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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第一章 目覚めたら異世界/復活の邪龍神機
19/95

1→2 ④終


 ヤグ車でノーバ村から西に七日進んだ頃、いよいよ目指すべきミンバの首都ブエラリカが見えてきた。

 道中二足歩行四つ腕の巨大昆虫や、沼に潜み触手を蓮の葉の様な植物に擬態したタコ等の魔物に襲われたりもしたが、リミルの術式とイオスの操るヤグ型黒龍の力で難なく撃退出来た。

 俺はと言うと、空いた時間のほとんどをボガードとの訓練に費やし続けている。

 成果は……まあ、うん、まだまだかかりそうだ。

 既に日課となりつつある訓練を終え、ヤグ車に揺られながら一休みしていると、懐かしい匂いが漂ってくる。


「んっ……この匂いは……海が近いのか?」


「そうなんです、ミンバの首都ブエラリカは、海に面していて、交易船の集まる地なんですよ! 私も二度ほどしか来た事はありませんが、凄いですよね! 海!!」


「ああ、俺も好きだぞ、海! ……しかし……海っていうのは、どの世界でも同じ匂いなんだな……」


 森育ちのリミルにはよほど新鮮なのだろう、嬉しそうな笑顔を見せる。

 俺はそんなリミルに微笑み返しつつ、外から香るあの特有の磯臭さに思わず元の世界を思い出してしまった。

 込み上げてきたノスタルジックな想いを堪えるように上を向くと、肩の上に居たイオスが、俺の顔を不思議そうに覗き込みながら尋ねてきた。


「前々から気にはなっていたのだが、マスターはもしかしてこの世界の者では無いのか?」


「……ああ、そういえばイオスには話してなかったな。そもそも、俺がリミルと出会ったのも……」


 イオスを肩から手のひらに移し、これまでの事を話す。

 帝国兵に囲まれ、イオスを目覚めさせたところまで話すと、イオスが腕を組みフームと考え込む。


「なるほどな、マスターの事情は理解した。それでマスターは元の世界に戻りたい……という事か」


「そうだな。まあ、異世界召喚や送還は結構難しいみたいで、相当な力のある呪物なんかが必要らしいけれど……」


「うむ、そのアイテムなら今ここにあるぞ」


「えっ!?」


 事もなげに言うイオスに、思わず声が大きくなってしまう。イオスはそんな俺の驚きには構わず、リミルの胸を指差し淡々と続けた。


「我が核であるその結晶体だよ。それは一見宝玉の類に見えるかもしれないが、その実態はこちらと何処かを繋ぐ窓にして門。我が体を異界にしまい取り出す、異界から我が体にエネルギーを注ぐ等用途は多彩だ……そうそう、この間ボガードを倒したアレも、そうやって自壊する星より調達した力だな。もちろん人の一人や二人送り込むなど造作もない事だ」


 イオスの説明を呆然としながら聞く。つまり……それじゃあ……。


「それじゃあ、俺はもう元の世界に帰れるのか?」


 しかし、イオスはそんな俺をジッと見た後、表情を曇らせる。


「あ〜……すまない、マスター。期待させてしまったな……実は、現状ではマスターをマスターの世界に帰す事は出来ない。決定的な物が足りないんだ」


「決定的な物?」


「そう、マスターが元々居た世界の座標だよ。数多ある異世界の中から、正確な世界の位相と時空間の指定が出来なければ、マスターを元の世界の元の場所に送還する事は不可能だ」


「その座標って、どうやったらわかるのかな?」


「う〜む……やはり、召喚者本人に確認するか、召喚に使用した呪物を調べるのが確実だな……マスターの力になれず、すまない」


 余程俺がガッカリした顔をしていたのだろう……イオスにしては珍しく、しょんぼりと申し訳なさそうにしている。

 そんな姿を見た俺は意識的に笑顔を作ると、イオスの頭を人差し指でそっと撫でる。


「いや、イオスのおかげで今後の目標がかなり明確になったよ! ありがとうな。な〜に、まずはやれる事をやってみるさ。もちろん、座標がわかって帰る時にはよろしく頼むぞ!!」


 グッと親指を立て、ウィンクをしてみる。我ながら少々わざとらしい気もしたが、イオスの顔がふっと明るくなった……ように感じた。


「ふふん、マスターは優しいな……わかった、その時は我が核の力、存分に見せつけてくれよう!」


「ですね〜。もちろん私も微力ながらお手伝いしますよ!」


 リミルもニコニコしながら、俺の真似をしてグッと親指を立てる。俺の顔もいつしか作り笑いではない自然な笑いになっていた。


「ははは、そうだな。よし、まずはブエラリカだ!」


 そうして俺達はミンバの首都ブエラリカに到着したのだった。

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