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この恋の終わり

雄一たちが麻里をバカにしても,麻里はそこまでバカじゃない.

確かに,ミーハーだったのかもしれない.

生徒会のメンバーになれて,浮かれていたのかもしれない.

ほかの女子生徒たちに,優越感を持っていたのかもしれない.

けれど,だからといって,ここまでコケにされる理由はない.

麻里はちゃんと知っているのだ.

ストーブのための灯油タンクがあることも,大輔がタバコを吸うためにライターを戸棚に隠していることも,本棚にバインダーや本がたくさんあることも.

バインダーから書類を取り出して,会議用の机の上に置く.

そして灯油を,しっかりと染みこませる.

時間は十分にあるのだ,あせる必要はない.

雄一は,今日はこの部屋を麻里に貸すと言ったのだから.

淡々と作業をしながら,ふと思い出す.

今朝の天気予報では,空気の乾燥に注意しましょうとアナウンサーが話していた.

火事には気をつけましょう,と.

麻里は,ふんと笑った.

一枚の紙に,ライターで火をつける.

それを灯油を染みこませた紙の山に入れると,炎が踊った.

思ったよりも幻想的で美しく,大きなものになる.

麻里は煙に辟易へきえきしながら,本を次から次へと炎の中へ投げ入れた.

天井から,スプリンクラーの水が降り注ぐ.

仕事を嫌々するように,警報機が鳴り響いた.

炎が勝つのか,水が勝つのか.

校舎全体に燃え広がるのか,ただの小火ぼやになるのか.

麻里が勝つのか,雄一たちが勝つのか.

麻里は平凡で,彼らのように特別ではないが,プライドがないわけではない.

だいたい,あんな風に優しくされて特別扱いされて,図にのらない女子なんかいない.

しかも孝成たちみたいな,ハンサムで有能な人気者たちに.

そもそも彼らだって,麻里に対してミーハーだった.

勝手に雄一の恋人として祭り上げて,麻里の気持ちなど最初から無視していた.

だから麻里は,悪くない.

悪いのは,彼らだ.

麻里をうぬぼれさせたのも,狂わせたのも.

麻里は声を上げて笑って,慌てて部屋に戻ってくるであろう雄一たちを待った.

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