21.聖騎士リオネル
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戦いが終わった工場跡地を、遠くから見下ろす影があった。
崩れた鉄骨の上。
雨で濡れた錆びた梁の上に、ひとりの男が静かに立っている。
聖騎士リオネル。
吸血鬼狩りを専門に動く聖騎士団の一人。
今回の一連の行方不明事件に、吸血鬼の関与を確信し、単独で偵察に入っていた。
「……想定以上だな」
低く呟く。
視線の先では、工場跡地が“戦場だった痕跡”だけを残して静まり返っていた。
吸血鬼の気配はほぼ消えている。
だが、それ以上に異常なのは――別の存在だ。
「人間……か?」
リオネルの目が細くなる。
そこに立っている二人。
「……あれは」
聖騎士の本能が警鐘を鳴らす。
敵ではない。
だが、“理解してはいけない類の何か”だ。
そのうちの1人の視線が、まっすぐこちらへ向く。
「っ……」
リオネルの背筋に冷たいものが走った。
距離はある。
気配も消している。
それなのに。
見えている。
いや、“見つけられている”。
ソイツは何も言わない。
ただ一瞬だけ、こちらを見て。
興味のないものを見るように視線を外した。
その瞬間、リオネルは確信する。
(……化け物)
手に汗が滲む。
剣の柄を握る手に、わずかな震え。
吸血鬼でもない。
魔物でもない。
それよりも曖昧で、もっと危険な何か。
リオネルは静かに息を吐く。
視線を外さないまま、ゆっくりと後退する。
これ以上は近づくべきではない。
直感がそう告げていた。
リオネルはその場を離れる。
背中に冷たい汗を感じながら、ただ一つだけ確信していた。
(一体何者なんだ…)
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