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001:お金は大事だよ。

作者の株テクニックはヘボでミジンコパンチ以下です。

その日も市場からボコボコにされて、現実逃避で株銘柄を眺めていたら、株を召喚モンスターにして、特殊能力でJ○J○みたいなポッケモンバトルをすれば、面白いんじゃね?

と、思いつきの現実逃避で筆をとりました。

ついでに、自分の知識を復習する意味で、なんちゃって金融リテラシー知識も散りばめています。

特定の銘柄への投資を促す意思は毛頭ありません。

投資テクニックを聞かれても困ります、むしろ私が知りたいです。

投資は自己責任で、よく考えましょう、お金は大事なのです。


でも、この物語を読んで、私たちの身の回りには、もう一つの深くて複雑でそして面白い『株』と言う世界があるんだと気付いてもらえると作者は嬉しく思います。


それでは、私たちの世界によく似た、今ではない昔でもないちょっとだけ未来の物語をご堪能くださいませ。

001:お金は大事だよ。


 重力すら捻じ曲げるような、どす黒い波動が宇宙を震わせる。

 画面を埋め尽くすのは、無数の触手を蠢かせ、銀河の星々を次々と「黒い陰線」へと変えて喰らう異形の侵略者『アウター』。

 その深淵のような口が、今まさに、ボロボロになった巨神兵器のコアを噛み砕こうとしていた。


 巨神の機体は右腕を消失し、装甲の隙間からは火花と共に黒いオイルが血のように噴き出している。

 コックピットの警告灯は真っ赤に点滅し、精神汚染を示すインジケーターが危険域を指して狂ったように振れていた。


「……くっ、機体制御不能! シンクロ率、急速に低下中!」

「フィールド全損! これ以上は……ツヨシくんの精神が持ちません!!」


 オペレーターたちの絶望的な悲鳴が響き渡る中、少年兵・ツヨシが血の混じった唾を吐き捨て、震える手で操縦桿を力一杯握りしめた。


「……動け。動け、動け動け動けッ! まだ……僕の心は折れていない!! お前もそうだろ!? 【テンバガリオン】!!」


 次の瞬間、真っ赤に点滅していたコックピットの全計器が、パチンと弾けるように一斉に消灯した。


 訪れる、心臓の鼓動よりも静かな一瞬の静寂。

 機体の深奥から唸るような低音が響き、漆黒のメインモニターに黄金の文字が奔る。


『SYSTEM: OVERDRIVE UNLEASHED』


 突如、テンバガリオンの瞳に、太陽のごとき眩い光が宿った。

 機体は右腕を失い、装甲の隙間から激しい火花を周囲に撒き散らしながらも、軋む金属音を立ててゆっくりと、しかし確実に立ち上がる。


 全身を焼くショートの閃光を背負い、剥き出しの内部フレームを震わせて、巨神は絶望を切り裂く力強い一歩を踏み出した。


 その圧倒的な威圧感、「死」すらも凌駕する狂気的な迫力に、それまで銀河を貪り、優勢を誇っていた漆黒の異形『アウター』の群れが、本能的な恐怖にたじろぎ、一斉に後退した。


 オペレータールームのモニター群が、異常な速度で書き換えられていく。

 絶え間ないエラーログを突き抜け、あり得ない数値がコンソールに踊り狂った。


「――待って、この波形……嘘でしょ!?」

「パターン・レッド! ……いえ、違います! ゴールド! パターン・ゴールドです!!」

「ハーモニクス、限界値を突破! ……マックスです!!」


「……ぼくは、ひとりじゃないんだ! みんなの、この世界の『未来』……この一撃に、全てを賭ける!!」


 ツヨシが操縦桿を限界まで押し込む。

 その瞬間、テンバガリオンの背部装甲が弾け飛び、封印されていた巨大な『フルレバレッジ・ブースター』がその姿を現した。


「おおおおおおおッ!!」


 空間が激しく歪み、噴出する青白い熱波が銀河の闇を焼き尽くす。

 ボロボロの機体は、その圧倒的な推進力に悲鳴を上げ、四散する火花を彗星の尾のように引き連れながら、一筋の閃光と化して突進した。


 行く手に立ち塞がるのは、数多の星々の命運を喰らってきた、おどろおどろしいアウターの親玉。

 無数の触手がうごめき、銀河を侵食する漆黒の波動を放つが、加速を続けるテンバガリオンの前では無力だった。


「貫け……ッ! テンバガリオーン!!」


 機体全体が超高熱による神々しい七色の光に包まれ、ツヨシの絶叫と共にテンバガリオンはアウターの心臓部コアへと真っ向から激突した!


 背部から噴き出した熱波が宇宙の闇を虹色に染め上げ、空間そのものが虹の残像に包まれる。


 ブリッジの後方で、それまで沈黙を守っていた司令官が、眼鏡の奥の瞳に不敵な光を宿し、静かに口角を上げた。


「……勝ったな」


 その瞬間、天井に届かんばかりの勢いで『テンバガリオン』の巨大な頭部役物がガシャリと音を立ててせり出し、そのあぎとを限界まで剥き出しにして開いた。


「「オオオオオオオオオオオオッ!!!」」


 腹の底まで響く咆哮が店内に、そして宇宙の果てまでこだまする!

 液晶、役物、そして手元のハンドルまでもが狂ったように振動し、目も眩むような虹色の閃光が全てを飲み込んだ。


 閃光が弾け、宇宙の深淵のような真っ黒な画面が一面に広がった!!


 数秒の静寂の後


『左打ちに戻してください。』


 機械的な女性の声が、無慈悲に演出のハズレを告げた。


 虹色に輝いていた宇宙は、コンマ数秒で「ただの液晶パネル」へと成り下がった。


「……え?」


 俺の指が、ハンドルの上で凍りついた。


 画面は不気味なほど静まり返り、何事もなかったかのように「通常モード」の草原の背景を映し出す。


 期待値95%。

 外れるはずのない、宇宙の救世主による最終決戦。


 それが、無に帰したのだ。

 ふっと、液晶のバックライトが落ち、真っ暗な画面が「鏡」になった。


 そこに映し出されていたのは、銀河を救うツヨシくんではない。


 充血した目に、数日剃っていない無精髭。

 ヨレヨレのシャツを着た中年男。


 口を半開きにして、液晶に映る最高にマヌケな男の顔。

 それが俺――鈴木良平のツラだった



「……嘘、だろ」

 俺の震える手が、追加投資する分の日本銀行券を探す。

 だが、俺のシナシナにつぶれた財布には大量のレシートと、数枚の硬貨しか入っていなかった。


 信じられないと周囲を見回すと、俺が打っていた台の横のおっさんが、まったく同じ演出で見事アウターを撃破したところが見えた。


「遠隔だ! 絶対遠隔だろこれ!」


 俺の絶叫が、当たりを引いて上機嫌なジジババの群れに響き渡った。

 台を殴りたい衝動を必死に抑えていると、背後から「お客様、何か?」と、彫刻みたいに彫りの深い強面の店員が、音もなく近づいてきた。

 目が怖い、ぜったいコイツ堅気じゃない!


「……あ、いや。テンバガリオンの口、造形が細かくていいなーって」


 俺は情けなく目を泳がせると、残高ゼロの会員カードを抜き取り、逃げるようにパチンコ屋を後にした。


 金属の臭いの染み付いた俺の頭を、夕闇から落ちてくる冷たい雨が冷やしていく。

 とぼとぼと歩く道中、あの庶民派イタリアンレストランが見えてきた。


 数時間前、俺がフラれた場所だ。

 店のガラス窓に映る俺の情けない顔を見て、数時間前の光景が、呪いのように脳裏に蘇る。


 ◇


「私達、別れましょう」


 ミラノ風ドリアの湯気の向こうで、彼女は冷たく言い放った。

「……え? あ、いや、冗談だろ? 今日は俺の誕生日……」

「だからよ。誕生日にこんな安い店しか連れてこられない貴方を見て、確信したの。貴方、将来性がゼロだわ」


 そこからは、弾幕のような罵倒のオンパレードだった。

 貯金なし。甲斐性なし。おまけに休日は部屋にこもってアニメやゲーム三昧。

 悔しいが全部その通りで一言も言い返せなかった。

 彼女にとっての俺は、もはや目に入るだけで虫唾が走るゴキブリ以下の存在でしかなかったらしい。


「新しい彼氏はね、公務員なの。実家も太いし、何よりアニメのお話がとっても面白いのよ。貴方みたいに、よくわからない特撮ヒーローの話を延々と聞かされる苦痛もないしね」


 反論しようと口を開けた俺を、彼女は腕時計を一瞥して制した。


「あっ、いけない。これから彼と映画の約束があるの。高級車の助手席が私を待っているから、もう行くわね」


 彼女はバッグから一万円札を一枚取り出して、テーブルにパシッと叩きつける。

 そして、バッグの中からチャック袋に入った何かを取り出して、ポイっと一万円の横に放り出した。


 よく見るとそれは俺が彼女に誕生日に贈ったネックレスだった。


 目の奥がチカチカする。何かを言おうとしても空気が肺から出てこなかった。


「これ、今日の食事代とお釣り。あとの人生、頑張ってね。――じゃあ、さよなら」


 急展開。

 人間とは予想外の場面に出くわすと、思考が動かなくなる物らしい。

 彼女が振り返る事無く店内から消えたのを見て、ようやく俺の頭は思考を始めた。


 最近、そっけなかったのは、そういう事だったんだな!

 連絡は三日くらい既読にならないし、どこかに行くときも上の空だったし!


 クソビッチが!

 いつからだ? いつから俺を裏切っていたんだ?


 怒りのあまり、この場を駆け出したい衝動にかられる。

 が、視界の端に、さっき麗子が残していった手切れ金の塩沢が俺を見つめていた。


 ……一万円。


 一万円には罪は無い!

 俺は、冷めたドリアをかき込んで、一万円を鷲掴みにすると、何かから逃れるように庶民派イタリアンレストランチェーンを後にした。


 ◇


 それからは、先ほどのシーンに繋がるのである。


 信じられない!8の付く日は、パチンコデーじゃないのか?

 理不尽にフラれた俺に対して世間はもっと優しくするべきだろ?

 絶対、遠隔だ!

 マップアプリの店評価に遠隔疑いありって書き込んでやる!!

 ざまぁ!つぶれろ!ボケが!!


「……ふん、いいんだよ。これで」


 俺は雨の中、強引に思考を現代いまに引き戻した。

 あの一万円は、あのクソ女の怨念がたっぷり詰まった不浄な金だ。

 あんなもの、持ち続けていたら俺の運気まで腐っちまう。


 パチンコ台という名の賽銭箱に放り込んで、虹色の閃光と共に成仏させてやったんだ。

 むしろ清々した。

 感謝しろよ、元カノさんよぉ!


 ぐぅぅ~


 空腹で腹が鳴る。

 虚しい強がりも腹の足しにはならない。

 そうだ、今日は麗子と飯を食いに行くつもりだったから、帰っても何もなかったんだった。

 深い溜息しか出てこない。パチンコは麗子の手切れ金どころか、俺の生活費までを飲み込みやがった。


 何をするのにも金が要る。

 頭の片隅で、今日は日曜日でATMの手数料がかかるのにと苛立ちを感じながら、俺はコンビニを求めて街を彷徨うのだった。


 ◇


 コンビニはすぐに見つかった。

 やる気が無い日本人の若い男と、妙にテキパキ動く中東系の青年が店員だった。


「えーっと、カッパ蟹せん、カッパ蟹せん……」


 子供の頃からの定番、あの絶妙な塩気の揚げ菓子を探す。

 いつだって、茶色い炭酸飲料と、あの蟹せんが俺を癒してくれた。

 昔から、金が無い時には蟹せんにマヨネーズや味噌を付けまくって飢えをしのいでいたのだ。

 そう、それが今その時だ!


 だが、スナック菓子コーナーのどこを見ても、あの赤いパッケージが見当たらない。


 棚には、聞いたこともない無機質な名前の菓子が並んでいた。

 最近流行りのブイチューバーとコラボしているらしい。

 こんなパッと出のオシャンなお菓子では、高貴な俺の魂を満たすことは出来ない。


 歴史と伝統をもって、我が空腹を満たすには、あのど派手な蟹のプリントが必要なのだ!

 ジャガイモ薄揚げも悪くないのだが、空腹が満たされることはない。


「すんません、カッパ蟹せん、どこっすか?」

「はぁ? ……なんですか、それ。新しいお菓子ですか?」


 バイトの兄ちゃんは、気味が悪いものを見るような目で俺を見てきた。


「何言ってんだ、超有名だろ! 『やめられない、止まらない』の……」

「……うちはずっとこのラインナップですけど。聞いたことないですね、そんなメーカー」


 え?もしかして、これがジェネレーションギャップ?

 水戸黄門を知らないネクストジェネレーション?

 俺が驚愕の表情でカウンターの若者を見ていたら、鋭い目で睨み返された。

 こわ!


 店員の教育がなってない。

 俺は舌打ちしながら、唯一見覚えのあった『うめぇ棒』をひっつかんだ。


 まぁ、これで良いか。

 コイツもマヨネーズを付けると、腹持ちするしな。

 やはりうめぇ君は僕らの味方、ヒーローだ!


 しかし、そんなうめぇ棒も俺に恥をかかせてくれた。

 どうやらレジに出した小銭では金額不足だったらしい。


「……15円!? おい、これ10円だっただろ!」

 俺の至極まっとうなつぶやきは、目の前の店員の舌打ちでかき消された。

 俺は愛想笑いをしながら、うめぇ棒を一つ棚に戻してくる。


 逃げるように有料レジ袋を手に、コンビニを後にした。

 背中から「ありがとうございました~」の声が聞こえない、もう二度と来るかこんな店!!


 あー!!

 今日はむかつく事ばっかだ!

 彼女にフラれる!パチンコに飲まれる!蟹せんは買えない!うめぇ棒は値上げする!!


 うめぇ棒!お前は俺を裏切った!

 5円も値上げしやがって……。

 お客様のこともうちょっと考えろよ!


 俺はうめぇ棒にプリントされた、50周年のロゴを持ち上げる『うめぇ君』に毒づきながら、ボロボロのアパートの階段を上がる。


 後の人生で考える。


 俺の上場廃止寸前だった人生に、分岐点があるのだとしたら、きっとこの日この瞬間だったのだろう。


「……遅い!!」


 俺の部屋のドアの前。

 街灯の光を背負って、腕を組み、ムスーっとした顔で立っているガキがいた。


 7〜8歳くらいだろうか?

 お人形さんみたいな金髪の美少女が、俺のボロアパートに似つかわしくない真っ白なワンピースを纏い、仁王立ちしている。


「鈴木良平!!この世界の危機です!貴方には是が非でも伝説の株モンマスターになってもらいます!準備は良いですか?」


「え?」


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