04.依頼
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辺境の街、アルトレイン西部。
街道沿いの森に、低級魔物の群れが住み着いたらしい。
放置すれば旅人や商人が襲われる。
だから定期的に冒険者が間引きを行う。
よくある依頼だ。
そして現在。
その依頼をあらかじめ受けていた三人の冒険者達は、露骨に嫌そうな顔をしていた。
「……マジかよ」
大剣を背負った男――ガルドが、受付票を見ながら顔を引き攣らせる。
「よりによって曲芸師とか……」
「帰りたい」
短杖を持った魔法使いの女、ミリアが即答した。
その横では、弓使いのエルクが無言で俺を見ている。
警戒している目だった。
「そこまで嫌がる必要あるか?」
俺が聞くと、三人は同時に頷いた。
「ある」
「あります」
「あるな」
失礼な連中だ。
ガルドが頭を掻く。
「いや、お前なぁ……前に組んだ奴が泣きながら愚痴ってたぞ」
「なんて?」
「魔物の攻撃の中へ突っ込まされたってな」
「その方が効率が良かった」
「危険じゃねえか」
騒がしい。
俺は小さく息を吐いた。
「依頼は達成する。それで十分だろ」
「不安しかねぇ……」
ガルドが遠い目をした。
そのまま森へ向かう。
日は落ちかけていた。
赤い光が木々の隙間から差し込み、森全体を不気味に染めている。
斥候役を買って出たエルクが足を止めた。
「……来るぞ」
低い声。
直後。
森の奥から獣型の魔物が飛び出した。
灰色の毛並み。
異様に長い前脚。
口元から涎を垂らしている。
「おらぁッ!!」
ガルドが踏み込む。
大剣が振り下ろされる。
だが、魔物は素早かった。
横へ跳ぶ。
普通なら回避成功。
だが。
俺はあらかじめ光を屈折させていた。
魔物は安全だと思った方向へ飛び込み――。
ズドンッ!!
大剣が肩口へ深くめり込んだ。
「うおっ!? 当たりにきた!?」
ガルドが驚く。
だが終わらない。
魔物は血を撒き散らしながら再び跳躍した。
今度はミリアへ向かう。
「ちょっ――!?」
そこで俺は、再び光を屈折させる。
魔物の視界へ、“別のミリア”を映した。
少し横。
火球を構えている偽物。
魔物は迷わずそちらへ飛び掛かる。
「は?」
だが、そこにミリアはいない。
結果。
魔物は空振りした。
詠唱時間を稼ぐことができたミリアが火球を発射する。
獣系は熱へ反応しやすい。
魔物は反射的にそちらを向き――。
真正面から火球を食らった。
爆炎。
轟音。
熱風が森を揺らす。
「よし! 今の――」
ミリアが言いかけて止まる。
魔物がまだ生きていたからだ。
焦げた肉をぶら下げたまま、ゆっくり立ち上がる。
「……ほう」
興味深い。
俺は少し前へ出る。
魔物がこちらを見る。
唸る。
飛び掛かる。
だが俺は避けない。
「ソロモン!!」
ガルドが叫ぶ。
直後。
魔物の爪が、俺の顔面すれすれを通過した。
空振り。
完全に。
俺はその場から一歩も動いていない。
「……やっぱり視覚依存が強いな」
魔物の視界へ、ほんの僅かだけ屈折を入れた。
距離感を狂わせる。
結果、攻撃がずれる。
それだけ。
ただそれだけで、魔物の攻撃は当たらなくなる。
ガルド達は完全に固まっていた。
「お、おい……」
「今何した……?」
「いや待って、さっきから敵の動きおかしくない……?」
その時だった。
俺は少し思いつく。
「……なるほど」
試してみるか。
次の瞬間。
ガルドの横へ、魔物の姿を映した。
「っ!?」
反射的にエルクが矢を放つ。
だが、そこに敵はいない。
矢はガルドの肩当てへ直撃した。
ガァンッ!!
「いっっっってぇ!?」
俺は観察する。
味方誤認時の反応速度。
興味深い。
「お前ぇぇぇ!! 今なんかやっただろ!!?」
ガルドが叫ぶ。
俺は少し考える。
「実験?」
三人が本気でドン引きしていた。
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