつける。空中でトカゲ男とぶつかった火球は、子供達に届く前に爆発し消えた。
俺は脚からツタを手早く切り離すと、体勢を整える為一旦ゴロツキ達から飛び離れ距離を取る。
「これは……術式が無いってのは、思ったよりキツイかもな」
「そうだな。どうする、マスター? 二人を連れて逃げるか?」
「いや……こんな事を繰り返させない為にも、こいつ達はここで倒す!」
再び突撃しようと構えた瞬間、ゴロツキ達の後ろから血飛沫が上がる。
俺以上に驚くゴロツキ達を、手にした剣と術式によるものだろう鋭利な風の刃で切り裂きながら現れたのは、黄金のように輝く金髪をなびかせ、虎の耳と尾を持つ一人の若者だった。




