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凋落の怨嗟 ⑪

いつも読んでいただきありがとうございます。

自身の諸事情により来週の26日(金)27日(土)の更新はありません。

来月からいつも通り更新致します。よろしくお願いいたします。

「そこをどけ!!!」


サキユが全力で風魔法を放つ。


「急になんだこいつ!」


傭兵の一人がサキユに押されている。

すかさずにもう一人の傭兵がサキユを狙う、しかし。


「させないっすよ!」


「チッ!」


「サキユ!どうしたんだよ!?」


リリーがサキユの異変に理由を尋ねる。


「クロア様が・・・クロア様がぁ・・・!!」


「クロア・・・?」



奴隷とは、主従関係を意味する。

古い時代では、奴隷も社会基盤の一助として身分があり、労働力であった。

何時しかそれは形骸化していき、人権を失い物としての扱いになって行った。

しかし王国で奴隷とは、身分のある人として扱われる。

世界各地においても王国の奴隷の扱いは非常に恵まれているのだ。


奴隷にも種類があり、身売り、借金、犯罪などの様々な理由で貴族平民関わらず奴隷になる事がある。

その中でも特定の貴族に仕える奴隷は非常に安全と言われている。勿論場合にもよるが・・・。

理由は簡単で、その奴隷はその貴族の物なのだ。故にその奴隷を害そうとすれば、それは持ち主に喧嘩を売った事と同義になる可能性があるから。

故に身分が無い者が身分を手に入れるために奴隷になったり、犯罪を犯した者でも貴族に匿ってもらうなどで罪から逃れる者を居る。

そしてサキユは身分が無い側だった。

捨てられた自分を、救ってくれた男の子。

手を差し伸べられた訳ではない。でもこの大空を飛ぶ力をくれた人。

その恩を、命を賭けて返す為に奴隷にしてもらった。この命は、自分の主人の為に。


「ボクの邪魔を、するな!」


サキユは飛び立とうとするが、クロスボウを持つ女がそれを許さない。


「はいはい、無理だって」


「邪魔!」


「落ち着けサキユ!」


リリーがサキユを止める。


「どいてよ!クロア様が!」


「何があったか分かんないけど、クロアが簡単に負ける訳ないだろ!?」


リリーの言葉を聞いて少し冷静を取り戻すかと思ったが、サキユはさらに暴れる。


「リリーには分かんないでしょ!ボクとクロア様のつながりが・・・弱くなってるんだよ!」


「!?」


その言葉を聞いて、その場に居た兵士やトントが理解する。


「奴隷紋の契約魔法が弱くなってるってことすか?」


「そうだよ!」


トント達が本格的に焦りだす。


「・・・サキユ、全力で飛んでくれ。俺達が隙を作る」


「どういう事なんだ?」


リリーがトントに聞く。けれど説明している時間は今は無い。


「後で教えるっすよ。今はサキユを全力で援護する事だけ考えるだけでいいすよ」


傭兵達が何かを取り出す。


「何かあったみたいだな、だけどこっちとしてはそいつに飛び回られると面倒なんでな」


「お?使っていいのか!!」


「私はパス、それ信用できないから」


「好きにしろ・・・!」

「きたきたキタァ!!」


傭兵の男二人は小瓶の液体を飲み干す。

カルガンの様に、動きが変わる。


「いっ!?」


トントは何とか受け止めるが、他二人とリリーが吹き飛ばされる。


「受け止めるか、貴様はやはり中々優秀なようだな」


「はっはっは!!弱ぇな餓鬼!」


「なん、だ。あのヤロー・・・!」


守りを失ったサキユは飛び立つ体制に入れない。


「邪魔しないで!」


「無理だな!お前は死ね!!」


ウィンド(攻撃風魔法)!!」


サキユが魔法を放つ、しかし。


「なんだそりゃぁ!そよ風だな!」


先程までとは違い、気にも留めず向かってくる傭兵。


「!?」


「よそ見か?」


「ぐっ!」


「がら空き」


「!」


女がクロスボウをトントに放つ。



しかしその矢は阻まれる。もう一つの矢によって。


「随分と良いようにやってくれましたね」


「俺達の領地で暴れ放題とは、覚悟しろよ外道共」


「良かったー・・・」


トントが安堵する。そこにはグラハとディンが立っていたから。


「親父・・・?」


「よく頑張った、今は休んでいなさい。リリー」


「血相変えて走って来るもんだから何かと思ったが、もう入られていたとはな」


グラハとディンが状況を確認する。

その期を逃さずサキユは飛び立つ。


「させないって!」


「いいえ、行かせてもらいます」


クロスボウを相殺するグラハ。


「あの顔、クロア様に何かあったのですか?」


返答できそうなトントにグラハが尋ねる。


「グラハさん・・・何やらサキユの奴隷紋の反応が弱くなってるみたいです」


「それは・・・不味いですね」


「はい。だからサキユを行かせたかったんですけど、このザマでして」


「何言ってんだ、よく耐えたぜ」


ディンががトントの背中に喝を入れる。


「では、我々がお相手しますよ。ちなみに他の方々はウィン様とヴォルフォ達が対応してるので、全員捕まるのは時間の問題ですよ」


傭兵達は顔を見合わせる。


「いいじゃねぇか、退屈してたんだ!」


「私は逃げるけど?」


「すでに目的は達成している。だが簡単に逃げれそうもないな」


「本気で言ってる?私は餌になるのは勘弁。あのムカつくハーピィにも逃げられたし、もう帰」


言葉の最中に矢が飛んでくる。


「逃がすと思いますか?」


「まっじか・・・」


「さっきまでと比べ物にならんな。これがあのイストフィース家の三騎士か」


「おや、我々の事を知っているので?まぁだからと言って何が変わる訳でもありませんけど」


「好きに動けよグラハ。俺は全部守るぜ」


「そのつもりです。崩されないで下さいね」


「誰に言ってやがる!!」


ディンとグラハが、傭兵達に襲い掛かる。





-----∇∇∇-----





「隊長!」


「ヴォルフォか、そちらはどうだった?」


「賊共は順調に減ってきてるんだが・・・何やらあいつら森や山に何かを放ったらしいです」


「何を放ったのだ?」


「それが・・・これでして」


ヴォルフォが小さな小瓶をウィンに渡す。


「これは?」


「これを飲んだ奴らが急に強くなったりしてました。何かの薬かなんかだとは思いますけど、俺にはさっぱり」


「じっくりと調べる時間は無い。これを使って魔物を凶暴化させて居たとみるべきか・・・?」


「まぁ辻褄は合うかと。とは言えなんの確証も無いので今は何とも」


「クロア達の部隊が戻ってくればもう少し何か分かるかも知れん。今は帰還を待ちつつ近くの魔物と賊共の対応だ」


「了解!」


ヴォルフォ対応に戻って行く。それと入れ替わる様にリリルがウィンの元へ来ていた。


「あなた」


「どうしたのだ、何かあったか?」


万が一の為にリリルには避難所の防衛を任せていた。その彼女が来たと言う事は避難所何かあったのかと思うウィン。


「いいえ、今の所皆無事よ。けど、急にオルカ達が不安がってしまって・・・」


「オルカ達が・・・?」


二人が困惑していると、空中で飛んでいくサキユを見つけた。


「サキユ!」


声を掛けるが反応は無く、スピードを更に上げていく。


「あっちの方って・・・もしかしてクロアに何かあったの!?」


リリルが焦る。


「あいつに限ってしそれは無い。今は皆を信じよう」


ウィンが断言をする。自慢の息子に何かある訳ない、と。


「そう、ね。そうよね。分かったわ、あなたも気を付けてね?」


「分かっている、すまないがそちらを頼む」


「大丈夫よ。これぐらい任せて」


リリルが戻って行く。


「・・・頼むぞ」


ウィンは祈るように、その言葉を空に投げる。





-----∇∇∇-----





「ギガム!」


「やっと立ち上がれたのかい。まだまだ鍛えたりないね」


「うるさいわね。どいつもこいつも足癖が悪いのよ」


エリアが来た時にはすでにギガムの戦いは終わっていた。


「そいつはどうするの?」


倒れているジルガを見てエリアが尋ねる。


「そうだねぇ・・・細かい事はウィンやクロアに任せるさ。取り合えず持って帰ろうかね」


「あ」


エリアが落ちている外套を持ち上げる。


「これ・・・魔道具かしら」


「だろうね。しかも中々レア物だと見たね。一旦全部持って帰・・・!」


「どうしたの?」


「・・・とてつもない奴がどんどん町に向かってる」


「そう言えば、急にぞわっとした時があったわ。クロアじゃないの?」


「クロアだとしたらおかしい、あの子はこんなおぞましい気配じゃないはずだ」


「どちらにしても帰れば分かるんじゃない」


「・・・そうさね。全員集めて一旦帰還するよ」


ギガムがジルガを持ち上げて運ぶ。エリアが外套を回しながら付いて行く。





-----∇∇∇-----





赤い。

視界が、赤い。

俺は、まだ生きれているのか。


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