十一話 後日
最終話です。
今までの半分以下の長さというとっても短いものになってしまいました。
実に呆気なく舞台の幕は下りた。
亡国の女王は退場し、壇上には魔術師だけが残った。
あと何回同じ舞台を演じればいいのだろう?終わりはいつも単調で、かつては居た観客はもう居ない。
いつまでも、いつまでも、変わらない、変わらない。
感慨などないし、罪悪感もない。では、あるのは何だろう?
歓喜、憎悪、悦楽、悲哀、後悔・・・・・・。どれもしっくりくるものはない。
「ふむ」と彼の魔術師は独りごちる。
彼の魔術師は熟考する。何千、何万と同じ問いをくり返す。けれど答えが出たことはない。今さら答えなど求めてはいない。
ふと、違和感を覚えたような気がして指にはめた指を見やる。
ピシリ、とヒビが入ったような感覚だった。しかし指輪は変わらず赤く美しい。
どうでもいいと彼の魔術師はすぐに関心をなくし億劫そうに身体を横たえると目を閉じた。もう二度と開かないことを願いながら。
◇◆◇◆◇
トントン、と今しがた処理を済ませた書類を揃える。
家族は幼い頃にみんな死んでしまった。自身も命を狙われたことは一度は二度ではない。
両親の遺産に目が眩んだ愚かな親族たちがまだ子どもだった自分を言いなりの人形に、それがダメなら殺してしまおうとしたからだ。
しかし、浅はかな愚行は年の離れた賢しい姉と両親、隣国に嫁いだ大おば様により阻止された。
もちろん危険と知りつ協力してれくれた使用人たちも忘れてはいけない。
あれからしばらく・・・・・・自分は成人し、家を継いだ。凍結されていた財産も還り、管理を任されていた老夫婦以外居なかった屋敷も今では幾人か使用人が戻ってきた。
そう、驚くことに以前雇っていた者たちにもう一度働いてほしいと手紙を書いたところ、半数以上の者からよい返事をもらうことができた。
執事のイオンは「リーアン様の仁徳です」と言うがこれは両親が築いてきたものだと思う。
良い返事をもらえなかった者たちは結婚していたり、家を継いだ者たちが大半だった。
両親が他界した翌朝、リーアンは姉に連れられて住み慣れた屋敷を出た。
あまり不安はなかった。姉を信用していた。逆に言えば頼りきっていた。当時リーアンはまだ幼かった、などとこれは言い訳だ。
優しくて、凛々しくて、賢しい姉はリーアンの憧れだった。
いつからだろう?その姉がどこか遠くへ行ってしまうようなそんな胸騒ぎがして不安になったのは。
国境を越え、無事大おば様の元へたどり着いた数日後、姉は両親の遺品を最寒湖まで埋めに行くと言い出した。
これで行かせてしまったらもう会えなくなる気がしてリーアンは駄々をこねた。しかし、姉とイオン、彼の父であるヨハンに説得されて行かせてしまった。危険だと、危ないとあれほど言っていたの当はの姉なのに。
そして、案の定。姉は二度と帰ってこなかった。
その報告を聞いた時、リーアンは泣いた。両親が死んでも泣かなかったリーアンだが、その時になりようやく泣けた。
両親が死んだと、意味はちゃんと理解していたし分かってはいた。けれど受け入れられなかったのだ。
両親に引き続き姉まで死んでしまった。信じたくはなかった。けれど、涙は勝手に溢れてきて気がつけばリーアンは泣いていた。
姉は胸を鋭い刃物で一突きだったそうだ。周囲には不自然に土が抉れた跡があったそうだ。
謎の魔術の痕跡があったらしい。侯爵家の優秀な魔法騎士でも理解でない魔術だそうだ。
リーアンは侯爵に協力してらい、情報を集め、証拠を揃え、金の亡者と化した親族たち全てに法による裁きを下した。元々白くはない者たちだ。叩けば埃などいくらでも出てきた。
そうして、血の繋がった唯一の親族となってしまったクンシラン侯爵夫人の後見のもとリーアンは無事成人し家を継ぎ、今に至る。
これからゆっくりではあるがアリウムの当主の仕事に慣れていく。リーアンには支えてくれる人たちがいる。
「大丈夫だよ」と心の中でリーアンは両親と、姉に語りかけた。
終わりました。最終話です。
かなりぐだぐだになってしまいましたが、終わりました。
〈前半〉彼の魔術師の話です。セレナさんが施行した魔術は魔術師に届き一矢報いるいことができました。
〈後半〉両親と姉を立て続けに亡くしたリーアンの話です。彼の心情を書くのは難しかったです。リーアンはお姉ちゃん大好きっ子でした。
閲覧ありがとうございました。
これにて『呪いの輪廻 王女の運命』は完結です。長らく駄文お付き合いくださりありがとうございました。
こうして最後まで続けられたのも毎週読みに来てくださった皆様のおかげです。
ありがとうございます!
尚、今後の予定につきましては活動報告にて報告いたします。




