第142話、誕生日
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僕の名はアルカナ=モードレッド。
もう少しで春ですけど、まだまだ肌寒いので一人で薪払いをしに裏山へ来ました。因みに僕はどうやら母方の父さんの血が強いようで、肌は青味を帯びた黒色です。また僕はリーヴェ母さんに似て常に魔力が溢れ出す体質でもあります。そのため肉体に魔力が漲らないので、力仕事は得意じゃないのです。だから拾った薪は、僕が場にテリトリーを展開した上で霊体召喚している地龍のドル太の背中に乗せて運んで貰っています。
よし、これだけ拾ったら春までは大丈夫かな。
そして今日が僕の12歳の誕生日なので、今頃お家では母さん達と姉さん達が美味しい料理を作ってくれています。
そしてそして先日水晶で連絡があったのですけど、一番上の姉さん達が予定では今日帰ってくるそうなので久々の家族全員が揃う事になっています。
そうしてドル太に跨がり家へ戻ると、ちょうどA級冒険者チームでありながら国際治安維持隊に所属する四人、ルージュ姉さん、ルシア姉さん、アリス姉さん、レザ姉さんが帰って来ていました。
「お姉さん達、お久しぶりですー」
「アルカナー」
そう言って僕の顔を見るなり、長髪を靡かせながらルージュ姉さんが駆け寄ってきます。
とそこで、肩にかけていた袋だけをその場に残してショートカットであるレザ姉さんの姿が掻き消えます。そのため僕はすかさず手にしている長杖を真横にして上空へと掲げます。すると金属音が鳴ると同時に短剣を握るレザ姉さんの姿が目の前に現れました。
そのため鍔迫り合いする杖と短剣。
しかし脳筋であるレザ姉さんの力に負けそうになります。そこで気合いの息と共に痺れる手に力を入れなおし杖を高速回転させうまく力を逸らしますが、その時には既に流れるように後ろ回し蹴りが僕の土手っ腹目掛けて出されていました。ダメージを最小限にするべくお腹に力を入れます。そして押し出されるようにしてドル太から落とされる僕は、上半身を捻じる事によって足から地面に着地します。
すると同じく着地したレザ姉さんから、溢れていた圧が掻き消えます。
「ふふふっ。私の本気をその程度のダメージに抑えるとは、アルカナ、だいぶ腕を上げたな」
「レザ姉さん、ありがとうございます」
僕はただ一人の息子と言う事で、特別に物心ついた頃から体術と闘気の稽古をお父さんとレイゼル母さんに叩き込まれているからですね。
とか思っていると、レザ姉さんが腕を曲げるガードの構えのまま真横に吹き飛びます。攻撃を受けたのです。やったのはチームの回復役でありながら、お姉さん達の中で唯一脳のリミッターを外す事が出来るルージュ姉さん。
「私の可愛いアルカナに、なにやってくれているのですか! 」
そしてルージュ姉さんが僕にハグして来ます。
ううっ、大きな胸が顔に押し当てられて、呼吸がしにくいです。
「アルカナ、怖かったでしょ? でももう大丈夫ですからね」
そして僕の髪の毛を手に取ると、クンクンと嗅いできます。
かっ、顔が近いです。
「あぁ、久々のアルカナの香り」
「ルージュ姉さん、僕ちょっと汗かいてるので臭いですよ」
「大丈夫よ、アルカナの匂いはとても良い匂いなんですから」
「姉さんが良くても、僕が恥ずかしいんです」
「わかりました、そしたら続きはお風呂に入った後にしましょう」
そうして僕の髪を嗅ぐのはやめてくれたのですが、依然抱きしめられたままです。
とそこで吹き飛ばされていたレザ姉さんが、何事も無かったかのようにスタスタとこちらへ歩み寄ってきます。そんなレザ姉さんにルージュ姉さんが冷たい視線を投げかけます。
「レザ、誰彼構わずいきなり攻撃するのは良くないですわ」
「アレは私なりの愛情表現だ。アルカナも理解している。と言うか、お前の愛情表現も大概だな」
とそこでボーイッシュなルシア姉さんが、頭の後ろに手を組んで歩いてきます。
「オレから見たら、二人ともアルカナが好き過ぎだぜ。アリスもそう思うだろ? 」
髪の毛をおさげにしているアリス姉さんが眼鏡のエッジを摘んで、クイクイ上げ下げしながら口を開きます。
「ふふっ、私達の弟の貞操の危機、今宵近親相姦の危機♪」
そんなこんなで時間が流れて夕暮れ時、食事をしながらお姉さん達の土産話で盛り上がる中、僕は家族のみんなから盛大に祝福して貰うのでありました。
それから就寝の時刻、お風呂を済ませてルージュ姉さんの部屋に招き入れられた僕は、研究中の真実の呪文の手掛かりを教えて貰います。そう、収集癖がある僕は回復魔法だけではなくて全ての属性、精霊魔法も使えるよう勉強しているのです。
そしてそのあと自然な流れで昔のように一緒のベットで寝むる事に。そうして先にルージュ姉さんの布団の中に入っていると、布団の海の中へ潜ったルージュ姉さんから身体中の匂いを嗅がれていきます。
昔からルージュ姉さんの匂いは良い香りで、その事を伝えたあの日からこのちょっといけない行為が続けられています。
そしてどこか恍惚とした表情を浮かべるルージュ姉さんの唇が僕のほっぺや首筋にも触れてくる中、成長した僕は身体が敏感に反応するのをぐっと堪えました。
姉さん相手にドキドキしてしまう僕は、いけない子です。でも本当に良い匂いなんだよなー。
それから僕らは、まるで恋人同士のように見つめ合った後に身体を絡み付かせた状態で眠る事に。
しかしそんな非日常的な状態でもルージュ姉さんの熱を帯びた柔らかな感触と甘い香りを嗅いでいると、いつの間にか僕は安心して熟睡するのでありました。
それから数日が経った今、僕はルージュ姉さんと仲良く二人で荷馬車に揺られてレコ王国内を南下しています。それは姉さん達の国際治安維持隊の手伝いのため大国レイジンに入国するため。
そしてそこに潜伏しているとされる悪人を捉えて法廷の場に引き摺り出す事が任務です。因みにその悪人は美少年が好物の元帝国ディバイナーの司祭ニコライで、現在は亡命してレイジンにいるらしいです。
またレイジンは閉鎖的な国で、開かれた場所は限られています。そんな数少ない開かれた場所の一つ、首都の隣町のテイユンは奴隷市場が盛んみたいですが、奴隷のオークション会場で度々そのニコライが目撃されているそう。
と言う事でそこに突入して捕縛しないといけないわけなんですが、姉さん達は有名で顔が割れているので今回無名で尚且つ力がある僕が選ばれる事になりました。




