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止まった時計の針  作者: Tiroro
中学二年生編 本編その2 壊された少年の心
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第105話 知らない

いろいろあってお休みしていました<(_ _)>

 うちの両親は、共働きをしている。

 そのため、ポストに届いた郵便物を回収するのは専ら僕の役割だ。


 郵便物を取り分けていると、その中にやたらとチープな感じのいかにも『プリンターで自作しました』的なチラシのようなものが目に付いた。

 そこには『小岩井主催ゲーム大会のお知らせ』とでかでかと書かれ、謎のゲームキャラだろうか……そんな感じのキャラが手から波動のようなもの出している絵が描かれていた。


 たしかに追って連絡するとは言っていたが……昨日の今日じゃないか。

 いや、ゲームは嫌いじゃないが……まさか、本気で言っていたとは思っていなかったし、こんな内輪のゲーム大会に誘われるほどあいつと仲良くなった覚えは無いのだが……。


 昨日のこともあって、今日は少し中野(ぼく)について調べてみるつもりだったが、渡辺の時のこともあるし、せっかくの誘いを無為にしてしまうのも何だか悪い気がする。

 少しだけ顔を出して、中野(ぼく)の調査はそれからでもいいか。


***


「ようこそ、男の世界へ」

「……帰るぞ」

「待ってよ、かっちゃん!」


 着いて早々、よくわからん言葉で出向かいをされたところで呆れていると、奥から石川の声が聞こえてきた。

 そういえば、こいつら友人同士だったか。


「待ってたわ、宇月君」


 そして、この場に似つかわしくない雰囲気で椅子に座り佇んでいたのは河村さん。

 そういえば小岩井の彼女だったな、この子。

 いや、僕が言うことでもないんだが、何で小岩井と付き合ってるんだこの子は。

 そもそもこれで、早速『男の世界』では無くなったわけだが……。


「とりあえず顔を出してみたら、まさか石川達まで居るとは思わなかった」

「タイマンでゲーム大会するわけないだろ」


 この規模でもとても大会とは言えないんだが……。


「かっちゃんは何のゲームが好きだったっけ?ドラ○エとか?」


 RPGで何のゲーム大会するつもりだ。


「馬鹿野郎! こういう時はな、格ゲーって相場が決まってんだよ!

 なあ、かっちゃんよ!」


 言ってることには賛成できるが、いつの間にお前まで僕をかっちゃんと呼んでるんだ。


「格ゲーで僕に勝つつもりというなら、お前は余程ゲームに自信があるんだな」

「手加減してください」


 ……こいつと話してるとまるでペースが掴めん。


「宇月君、悪いんだけどお猿さんと少し遊んであげてくれる?」


 彼氏をお猿さんって……君、本当に小岩井(こいつ)の彼女なんだよな?


「かっちゃんとゲームで遊ぶのって初めてだよね!

 俺すごく楽しみにしてたんだ!来てくれてありがとう!」

「まあ……そうだな。じゃあ、対戦順とかはそっちで決めてくれ。

 どんなゲームでも割と得意だから、好きなゲームを選んでくれて構わん」

「言ったな? あとで吠え面かくなよ?」


 そう言うと、小岩井はいそいそとゲームの準備を始めた。


***


 そして、小岩井主催のゲーム大会は、僕の優勝で幕を閉じたわけなんだが……。


「悔しいです……」

「ふふっ……無様ね、恭佑」


 何故か彼氏が悔し涙を流しているというのに愉悦の表情を浮かべる彼女。


「彼氏が負けたのに慰めてやらないのかい?」

「恭佑の情け無い姿も含めて全てを手に入れたい。

 その高尚な気持ちが宇月君には理解できないの?」

「いや、理解できん……」


 この子も大概変な子だな……案外お似合いのカップルなのかも知れない。


「優勝商品のおいしい棒全種類詰め合わせセットだ。

 ご当地限定も加えてある。受け取れ」

「……どうも」

「いいなー、かっちゃん。

 明太子味だけ少し分けて欲しいなー」

「なんなら全部やるぞ」

「やったー! さすがかっちゃんだ!

 心の友よ!」

「何て心の広い奴だ!

 これから兄貴と呼んでいいですか?」

「それは勘弁してほしい」


***


 小岩井宅を出て、僕は中野(ぼく)を見かけたあの公園に向かった。

 時間帯も、ちょうどあのくらいだ。

 あいつらは現れるだろうか……。



 少し待っていると、遠くからバイクの音が聞こえた。

 どうやら、性懲りもなくあいつらは現れてくれたようだ。

 それにしても、不良というのはどうしても公園や河川敷が好きなんだな。

 今回は、あいつらのその習性に感謝といったところか。


 今日は中尾とかいう奴はいないようだが……。

 不良達は公園に着くとバイクを吹かしながらくだらない話をし始めた。


「中尾のやつ、まだ寝込んでんのか?」

「よっぽど昨日の奴にやられたのが怖かったんじゃないっスかね」

「情けねー奴だ」


 僕のことか。

 しかし、そんなにやりすぎたか?

 ちゃんと倒れるとき頭を打たないようにしてやったんだけどな。


「まあ、今度会ったら俺の鉄拳をぶち込んでやるけどよ」

「徳田さんのパンチ食らったらあいつもおしまいっスね!」


 いや、もしそうなっても僕がお前をおしまいにしてやるけどな。


「中尾君のことならもういいよ。

 あんな役立たず、契約だってもう切るつもりだし」

「中野さん!」


 中野さんだと!?


「それよりさ、これ見てよ」

「これって……スタンガンっスか!?

 マジぱねー! 漫画とかでよく見るやつじゃないっスか!」


 中野(ぼく)だ……スタンガンとか、何やってんだあいつは……。


「これがあれば喧嘩だって負けないし、恐喝、カツアゲ……何だってできると思わない?」

「そっスねー!

 徳田さんが気になってるっていう女を気絶させて攫うことだってできるじゃないっスか!」

「そうだな……中野、これは幾つあるんだ?」

「10がせいぜいだよ。

 それでも、君達なら有効に活用できるだろ?」

「ああ……。早速だが、使わせてもらっても構わないな」

「いいよ。ああ、ただし僕に使っても無駄だからね。

 試してみてもいいけど、もちろん対策はしてあるから」

「わかってる。そもそもお前に使う気などないがな」


 ……中野(あいつ)は、いったい何をやってるんだ?

 奴等の言ってる事は、不良の域を超えている……。中野(おまえ)にいったい何があったんだ。


「これがあれば、昨日邪魔してきたあいつだって倒せるでしょ?」

「こんなものに頼らなくても倒せるがな」


 今すぐにでも出て行ってあいつ(中野)を捕まえてやりたいところだが、さすがの僕も10ものスタンガンを相手に無事で済むという自信は無い。


 クソッ……渡辺の時に贈り物(ギフト)を使ってしまったことを悔やむ時がこんなに早く来るとは……。



 その後、不良達は爆音を鳴らしながら公園を去っていった。


 何なんだこれは……。

 僕は、こんなのは知らない……。

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