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 営業の藤沢の顔が近づいてくる。


 いわゆる「壁ドン」の状態だ。


 給湯室。


 2人だけ。


「震えてる?」


「やめてください」


 強く言い過ぎてはダメだ。


 目をじっと見て、望みを持たせる。


 やっと食いついてきた。


 逃がさない。


「やめてください」


 もう一度。


 声は怯えてる感じ。


 これが大事。


 そして、眼は拒否しない。


「押せばいけるぞ」と思わせる。


 来て。


「かわいいな」


 藤沢の唇が、私の唇に触れた。


 かかった。


「やめてください!」


 強く突き飛ばす。


 突然の激しい抵抗に、藤沢は明らかに動揺した。


「大声出しますよ」


 私の追い討ちで諦めた。


 バツが悪そうに出ていく。


 上手くいった。


「吉岡」


 突然、私の名前を呼ぶ声。


 誰の声か、すぐに分かった。


 同期の早乙女。


 見た目が平凡な私と違って美人だ。


 性格も正反対。


 私は暗く、彼女は明るい。


 給湯室に入ってきた早乙女は、私をにらみつけた。

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