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第三十四話-落とした勇気

遅いとは思いますが、新しく投稿しました。

もう一話すぎて、戦じゃないでしょうかねえ?

 明くる日、杉山城の周りには、大勢の民が不穏な表情で群がっている。

 杉山城の中から姿を現したのは連枝だった。


 「聞け!」杉本がそう促すと、民の視線は一斉に連枝へと集まった。


 「まずは、今日までの行為を深く謝罪する。天下を収める前に、一つの国の統治者としての自覚が、俺には足りなかった……お前たちには、たくさん心配させちまったと思う……」


 民の視線は、依然鋭いまま、連枝を睨みつけている。


 「だが、俺はこの一年…適当に過ごしてきたんじゃねえんだ……」


 顔を下に向けて、否定するように低く、深く声を張る。


 「俺は今、七大技王の座を手に入れたっ!」杉本は視線を民に向け、右腕を高々と掲げた。


 その咆哮に、民は思わず息を呑む。


 「俺たちは再び、天下統一に向けて、敵国への進軍を開始する!そこで、我が国のこれからの方針を話そう」


 杉本の言葉に合わせるように、藤山が生々しい声を重ねる。


 「我が国はまず、周辺の国に圧力をかけ、東国を収める。そこから北央より、西側の国への進軍を開始するつもりだ!」


 民はそれを聞くと、ざわつきだす。その騒ぎの中、藤山は続けた。


 「だが安心しろ。お前たちをもう、戦争に駆り出す気はない。もちろん、農業は休まず働いてもらうし、税もある程度納めてもらう。その代わりに、戦で家族と離れ離れにはもうならないと、神に…誓おう…!」


 民はそれを聞くと、再びざわつき出した。その表情には、民の安堵した様子が見て取れる。


 「以上だ!解散!」杉本がそう言い捨てると、連枝は城の中へと消えていった。


 「ここ一年、殿は顔を見せんかったが、あの波乱な性格は変わらんようだ!」


 「いや、より激しくなった気がする…!」


 「何を今ごろ…と考えていたわしが愚かだったわい…殿はわしらの意思を見捨てはしなかった」


 城の中で、杉本は民の会話を盗み聞きする。


 「無事、みんなの忠誠は取り戻せたっぽいな」杉本は安心したように、呟く。


 「これで俺たちは安心して進軍を進められるわけだな」と藤山。


 「ああ、ここに武将を集めて、作戦会議と行こう!」



 三日が過ぎて、城内には、杉本、藤山、小林、地田、郷田、草野の六人が向かい合って座っている。


 沈黙を最初に破ったのは杉本だった。


 「よし、それでは、今後の国の方針について話す。大きく二つに分けようと思うんだ。一つは、西側に進出していく戦闘班。もう一つは、東側の牽制と内政、街の開発を担う保守班。外国が攻めてきた時、国防の役目もある。ここまではいいか?」


 座にいる全員が頷いた。


 「んじゃその役割を決めてくぜ。戦闘班は、俺と藤山、それと地田。保守班は、郷田、小林、草野だ」


 それを聞くな否や、郷田はすぐに身を乗り出す。


 「待った、させねえぜ?確かにこの中で強え順に並べたら妥当だな。でも、戦は個で競うもんじゃねえ…集団で競うもんだその一点で言うと、俺は地田よりも長けてる」


 ちらりと地田の顔に目を向ける。自信のなさが透けて見える内気な様子。郷田は決心したように眉を細めて、連枝を見つめ直すと、大きく口を開いた。


 「こいつには野心がねえ…野心がないやつは軍の支柱になれねえ…なんせ軍は、主将の指示で動くんだからな。悪いが、こんな面をしてる奴に、将の座は任せられねえなっ!」


 (郷田の意見は正しい。どんなに個の力が優れていても、数の暴力には敵わない。地田がどれほど強くても、軍を統率できないのなら将の座は渡せない。いっそうのこと、郷田に指揮を任せた方が良いかもしれん……だが…)


 藤山が懊悩していた所を、地田は遮るように語りかけた。


 「殿よ…私からも、保守班に加えて頂けませんか」


 「お前何言って!?」


 「郷田殿の言う通り、私には大軍を従える覚悟が足りません…もう少しだけ私に、考える時間を与えてはくれませんか?」地田はそう言って、頭を下げた。


 「お、お前がそう言うんなら別に良いが…本気か?」


 七大技王トーナメントが終結し、船で島を出ようとしたあの時、本当は地田とも話をしていた。地田の下げた頭を見て、その時の記憶が蘇るーー


 その昔、東の地を収めていた上杉家の生き残りであること。子供の頃から、剣一筋で鍛錬を続け、二十には主将の座を得た。しかし、戦の中で何かを切り捨てることに、躊躇いを覚えるようになってしまったこと。そして、最愛の人を、病気で無くしてしまい、心が折れてしまったこと。


 降参した理由が、勇気のない自分と、勇気を振り絞って立ち続けた俺たちを重ねたからだと言う。


 あの時の地田の、深く濁った声は今も耳に残っている。


 「乱世を生きる者として、迷いは弱さでしかありません。()()を見つけるまで、将の座は郷田殿に…」


 地田は静寂に包まれた部屋で、しんみりと、しかしはっきりとした声でそう告げた。


 「いくらでも待とう…だが…諦めることだけは許さんからな…」杉本は微笑みながらそう返した。


 「その答えはきっと一つじゃない…無数に存在する答えの中で、お前が一番良いと思った答えを選ぶんだな…」杉本は温かい声で囁くように続けた。


 「もちろん…もちろんですとも!私の、私にあった『答え』を、必ずや見つけ出します」

 地田の真剣な目を見て、杉本は安心するかのように頷いた。


 「じゃあ、この件は戦闘班が俺と藤山そして郷田。保守班は地田、小林、草野で決定だ」

 杉本がそう伝えると、全員が短く「はい」と返事をする。」


 「それで、次に戦うのは北東の“日早(にっそう)”を収める瀬美来…を無視して、中央から少し上辺りの火山地帯、“火中(かっちゅう)”に行く!」杉本は強く言った。


 「なぜ火中へ?あの場所など、これと言った資源もなく、強いて言えば、傷を癒す温泉程度しか…」小林は体を前に少し傾けて、疑問を投げつけた。


 「悪い。俺がお願いしたんだ。ちょいと因縁みたいなのがあってな…」

 申し訳なそうに割り込んだ藤山に、郷田が手を打つ。


 「ああそういや、俺と戦った時、噴火烈鳴流を見て似たようなこと言ってたっけ?目的ってのはそれか」と郷田が納得した様子で言った。


 「そうでしたか。これは失礼しました」と小林は姿勢を直した。


 「てことだ。戦闘班はこれから、郷田の母国、火中の右側に位置する『火前(かぜん)』に向かう。解散だ!」


 杉本が促すと、また全員が短く「はい」と返事をした。

藤山は火中に何しに行くのでしょうか?

書くのが楽しみです。

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【報告】

流石に投稿ペースを安定させます。僕も受験生と言う言い訳をさせてもらって、一週間ごとに一話のペースで投稿し、大体は日曜日に投稿させていただきます。また、投稿できない日は、事前にお伝えします。

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