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アーモのネイルサロンへようこそ  作者: 夏八木 瀬莉乃
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18-1 九日目の久し振り

 

「あやね、昨日の練習後、なにがあったんだ?」

「人が変わった? 性格が変わった? 人格が変わった……?」

「何かが()りついた?」


 放課後の練習。

 いつもよりあやねの気合が入っているので、友人たちが不審に思う。

 休憩時間にあやねの周りに集まると、ミネラルウォーターを飲みながら理由を聞く。


「そこまで言う?」


「そこまで言うほど、別人みたいに昨日と違うからだよ」

「宝くじに当たったか?」

「好みのイケメンを見付けたの?」


「エエッ!」


「……あたり?」

「らしいな」

「これは問題だよ」


「あ、いや、それは……」


「あやね。どこのボケナスだ?」

「あやねに相応しいか審査する」

「切る」


「なんてこと言うの!」


「まじめな話。本当に気になる奴ができたの?」

 三人であやねに迫ると「あ、いえ、その……」挙動不審になるので「いるのか」

「らしいね。これはゆゆしき問題だよ」


「あ、だからね、その……」


「運動神経バツグンだろうね?」

「イケメンだろうな」

「秀才だよね?」


「なんでそんなにハードルあげるの!」


「あたりまえでしょう? あやねの相手だよ」

「そのくらいは最低限の条件だ」

「まあ、人間じゃ無理だよね」


「どういう意味?」

( でも、無茶な条件、クリアしてるかも……)


 その後、練習が終わると急いで着替え、セイジツと会うために、座山駅の南北連絡通路へ急ぐ。


 そんなあやねの後ろ姿を見送る友人三人は「付ける?」

「それは友達としてダメだ」

「でも、相手がモヤシのようなヒョロヒョロだったら?」


「あのあやねが、そんな奴を気に入るとは思えないよ」

「ああ、そうだよな」

「だからこそ、どんな奴か気になるんじゃないの」

「よし、行くぞ」


 そんな事になっているとは知らないあやねは、途中にあるコンビニへ行くと、アーモが駐車場の端に置いてある、専用と思われるベンチに座っていた。


「アーモ君、お待たせ!」走り寄っていくと、やっと来たかとでもいうようにゆっくり起き上がり、大きく伸びをする。


「ごめんね。待ったのかな?」しゃがむと「……ワン、フワアアア」大きく欠伸をするので「昼寝してたの?」頭を撫で「じゃあ、早く行こう」抱き上げるとまたナップザックに入れて、駅へ向かって走る。


「あれが、いつも会いに行くワンコか」


 コンビニの向かいの道路横にある垣根の陰から、友人三人があやねとアーモを観察する。


「ミニチュアダックスだね。私も犬が好きだから、頭を撫でたい」アイドル好きが言うと「私の頭を貸してやるぞ」小柄が頭を傾けるので「あんたはいいわ」



 あやねがアーモをナップザックへ入れて歩きだすと「ワンコを連れてどこ行くんだろう?」

 友人三人も間をおいて付いていき「ワンコの飼い主のところへ行くんじゃないか?」


「じゃあ、誰があのワンコをコンビニまで連れてきたの?」

「……盗んだんじゃないよね?」


「あやねがそんなことするわけないじゃん」

「だよね」


「……行こう」


 そして、さらに彼女たちと距離をおいて付いていく影が、ゆっくりした足取りで歩いていく。


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