29-1 十三日目の予想外 結束
「あれ、一人足りねえぞ」先崎がグループの人数を数えると「ああ、チビのあいつがいねえんだ。またどっかで転んでんのか?」
「誰が来てないの?」神経質になっているあやね。いないという言葉に敏感になっている。
「ああ、華河さんたちは会ったことあると思うけど、この前、コンビニのところで桧山の見舞いを頼んだ時、華河さんと初めて会ったときの、あのミニチュアダックスがブラックタンというちょっと高値で取引されてる犬種だって、犬に詳しい奴がいたの、覚えてる?」
「ああ。あの大人しそうな感じの子でしょう?」
「私も覚えてるよ。声が小さくてちょっとイラってきたけど」
「ああ、なんか、そんな事ってる奴、いたね」
「アイツがまだ来てねえんだ。おい、どこ行ったかわかるか?」
「あれ、どうだった?」隣のメンバーに聞くと「あいつ、駐車場のほうを見てくると言って、外に出ていかなかったか?」
「ああ、そういえば、これから来るかもしれないと言って出てったぞ」
「なんでこれから来ると思うんだよ。あとから来た華河さんたちがいるってのに」
「とにかく、見付けられなかったら、そのうちくんじゃね?」
「そうかもな」
「今は、友達その一がどこにいるのか、突き止めることが最優先!」携帯を持つ友達その二が話に割りこむ。
「話を進める前に、一つ聞いてもいいか?」先崎が遠慮がちに言うと「なに!」苛立つ友達その二がぶっきらぼうに返す。
「あのさ、余計なことかもしれねえけど、気になってさ」
「だからなに!」
「なんで、名前で呼ばすに、友達その一、その二、その三て呼ぶんだ?」
「そんなこと知りたいの?」
「うん」
「……行方不明の友達その一の名前は一之瀬。その二の私は二宮。隣のその三は三条。だから、ちゃんと名前の一部を呼んでる」
「……それ、すげえ」
「華河さんはなんて呼ばれてるの?」セイジツが聞くと「あやねだ」友達その二が代わりに答え「手を出すな」
「エエッ!」
「あのね、私たち、ユリじゃないからね」
「エッ? アッ、そうなんだ」
「お前、何を勘違いしてるんだ?」
「その二。言い方きついよ」あやねが注意するとその二の動きが止まり「……そうか。悪かった」セイジツに謝ると「アッ、いや」慌てて答える。
「とにかく、これからどう動く?」その三が話を戻すと「絶対とは言えねえけど、その一が病院にいる確率は少ないぞ」先崎が話を進める。
「グループのメンバーが一通り見てきて、いないってことだからな。病院に勤めてるとか知り合いがいるって言うのなら、まだどっかにいる確率はあるけど、そうじゃねえだろう?」
「そんな話、聞いたことない」あやねが答える。