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無職だけど異世界で旅がしたい  作者: 橘麒麟
黙示録:終章
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黎明

リリルアが吹きしきるエーテルの風をかき分け戦艦の中腹へ行くと、見えたのはママ・コチャのレストランで出会った黒ずくめの男だった。彼がリリルアと同じく太古の記憶を持ち、艦船に力を供給する媒体となっているらしい。

男は辺りに撒き散らされるエーテルの流れをうまく取り込み、なぜだか苦しそうに悶え頭を抱えている。リリルアから見れば今にも死にそうな人だった。

エーテルの輝きによってこの暗い部屋はまばゆいほど緑色に輝いており、リリルアの目にも若干焼き跡が残された。


それでもなんとか黒づくめの男を見なければならない気がして、見つめる。


「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、全能者にして主なる神。昔いまし、今いまし、やがてきたるべき者。真理の影は来る…」


男は悠々とリリルアの前で語り始めた。


——影には七つの封印がある…


第一の封印を解いた時。

白き馬に乗っている者は弓を手に持っており、また冠を与えられて、勝利の上にもなお勝利を得ようとして出かけた。

フローレンシア王女。


第二の封印を解いた時。

赤い馬に乗っている者は、人々が互に殺し合うようになるために、地上から平和を奪い取ることを許され、また、大きな剣を与えられた。

No.6とレイジ。呪術師の商会。


第三の封印を解いた時。

黒い馬に乗っている者は、はかりを手に持っていた。

龍の修羅(シュラ)。龍神信仰。


第四の封印を解いた時。

青白い馬に乗っている者の名は「死」と言い、それに黄泉が従っていた。彼らには、地の四分の一を支配する権威、及び剣と飢饉と、死と、地の獣らとによって人を殺す権威とが与えられた。

九尾の狐。サンタ・マリアの街。


第五の封印を解いた時。

神の言のゆえに、また、その証を立てたために、殺された人々の霊魂が、祭壇の下にいるのを、わたしは見た。彼らは大声で叫んで言った、「誠なる主よ。いつまであなたは裁くことをなさらず、また地に住む者に対してわたしたちの血の報復をなさらないのですか。」と。彼らの全てに白い衣が与えられる。

世界、すなわちラケル王女。


第六の封印を解いた時。


「私が見ていると大地震が起って、太陽は毛織の荒布のように黒くなり、月は全面血のようになり、 天の星はいちじくのまだ青い実が大風に揺られて振り落されるように地に落ちた。 地の王たち、高官、千卒長、富める者、勇者、奴隷、自由人らはみな… 私は地に救いを求む!さあ、我々を人民の怒りから匿ってくれ。 怒りの大いなる日が、すでに来たのだ。誰がその前に立つことができようか。」


男は言った——


「今いまし、昔いませる、全能者にして主なる神よ。大いなる御力をふるって支配なさったことを、感謝します。諸国民は怒り狂いましたが、あなたも怒りをあらわされました。そして、死人を裁きあなたの僕なる預言者、聖徒、小さき者も、大いなる者も、すべて御名をおそれる者たちに報いを与え、また地を滅ぼす者どもを滅ぼして下さる時がきました。」


「それが真理の影なの…? 神なの。神は私たちを滅ぼそうというの。」


「ああ… 真理の影、影の王ガンダールヴ。すなわち救世主が現れるのだろう? 今いまし、昔いませる…」


黒ずくめの男は全て言い終わると立ち上がりリリルアの方を向いた。彼は世界がガンダールヴによって滅ぼされることまで知っていて、この、人の血肉で動く船に乗ったのだろう。

本当に真理の影はこの世界を滅ぼすらしいと大きな確信が男の言葉を聞いたリリルアに生まれる。


男は七つの封印と言ってリリルアたちを一つ一つの封印へ分類していった。だから「愛」でガンダールヴを滅ぼすのだという九尾の言葉は正しかったと分かる。


「真理の影はここに現れる。それは事実よ、でも本当に人間は抗えないの?」


「この世は滅びる運命よ… お前と食ったあの生牡蠣はうまかったな、我らは十分現世を楽しんだ。やっと天上の国へ帰るときがきたのだ。

抗う…? 必要はない、必要はない。甘んじて受け入れよう、さすれば人間の求めてやまない永遠は与えられる。」


「私たちは生きなければ…!」


「笑止!」


リリルアが黒ずくめの男に飛びかかると、それを男の方は防御する。リリルアの短刀と男の剣が鋭い音を立てて交わった。

しかし戦闘が長く続くことはなく、すぐにリリルアの刃が男の心臓を胸をとらえた。必死にリリルアは男の胸を切り裂こうと力を込め、心臓に刃を突き立てる。

生温かい血がリリルアの腕を伝っていった。


「あなた、なぜ…」


「私も自分の死に抗ってしまった… 甘んじて受け入れよう…」


男の心に死ぬことへ対する恐怖はない。彼は全てのものが罪の上に伏し、死ぬ運命にあると悟っていたからだ。彼はあまつさえ死に抗ってしまったことを悔やんでいたのだ。


黒ずくめの男は安らかな顔で眠りについていった。リリルアは自分の刀の露払いをし、懐へしまい込むと真理の影打倒のため外へ走り出て行った。

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