第852話 リッコの未練と突然の呼び出し
年末年始特別企画です。
――これは時を少し遡り、デレス達がクイーンチッヒー討伐に向かう直前から始まる話である。
「以上、午前の部でした~!」
「リトルリリックのライブ、午後もありますよ!」
「売店では私達のサイン入りグッズがありまぁーーーす!!」
デレスアリーナの幕が下り、
ちっちゃい三人組の歌い手がステージから降りる、
そして私はそこをモップで急いで拭く、早くしないと昼食の時間が無くなる。
(なんで私がこんなこと、なんで私が奴隷に、デレス、早く助けに来なさいよ……)
反対側では僧侶のフラウもモップ掛け、
こんなの次のステージの直前でも良いのに……
というか私がやる意味あるの?! こんなの奴隷にやらせなさいよ、私以外の!!
「リッコ、ちゃんと幕の下も」
「うるさいわねフラウ、側室のくせに」
「誰のよ」「デレスちゃんのよ!」「ならリッコは正妻ですらないでしょう」
思わずにらみ合う私達、
だがそれもすぐに、強制的に止められた!
「ぐあああああ」「ひぎいいいいい」
「真面目にしなと、首を絞めろと、言われていますから」
かつてのメイド、
いや彼女は今もメイドだけれども、
私に使われていたはずのメイド三人組、そのうちひとり、カリヒに首輪を絞められる!!
(あの三人まで、私達の首を絞める権利を与えるなんて……!!)
まさに屈辱、
ステージ上でのたうちまわっていると、
しばらくしてスッと首が楽になる、荒く息を繰り返す私。
「リッコさん、ステージをきちんと拭いて下さい」
「わ、わかったわよ、眼鏡が落ちちゃったじゃないの、もう」
「外れにくいのを手配した方が」「それより早く奴隷を解放してよ!」
……いけないいけない、
カリヒやメツバやミノゾごときにそんな権利は無いわ、
そう思い直し、急いでモップを手に立ち上がって床を拭く。
「……それ以上の悪態は、ペナルティ対象になります」
「トーキタさん!」「彼女達、メイドさん達にも権利を与えて良かった」
「私、謝りましたよね、デレスちゃんに! だから、だから」「リッコ、早く」
フラウの言葉に我に返る。
(とにかく、さっさと済ませて昼食を……)
ステージの床を拭きながら考える、
私、リッコはどうしてこうなってしまったのか、
女剣士として、勇者デレスの婚約者として、輝かしい未来が待っていたはずなのに。
「何よ……ちょっと騙されただけじゃないのよ……」
そう呟く声は最小限、
特にフラウに聞こえて良い事はない、
自分はデレスに対しては、何をしても許された、そう、どんなことでも……
(そう思わせた、デレスちゃんが悪いのよ)
モップで床を拭きながら天井を仰ぐ。
「あぁ、デレスちゃん、デレスちゃんは絶対に、迎えに来てくれるはず……よね?」
この未練は、
きっとデレスちゃんがまだ、
私の事を想ってくれているから、のはず。
(あの時の別れの言葉、あれは嘘よね……?!)
夜のシアターで聞いた言葉を思い出す。
『リッコ姉ちゃん、フラウお姉ちゃんもだけど、
僕、僕……いま、とっても幸せなんだ、ほら見て僕の仲間たち!
だからもう、リッコ姉ちゃん達のことはどうでもいいんだ、僕、こんなに幸せな勇者になれたよ!!!』
あれはきっと、言わされているのよ!
何よあの巨女、悪女、淫乱バーサーカー!!
きっとデレスちゃんを脅して言わせたに違いないわ!!!
(そう、私が、私がデレスちゃんを待ってあげないと……!!)
だから、もう少し、
あとちょっとの辛抱の……はず。
「リッコ、同じところばっかり拭いてないで、もう終わったわよ」
「えっフラウ、じゃあ」「降りるわ」「そうね、昼食にしましょう」
ステージを降りると、
私達を逃がしたことで一緒に奴隷落ちした、
元メイド長のステラがお水をくれた、ありがたい。
「美味しいわ、ありがとう」
「プロデューサールームに来るようにとのことです」
「えっ、ひょっとして、奴隷解放?!」「それは無いでしょうね」
急いで行くと、かつての仲間、
同じく奴隷落ちの魔法使いミジューキも来ていた、
あと先に奴隷解放された、テイマーのハービィも……まったく、ずるい。
(でも、これって順番ってことよね)
そう思って待っていると、
お弁当を四つ持ったプロデューサーと一緒に、青いショートカットの、
やたら胸の大きな女性が入って来た、ギルドの受付嬢のよう、名札には『モグナミ』の文字が。
「皆さん、本社から、いや『ニィナスターライツ』から呼び出しです」
そしてモグナミさんも口を開く。
「突然の呼び出し申し訳ありません、『ニィナスターライツ』の皆さんが、
モバーマス大陸に居る七大魔王、その最後のひとりを倒すこととなりました、
そこで『デレスフライヤーズ』の皆さんに、それを見ていただくこととなります」
この呼びだしは……デレスちゃんの?!
(んもう、まったくデレスちゃんったら!!!)
仕方ないわね、
やっぱり最後の最後には、
どんなことがあっても私に戻ってくるんだから!
「……謝った甲斐があったわ」
「今、なんと」「いえトーキタさん、何も!!」
「話を続けます、では今から皆さんに転移スクロールで……」
そこからはもう、
モグナミさんの声は聞こえなかった。
(デレスちゃん待ってて、一緒に、やり直しましょう!!)
今度は、キスくらいなら許してあげようかしら???
新作長編『VIVA! 地味ハーレム』連載中、
新作短編『うちゅうじんがせめてきたぞ!!!』完成アップ済みです、
よろしければ読んであげて下さい、出来れば★評価★も……では皆さん、良いお年を。




