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反乱鎮圧

目の前には野獣と化した3万の反乱軍。そのはるか後方には反乱軍首脳部がいる王宮。私は南門の屋根に立ってそれを眺めている。青を基調とした軍服が家の赤い瓦屋根とよいコントラストをなしている。3万もいるとまるで青い帯が道を装飾しているように見える。

「豆蔵、市民は避難しているんだよね」

「ハイ……ミコト様。市民ハ戦火ヲ避ケルタメニ郊外ヘト脱出シテイマス」

「くくく……と言うことは思う存分、虐殺ジェノサイドできるわね」

「……」


 豆蔵は何も言わない。このパンドラ地区に攻撃をしてくる奴らは殺されても文句を言えないことを企んでいるのだから、私の悪魔発言を許容しているらしい。

 問題は3万もの兵士をどうやっつけるか。魔力無限大の私が最強魔法を知っているのなら、簡単なのであるが、生憎、知っているのは初歩魔法だけだ。

 だが、初歩魔法でも私くらい賢い頭があれば、何の問題もない。、そして昨晩のうちに準備もしてあった。

 後はそれを無慈悲に実行するだけだ。私は魔紙を召喚する。

「我、記せし世界を欲する」

 火矢を選択した私は例のごとく倍プッシュした。空には無限の炎の矢が現れる。


「司令官、攻撃準備が整いました」

「うむ。それでは一気に片付けるか。全兵士に伝えよ。パンドラ地区を蹂躙せよとな。ただ、一部、生け捕りにするよう厳命されている女どもがいる。そいつらには指一本触れるな。触れれば打ち首どころじゃないぞ」

 そう反乱軍司令官は副官に命令を伝える。桜蘭亭のメルセデス、コーデリアを始め、高級妓楼のロイヤルレディを生け捕るように命令されている。全員、お偉いさん方の指名である。

 この司令官もそれ以外のロイヤルレディを何人かお持ち帰りをする予定で、別途、憲兵隊にリクエストをしていた。

「さあ、宴の始まりだ!」

「た、大変です!」

 突然、斥候に出ていた兵士が本部に駆け込んできた。息を切らして顔は蒼白。とんでもないことが起きたことを物語っていた。

「どうしたのだ?」

「う、裏切りです!」

「な、なんだと!」

 司令官は驚いた。この期に及んで裏切りが起こるのは想定外である。そもそも、勝利がほぼ確定でこれから略奪するという美味しいエサが並んでいる状態で勝ち目のない戦いに身を投じるわけがない。

「ど、どういうことだ!?」

「前線の第3中隊、第12小隊等、2000名ほどの部隊が我が方に攻撃を仕掛けてきています」

「な、な、ありえん。その部隊はこの反乱の中心だったではないか。指揮官もこてこての反国王派だったはず」

「それがどの兵士も、ミちゃん万歳などと叫んでいるそうで……」

「……ば、ばかな」

「司令、幸い、裏切った奴らは少数です。全軍の動揺が広がらないうちに鎮圧しましょう」

 そう副官は進言する。司令官も頷くしかない。3万のうちの2千ほどだ。対局には影響がない。だが、さらに伝えられた情報に唖然とするしかなかった。

 空に無数の火の矢と氷の矢が現れ、これからパンドラ地区へ突入する全部隊の頭上から雨のように降り注いだというのだ。

 慌てて本部の建物3階からパンドラ地区を見る司令官。無数の火矢と氷矢が雨のように次々と降り注いでいる。

「な、あれは……魔法か!」

「魔法です……ですが、あのような数を撃てる魔導士などこの世にいるはずがありません」

「た、大変です!」

「こ、こんどはなんだ!?」

 火矢と氷矢の被害状況も分からず、混乱中の司令官にさらなる悲報がもたらされる。竜牙兵がどこともなく現れ、建物に避難していた兵士を掃討し始めたと言うのだ。しかもその数が異常。正確な数は分からないが、2千とも、3千とも言われる大部隊なのである。

「竜牙兵は魔法で操るのだぞ。そんな数を動かせるはずがないではないか!」

「司令官、事実です。前線は大混乱。兵士共は逃げ散っています」

「火矢と氷矢の雨でわが軍の損害は甚大。ほぼ3分の2は戦士したとの報告が……」

 司令官は床に座り込んだ。周りの騒ぎが遠くに聞こえる。

「ミコト様、作戦ドオリデゴザル……」

 豆蔵は戦いの様子を逐一、報告に来る。私はそれを満足そうに聞くだけであった。反乱軍に対する私の戦い方は3つ。

 まずは『魅了』の魔法で部隊のいくつかを昨日のうちに洗脳しておいた。先頭が始まると同時に反旗を翻すのだ。これで敵は大混乱に陥る。

 そして大部隊の頭上から火矢と氷矢を放つ。氷矢を放ったのは町を大火にしたくなかったため。目的は敵戦力の壊滅。町を火災にするとパンドラ地区にも影響がある。

 そして竜牙兵による掃討作戦。火矢や氷矢を避けようと建物に避難した敵兵を彼らで殲滅する。市街戦なら恐怖を知らない魔法生物はうってつけである。

 竜牙兵も神様からもらった牙を投げて、魔法で倍化したら無限に増えることが分かった。適当に倍々を繰り返し、3千ほどになったところで兵士の殺害を命じた。大混乱に陥った敵兵を一人残らず狩るだろう。

「ふふふ……これで3万の敵部隊は壊滅だわね」

「ミコト様……敵ノ頭ハドウシマスカ?」

「もちろん、狩り取るわ」

 今の私は勇者キラーラビットである。この姿のまま、豆蔵と共に敵司令部へ乗り込み、司令官を暗殺。ついでに王宮にいる反乱軍の首謀者も暗殺しておこう。これにより、アンドレ少年の陣営が大逆転で勝つことになるが、仕方がない。

 

 身のかかる火の粉は払うしかないのだから……。


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