表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
窓辺の椅子  作者: ごはん
PR
1/2

窓辺の椅子

会社を辞めてから、外に出るのが怖くなった。

自分がうまくいかなかったのは全部自分のせいだと思っていた。

職場では何をしても空回りし、誰かと話そうとすれば変な空気になる。

「もっと考えてから行動して」

「空気を読んで」

そんな言葉が、皮膚に刺さるように残っていた。


ある日、市の広報紙で見つけた「こころの相談室」という文字。

申し込んだのは勢いだった。正直、何かが変わるとは思っていなかった。


カウンセリング室には、観葉植物と窓際の椅子。

カウンセラーは、名乗ったあと、静かに言った。


「お話できるところから、でいいですよ」


何を話せばいいのかわからなかったが、とにかく今までのことを少しずつ言葉にした。

最初は泣いてしまった。次は言葉に詰まった。

でも、否定も助言もされないその空間で、次第に、自分の声が聴こえるようになっていった。


「私は…ただ、誰かとちゃんと繋がりたかっただけかもしれません」

「それは、とても自然なことですよ」

カウンセラーの言葉に、初めて誰かに許されたような気がした。


何回か通ううちに、カウンセラーはこう尋ねた。

「あなたにとって、安心できる場所ってどこですか?」


すぐには答えられなかった。

でも、数日後、ふと家の窓辺の椅子に座ったとき、思った。

「ああ、ここだ」

外の光がカーテン越しに優しく差し込む場所。

ここでコーヒーを飲んで、ただ空を眺めているとき、自分はほんの少し安心できる。


その日、カウンセラーにそれを話した。

「窓辺の椅子、いいですね」

「はい。誰とも話していなくても、誰かと繋がっているような気がします」


春が来て、少し外に出てみようと思った。

いきなり誰かと話すのではなく、まずは近所の公園まで歩いて、ベンチに座るだけ。

以前なら、それさえ怖かったけれど、今は違う。


「繋がるのに、無理をする必要はない」

そう教えてくれた時間が、私の中で確かに息づいている。


外の風が、少しだけ優しく感じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ