4-6.マジでオレが出るの!?
「おいスタイア!なんでオレが魔獣との戦闘の最前線で戦わにゃならんのだ!?」
「王は王国軍の最高司令官だからです。司令官自らが先頭に立って兵士を鼓舞するのも王の仕事です」
「司令官なら後方から指示を出すもんだろうが!?」
「最前線にいる方がタイムロスなく指示できるじゃないですか?それにリアルタイムで状況把握ができます」
「そりゃそうだけど!うわっ!?コイツ!こんくそがぁーーーー!!(ザシュッ!)はあっ!はあっ!これならどうだ!王水ぶっかけ!!」
「そうそう。その意気でやらないと、王国民が安心できませんよ」
「その前にオレを安心させんかぁーーーー!!」
今日は魔獣狩りの日だったんだ···。
こうやって定期的に魔獣を間引く事で、スタンピードなる魔獣襲来を抑え、かつ街道に魔獣を可能な限り出没させないようにしているのだ。
まぁ、それなりの兵力は投入している。ある程度実戦演習みたいなものだ。
しかし!これは遊びではない!油断してた兵士はもちろん大ケガしていたな。
···ちなみにオレも多少ケガしました。金属の鎧ってめっちゃ重いな!よくこれ着て動けるよなぁ〜。まるで某アニメのような重しを着けた修行をしているような気分だぞ···。ゲームとかだとカッコいい!って思ってたけど、全身つけると動きにくいしすぐに疲れちまうんだよ!
···そう。オレは前線で戦わされたんだよ!スタイアめ!本当に死ぬかと思ったんだぞ!!
というわけで、魔獣退治を終えたオレは床に臥せってしまったんだ···。症状は全身筋肉痛だ···。
「うぅ···、動けん···」
「情けないですね。あの程度の戦闘でこの体たらくだと、隣国と戦争になったら負けますよ」
「···おい?もしかして、戦争になったら今回みたいにオレに前線に立てって言うつもりか?」
「言うつもりではなく言いますが?」
「無茶言うなよ!?戦争は相手の大将やられたらそこで終了だぞ!」
「やられなければいいんですよ」
「そんな某赤い彗星さんみたいな事できるかぁーー!!」
「できるできないに関わらず、前線に立つのは王としての義務です。ぶっちゃけ、相手の王を倒してくれればそれで終わりますから」
「···だったら兵士いらんだろ?王様同士ガチンコでって話になったら」
「じゃあリストラしますか?」
「せんわ!」
まったく···。王様って、もっと守られる立場じゃねえのかよ?
そりゃ確かに王様ってのは国のトップだ。会社で言えば社長だ。
···よくよく考えれば、部下の不祥事で頭下げてるのって、最終的には社長だよな?部下の責任は上司、そして社長の責任って言われるけど···、もしかしてそのノリでオレは最前線で戦わされるのか!?
そう考えたらつじつま合うんだけど···、なんか納得できんぞ!
5日後、オレの全身筋肉痛は一応動ける程度に回復した。一応公務を再開するんだが、朝イチの会議でこんな話題が出た。
「署長!···じゃなかったっすね。王様!今回の遠征討伐っすけど、王国民から心配と感動の感想がたっくさん来てるっすよ。支持率が大幅に上昇したっす!」
「···へ?ベクトさん?どういうことだってばよ?」
「今までの王ってこういった戦いにはまったく出なかったっすよ。ところが今回自ら最前線に行って負傷したって新聞屋に書かせたっすよ。そしたら『王自ら王国民を守ろうとしてるなんて!』とか『王国民のためなら傷を負う事もいとわないとは!』とか『負傷したですって!?大丈夫かしら···?』って感想が上がってるっすね」
「···おい、スタイア?お前、『王は自ら先頭に立つ』っつったな?」
「はい」
「あれはウソだったんだな?」
「いえ?ホントですよ。これまでの王がやる気なかっただけです」
「そういう問題じゃねえよ!?オレを危険な目に遭わせやがって!」
「ですが、こうして王国民の支持率はうなぎ登りですよ。計画通りです」
「···もしかして、世論操作するためにオレを最前線に行かせたんだな?」
「そのとおりです。これである程度ムチャやっても支持率は下がりにくいでしょう」
「そうっすね!今なら税率上げても文句はそんなに出ないんじゃないっすか?」
こいつら···!完全にオレをダシにしてやがるな!?王国民たちにオレが最前線で戦って、王国民たちを守るって印象操作して、さらには筋肉痛で寝込んでいるのも『王国民を守るために負傷した』って情報にして流しやがったんだ···。
筋肉痛って回復魔法である程度治るのにやりやがらなかったのはそのせいかよ···。自分らがやりたい放題したいからだな?
「はぁ〜···。情報操作やり過ぎるなよ?バレたらおしまいだぞ?」
「抜かりないっす!バレたら潰せばいいっす!」
ベクトさん···。なんか性格変わったなぁ〜。権限ありすぎるからかな?
とまぁ、このように城では朝イチで情報共有のための会議を開いているんだ。国の状況を把握するのは王としての仕事だからな。
まぁ、情報量が多いと会議が長引くので、タイトルだけ黒板にあらかじめ書き出しておいてもらって、オレが気になったトピックスを拾い上げて詳細を聞くってなかんじで、30分ほどで終わらせてる。
長時間会議やるなんて時間のムダだ。さっさと持ち場に戻って仕事してもらったほうがいいに決まってる。『事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!』って有名なセリフあるしな。まぁ事件は起きたら困るので、業務だけどな。
「では次の遠征ですが、明日行います。今度は王都の南の領地ですね」
「···え?もう行くの?」
「はい。前王では防衛予算が枯渇していたので、討伐回数が少なく魔獣が繁殖していますから」
「冒険者に任せないの?」
「任せてますが、そちらの予算も限りありますから。やはり軍で動いたほうが1体あたりのコストが安いです」
「···今回もオレ行くの?」
「当然です。とっとと行ってさっと片付けてきましょう」
「ちなみにスタイア?今後の予定は?」
「来月末まで毎週討伐の予定をすでに入れています。ガンバ」
「···オレ、もうもたんかもしれんわ」
「やる前から弱音吐いてどうするんです?やってから弱音吐いて下さい」
「もうやっただろうが!?」
というわけで、地獄の魔獣討伐ツアーが始まり、毎週全身筋肉痛に襲われたのだった···。
最終話で出たエピソードの裏側でした。
まぁ、王様自ら出陣しちゃったらイヤでも士気が上がりますからね。これも王国民を守るための活動ですよ。
しかしベクトさんは変わっちゃいましたね〜!人間、環境が変われば適応するものなんですよ。
さて次回予告ですが、隣国からアポなしで面会の要請が入りました。本来なら事前にアポ取るのが常識なんですが、どういった用件なのでしょうか?
それではお楽しみに〜!




