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クリスは楽しく過ごしたい!  作者: かるた
第三章 大魔法祭を楽しく過ごしたい!
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レオナとおすすめのカフェ

 カフェに案内してくれると宣言したレオナを先頭に街中をテクテク歩いていると、またしても面白そうなお店を見つけてしまった。


「あ……」

「どうした、クリス?」


 ちらりとスピネルの方を見ると、漏らした声を聞いたスピネルがわたしの方へ目線を向けてきた。


「クリス……どこに行くつもりだ?」


 どうやらわたしがお店を見てそわそわしていることに気付いたようで、スピネルは繋いだ手にぎゅっと力を込める。


「ど、どこにも行きません!! 勝手にどこか行くはずないじゃないですか!」


 わたしがしどろもどろになりながらスピネルに弁明していると、スピネルはじっとりとした目でわたしを見つめてくる。以前スピネルに迷子から助けてもらった時も急に走り出してしまったことがあるので、お出かけ中のわたしに対するスピネルの目は厳しいものだ。


 そんなわたし達を見て、前を歩いていたレオナ達が口元を抑えながらクスクスと笑い始める。


「本当に殿下とスピネル様は仲がよろしいですわね!」

「ええ、まるでコンラート様とユリアーネのようですね」

「あの二人とは似ても似つかないけどな!」


 皆は微笑ましい目付きでこちらを見てくるが、そんなことを言われたわたしは何だか恥ずかしくなってきた。


「もう! 皆して何を言うのですか!!」


 恥ずかしくなったわたしは顔を真っ赤にしてスピネルの手を振り払うと、先頭を歩いていたレオナの元へ駆け寄る。


「さあ! 早く向かいましょう!!」

「はい、殿下。仰せのままに」


 レオナはそう言うとからかうように微笑みながら、わたしの手を取り再び歩き始めた。


 そのままレオナ達と一緒にしばらく歩くと、華やかなお店が並んだ通りへと到着した。賑やかだった劇場の近くとは異なる雰囲気を持った通りにわたしは感嘆の声を上げる。


「何だかここの通りは雰囲気が全然違いますね、静かで落ち着きます……」


 全然雰囲気が違うその通りを見ていると、まるで物語の中に入ったような錯覚を覚える。


 見るもの全てが楽しそうでわたしがきょろきょろと辺りを見回していると、隣を歩くレオナも楽しそうに笑顔を浮かべた。


「この辺りは落ち着いた雰囲気を出すために『消音の魔道具』が設置されていて、周りの音があまり聞こえないようになっていますの!」

「それでこんなに静かなんですね……」


 そう言われて耳を澄ますと、確かに先ほどまでの賑やかさが嘘のように静かであることに納得がいく。わたしが静かに聞き入っているところを見たレオナは満足そうに頷いた。


「この辺りはわたくしのお気に入りの場所ですの! 本日全てを案内することはできませんけれど、次に来た時はもっとゆっくり案内しますわね!」

「はい! 楽しみにしていますね、レオナ!」


 わたしがそう言うとレオナも嬉しそうに微笑みを浮かべる。


「それにしても、こんな街中でも色々な魔道具が使われているのですね! わたし、驚きました!」


 わたしは静かな街並みを見渡しながらレオナに話しかけた。


「何と言ってもここはエデルシュタインの民が生活している町ですもの! 他の町と比べても魔道具の数は多いですわ!」

「他の町は違うのですか?」

「ええ! 最低限の魔道具は設置されていますけれど、魔道具の種類と数が段違いですわ!」


 学園の近くにはファルベブルクとボタニガルテンの民が暮らす町もあるが、それぞれ国の特色を出すために魔道具の使われ方が違うらしい。


「わたしももっと魔道具の使い方を勉強しなくてはなりませんね!」

「その意気ですわ、クリスティア殿下! わたくしも精一杯お手伝いしますわ!」


 そんな会話をレオナと交わしながら静かな通りをテクテクと歩いていくと、レオナおすすめのカフェへと到着した。


「到着しました! こちらのカフェですわ!」

「わあ……! 凄いです!!」


 レオナが自信満々に紹介する通り、とてもお洒落な雰囲気で可愛らしいカフェだ。


 店の外にある日当たりの良さそうなテラス席では、わたし達と同じように学園の制服を着た生徒達が談笑している様子が見える。


 とても楽しそうな雰囲気にわたしは待ちきれず、目を輝かせて隣にいるレオナの顔を見つめた。


「早く入りましょう! レオナ!」

「ええ、もちろん! 皆もそれでいいですわね!?」

「ああ、クリスも待ちきれなさそうだしな」


 わたしとレオナが振り向いて後ろの三人に声をかけると、三人とも首を縦に振って了承してくれた。それを確認したわたしは早速お店の方へ向き直る。


「よし! それでは入りましょう!!」


 そう言ってわたしが意気揚々と扉を見ると、どこにも取っ手が見当たらない。取っ手がなければ扉を開けることはできないではないか。


「……あれ? この扉はどうやって開けるのでしょうか?」


 扉を上から下まで見渡してみるが、取っ手らしきものはやはり見つからない。扉の周りに何かあるのではと思い探してみるが扉の横に板があるだけで他には何も見当たらないのだ。


 不思議に思ったわたしがしばらく首を傾げているとレオナの声が後ろから聞こえてきた。


「クリスティア殿下、この扉はこうやって開けるんですの!」


 そう言って元気良くレオナが扉の横にある板に手を当てると、目の前の扉は音もなく横へと滑り開かれた扉からは店内の明るい様子が目に飛び込んできた。


「ええ!?」


 わたしは何が起こったのか良く分からないまま、目を白黒させてレオナの方を向く。


「凄いです、レオナ! 一体どうなっているのでしょうか……?」


 初めて見た動く扉をわたしがまじまじと観察していると、それを見たレオナが嬉しそうに笑いをこぼす。


「驚いていただけたようで何よりですわ! それでは入りますわよ、殿下!」

「もう少し扉を見ていたかったのですが……皆を待たせてしまっては悪いですからね! 早速入りましょう!!」


 いつまでも入り口で扉を見ているわけにもいかないので、わたし達もレオナの後に続いて店内へと足を踏み入れる。


 「わあ……!」

 「お気に召しましたか? 殿下」

 「はい! とても可愛いですね!!」


 店内は外と同じように落ち着いた雰囲気でまとまっており、中でも数名の客がお茶を楽しんでいるようだった。


 そんな店内の様子をわたしがきょろきょろと観察していると、わたし達の方へ向かって綺麗な女性の店員が歩いてきた。彼女はわたし達の目の前で止まると、見た目通りの綺麗な礼でわたし達を出迎えてくれた。


「ようこそお越しくださいました、レオナ様。それにご学友の皆さまも」

「ええ! 本日はクリスティア殿下をお連れしましたの! 美味しいお茶を楽しみにしていますわね!!」


 レオナがわたしのことを紹介すると、女性の店員はニコリと微笑んでこちらに向かって深々と頭を下げる。


「それではお席へご案内いたします。本日はどちらのお席にいたしましょうか?」

「……殿下はお店の中と外どちらがよろしいかしら?」


 レオナはそう言いながらチラリとわたしの方へ目線を向ける。レオナはわたしに選択権を譲ってくれるようだ。


「そうですね……」


 今日はとても天気が良いので、テラス席でお茶を楽しむのも気持ちが良いだろう。しかし、今日は大魔法祭の出し物の視察ということで町へ遊びに来ているので、出来れば店の中の様子もしっかりと見ておきたい。


 わたしは一瞬考えを巡らせて、結論を出した。


「今日は店内にしましょう! 外でのんびりするのはまた次回です!」

「分かりましたわ! それでは店内でお願いしますわね!」


 レオナがそう伝えると店員は頷き、わたし達を奥まった場所にある広い席へと案内してくれた。大きな窓に透明なガラスがはめ込まれており、室内なのに日当たりもとても良さそうだ。


 わたし達は五人が座っても余裕があるほどの大きさのテーブルに着席する。


「むーちゃんはここです! しっかりと座ってくださいね!」

「うん、分かった!!」


 わたし達の人数を見て店員が調整してくれていたのだろう。おあつらえ向きにむーちゃん用の席も用意されていたので、むーちゃんもそこに座ってもらうことにした。


 わたし達が着席している間にもレオナはテキパキと店員に注文をしてくれているようだ。


「これでよろしくお願いしますわね!」

「かしこまりました」


 注文を終えたレオナはわたし達の顔を見回し、両手を合わせてニコリと微笑む。


「皆様も観劇でお疲れでしょうし、しばらくの間ここでのんびりしていきましょう!」


 そう言ってレオナが言葉をかけると皆も楽しそうな表情に変わる。わたしはそれを見てレオナのように人をまとめられるようになりたいと素直に感心した。


 わたしが密かにレオナへ尊敬の眼差しを送っていると、当のレオナは蕩けるような笑顔を浮かべ、ちょこんと椅子に座っているむーちゃんをおもむろに可愛がり始めた。


「むーちゃんは可愛いですわね~、よしよし」

「む~! もっと撫でてレオナ!」

「ぴ~」

「ぴ!!」

「もちろんブラウとロートが一番可愛いですわよ! 二人ともこちらにいらっしゃいませ!!」


 そう言ってレオナはニコニコと笑いながら使い魔達を撫で始めてしまった。


 これがなければレオナは理想的な令嬢だと思うのだが、これもまた彼女らしさだと思うのでそのままの彼女でいて欲しい。


 そんな風にレオナとむーちゃん達のじゃれ合いをわたし達が微笑ましく見守っていると、注文していたお茶とお菓子がテーブルに運ばれてくる。


「お待たせしました、皆様」


 店員は短くわたし達に言葉をかけると素早く、静かな動作でお茶とお菓子をテーブルの上に配膳していく。乱れなく配膳されていく様は長年給仕の仕事をしてきたことが良く分かり、とても格好良く見える。


「それでは失礼いたします。また何かございましたらお呼びください」

「ええ、ありがとう」


 配膳が終わる頃にはレオナも正気に戻っており、いつものように優しい笑顔を店員に向けている。


「それでは本日のお出かけを祝して、のんびりとお茶の時間にいたしましょう!」

「はい!」


 レオナの号令とともに、わたし達のお茶会が始まった。

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