表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界なんて嫌いだ。  作者: うどんずるずるしたい
第二章 暗殺者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/66

59 胸中

 ◆◆ボスの仕事部屋 クライル◆◆


 ―――シンが独断専行した!?」


 「おお。やっぱり驚くよね」


 「あ、すいません……」


 いつもの打ち合わせ中。柄にもなく、大声を出してしまった。


 「でも心配しなくていいよ。後処理はなんとかなったし、標的もちゃんと始末できてる」


 「…それは、よかったです。しかし…」


 「うん、気持ちはわかるよ。これはちょっと危ない。私もシンに厳しく言っておいた」


 「…!そうですか」


 …流石にか。ボスがシンに甘いとはいえ、独断先行は許さないよな。


 「…その、ちょっと聞いてもいいですか」


 「なんだい?」


 「シンの処遇はどうするつもりですか」


 これは今までの失敗とは訳が違う。組織のルールを無視したんだ。しばらく仕事させないのは当然として、その間監視をつけるのが妥当だろう。となると、監視役を務めるのは―――


 「当面仕事は禁止にして、その間は後処理の勉強をさせようと思ってるかな。一人で後処理できるようになったら、また仕事してもらう予定」




 は?


 「か、監視とかつけないんですか…?」


 「どっちでもいいけど、今は別にいらないかな。特に怪しい様子も無いし」


 「…ッ!!」


 それだけ…!?勝手な行動して、組織に迷惑かけたやつの処罰が…その程度って…!!


 「失礼を承知で言わせてもらいますが…!…適当過ぎないですか、その処分は…!」


 「あ~…確かにそうかもしれないけど、今のシンはすごく調子がいいからなぁ…。ここで引き締めて、逆に壊れちゃったりしたらもったいない。それにようはさ、問題は後処理なんだよ。後処理さえできるようになれば、もうシンがどれだけ勝手にやっても―――」


 「そういう問題じゃないですよ!!」


 しまった、と思った。ボスの言葉を遮るなんて礼儀を欠いているにもほどがある。だが、もう止まれなかった。


 「仕事を成功させるためにできる限りを尽くす、それって当たり前のことじゃないですか!!あいつは、シンはそれを無下にしたんですよ!?実行役があいつで、後処理が俺、そういう役割分担をしていたのに、あいつは未熟なくせして全部勝手にやった!!…しばらく張り込むからスタンバってなくてもいいって、あいつ俺に言ったのに!!」


 「………」


 「必要なんですよ!!やっちゃいけないことやったやつには、罰が!!なのに…どうして……」


 ボスは何も言わない。怒る様子も無ければ、悲しむ様子も無い。微かな反応すらないものだから、言わないように努めてきた言葉が、出てしまったのかもしれない。


 「ボスは…シンに甘すぎる……」


 もう、目線を合わせることはできなかった。下を向いて、きっと叱られるだろうなと思いながら、ボスの言葉を待った。


 「…ごめんね、クライル」


 「……え」


 肩にそっと手を置かれながら、ボスにかけられたのは想定外の言葉。一瞬思考が止まって、呆然と…してしまった。


 「………あ、いや、こちらこそ…すいません」


 「いやいや、クライルは悪くないよ。私が少しクライルを信用しすぎた。君だってまだ子供なのにね」


 「………」


 「仕事もできて、頭もいい。あまりにも頼もしいものだからさ、ついつい、クライルならわかってくれるだろうと私が甘えてしまったんだ」


 「…そ、そうですか」


 「…ふふ。本当に立派になったよね。何年前だったか…君をスラムで拾ってから、もう見違えたよ。今では私の一番信頼するパートナーだ」


 「…い、いや、そんな…」


 「でもね…君ではシンを越えられない」


 「……え」


 なんで、急に、またそいつの話に…。


 「厳密に言うなら、()()()ではシンを越えられないんだ」


 「どうして…そんなこと…」


 「言っておかないと、と思ってね。私が、シンを特別扱いする理由をちゃんと教えるために」


 「り、理由…?」


 「そう、シンが特別な理由」


 「……なんですか…それって」


 「…彼にはね、気配が無いんだ」


 ………気配が、無い。


 「そ、それだけですか…?」


 「う~ん…それだけと言えば、それだけかもしれない」


 「気配が無いだけで、特別扱いなんですか…?気配を無くすなんて、ボスでも、俺でもできるんじゃ……」


 「無理だよ」


 ボスが、はっきりと言い放った。


 「気配を無くすのは無理だ。私たちがやっているのは、気配を無くすのではなく隠すこと。足運び、呼吸、心音、それらの技術を磨くことで、気配を隠しているだけにすぎない」


 「でも、それで十分なのでは…?ボスも俺も、今まで多くの暗殺をこなしてきたじゃないですか」


 「確かに十分だよ。普通の人間相手ではね。ただ、隠した気配すら見つける化け物がこの世界にはいる」


 「化け…物…」


 「魔法使い(ソーサラー)だ」


 「……!」


 「彼らに対しては、どれだけ気配を隠しても無意味。程度に差はあれど、接近すればすぐに気配を察知される。…だから、私やクライルでは、魔法使い(ソーサラー)の暗殺は難しいんだ。できないとまでは言わないけど」


 「………」


 「でもシンは違う。そもそもの気配すら持たない彼は、魔法使い(ソーサラー)の暗殺において圧倒的に有利だ。それで、私はシンを特別扱いしている」


 「…そう…ですか。…確かに、魔法使いを殺せる暗殺者は…貴重ですもんね」


 「うん。それにね…私の夢なんだ。魔法使い(ソーサラー)を殺せる暗殺者を育てることは。数十年前に、師匠と約束した夢」


 ボスの…師匠…か。グラトアニアにいるんだっけ。


 「だから、しばらくシンの特別扱いには目をつぶっていて欲しい。期待してるのはシンだけど、信頼しているのはクライルだ。それは変わらないから」


 「わかりました」


 まだ、心には少しモヤモヤとしたものが残っていた。多分、シンの処遇に俺はまだ納得できていないんだろう。でも、以前よりは体がだいぶ軽くなったような気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ