第2章 天空の反転刃
カイは木々の間を軽やかに跳ねながら、黒森のより深い領域へと進んでいた。
「ん? 気配が増えたな」
前方から感じる魔力の波動。どうやら今度はただの狼ではない。
中型魔物――『黒牙の猟犬』が五匹と、その奥に魔力をまとった影が見える。
「ギルルル……!」
五匹が一斉に飛びかかってきた。さっきより明らかに連携が取れている。
カイは笑みを浮かべ、地面を蹴った。
「反転!」
自分の体を反転させ、後方へ少し飛ぶ。
即座に二度目の反転。前方への加速が爆発的に増し、猟犬の間を高速で駆け抜ける。
「遅い!」
双剣が閃き、二匹の首を同時に斬り飛ばす。
残り三匹が即座に背後から襲いかかってきたが、カイは近くの太い木の幹を蹴り上げて再び反転連鎖。
木から木へ、まるで森が自分の遊び場であるかのように跳躍しながら敵を翻弄する。
しかし――
「これは……!」
奥から現れたのは、猟犬のリーダー格。体長三メートルを超える巨体『黒牙の王』だった。
その巨体が跳躍し、カイの頭上を狙って急降下してくる。
普通なら避けきれない高さからの攻撃。
だがカイは逆に、大きく跳び上がった。
「落ちろ!」
落下を開始。重力に身を任せ、速度を一気に上げる。
黒牙の王が目前に迫った瞬間――
「反転!」
体が一瞬で向きを変え、猛烈な勢いで上空へ跳ね上がる。
黒牙の王は勢い余って地面に激突し、隙だらけになった。
「ここからが本番だよ」
上昇中、カイは双剣を構え直す。
高度が最高点に達しかけたところで――
「反転!」
再び自分の体を反転させた。
上昇の勢いが一瞬で下降の勢いに変わる。
まるで流星のように、真上から黒牙の王の背中へ一直線に落ちていく。
「反転スキル・応用技……『天空反転刃』!!」
ズドンッ!!
双剣を交差させた状態で、最高速度の急降下斬りが黒牙の王の首筋に炸裂した。
巨体が地面に叩きつけられ、森全体が震えるほどの衝撃。
「ギャオオオオ……!」
黒牙の王が苦悶の咆哮を上げる。
その隙に残りの猟犬たちが飛びかかってきたが、カイは着地と同時に木を蹴って再び上昇。
落下→反転→上昇→反転→急降下のコンボを繰り返し、残りの敵を次々と上空から叩き斬っていく。
森の中が、まるで空中戦の舞台と化した。
「はぁ……はぁ……」
最後の猟犬を斬り倒し、カイは大きな木の枝に腰掛けて息を整えた。
汗が滴り落ちるが、顔には満面の笑みが浮かんでいる。
「やっぱりこのコンボ、気持ちいいな……
落下の勢いを反転で上空に跳ねて、
上昇中にまた反転して急降下斬り。
魔法じゃ絶対真似できない、俺だけのスタイリッシュバトルだ」
彼は枝から身を乗り出し、森の奥を見つめた。
「あそこに魔力の塊……どうやらボスクラスがいるみたいだな。
魔法持ちかもしれないけど……」
カイは双剣を握り直し、軽く木の幹を蹴った。
「まあ、物理だけなら負けない。
来いよ、どんな相手でも――」
反転の疾風が、再び森を駆け抜ける。
(第2章 終わり)




