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異世界えぶりでい ―王国兵士の成り上がり―  作者: バージョンF
七章 どうも新米領主のヨハンです
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2話 バルバネス・ニーナルシア




「師匠ー! 中、めっちゃ広いでーす!!」


 城のエントランスホールのど真ん中で、両手を大きくブンブンと振るリアム君。


 ツルツルな大理石の床も珍しいのか、スケートリンクのように滑って遊んでいた。


 童貞も物珍しさに周囲を見ているのだが、まずこのエントランスホール、天井がぶち抜かれていて三階まで吹き抜けの造りとなっている。


 しかも天井には、某礼拝堂にある最後の審判のような壮大な絵画まで描かれていた。


 ただ残念なことに、城の壁が崩れた影響で今はその絵画もうっすらと残っているだけ。


 こんな荒廃してなきゃ、きっと素晴らしいお城だったんだろうな……。


「さーて、ではリアム君? 一緒にダンジョンコアを探しに行きましょうかね?」


「了解しました!」


 ビシッと敬礼を決めるリアム君。探検と思っているのだろうか、再びキラキラと輝くその瞳。


「では師匠! 行きましょう!!」


 そう語ると警戒もお構いなしに、槍を片手に走り出すリアム君。


「あ、ちょっと! リアム君!?」


 くっ、……なるほど、これが孫悟空に振り回される三蔵法師の気持ちか。


 頼んでもないのに勝手に配達されてくる地雷の恐怖……。


 三蔵法師さん、あんたすげぇメンタルだったんだな。俺も頭を締め付ける輪っかなるものが欲しいぜ。



 それからしばらく。



 いつ踏み抜くかわからない地雷の恐怖に耐えながら、リアム君と一緒に城の中を歩き回る童貞。


 やはり城の中にもモンスターがいるようで、特に武具に擬態するリビングアーマーや、カースソードなどのアンデッドモンスターが多かった。


 童貞の気配察知でことなきを得たが、初見だとまず見破れない極悪擬態モンスターばかりである。


 さすが旧魔王城と言うべきか。


「師匠ー、ダンジョンコアありませんね? これだけ探してないってことは誰かが隠したんですかね?」


 まぁ、そりゃそうか。


 この三百年間探しても誰も見つけられないってことは、それなりの場所に隠してあるはず。


 ということは、まず地上(・・)にはないんだろうな。


 何か手掛かりはないものかと、腰のポーチからダンジョンクリスタルを取り出す童貞。


 メニューを開くと、ダンジョンマップの欄に【Check!!】なる文字が点滅していた。



 ――ん? なんだこれ?



 マップを開くと画面に【ドラクロア城】なる項目が増えているという……。


 このダンジョンマップというものは、自分の作ったダンジョンの見取り図が表示される。


 もちろんドラクロア城など作った覚えもないし、童貞の所持しているダンジョンクリスタルとドラクロア城のダンジョンコアが勝手にリンクするわけもない。


 となると、以前吸収したカリュウーグの持っていた所有者死亡のダンジョンクリスタルが非常に怪しい。


 もしかしてあのダンジョンクリスタルって魔王パドスの物だったのではなかろうか。


 むしろ考えれば考えるほど、その可能性しかないように思える。


 とりあえずマップを確認するか。



「――ダンジョンマップ、オープン」



 童貞の目の前に現れる五十インチほどの画面。


 城の見取り図を立体的に表示していた。


「おおー!! 師匠、これがこのお城のダンジョンマップですね! 凄ーい、おもしろーい!!」


 リアム君が指で画面をなぞり、クルクルと城を回して遊ぶという。


 こらこら、これから調べものをするんだけど?


 ん……、あれ、今のって……?


「リアム君、ストッーープ、ウェイトウェイト!」


「どうしました師匠?」


「今、マップのどこかに転移魔法陣って書いてあったような…………えーっと、これだ!!」


 城の最上階である五階に、隠し扉ならぬ隠し転移魔法陣を見つけた童貞。


 ご丁寧なことに、転移魔法陣の場所が記載してあるという。


 これは怪しい……、怪しいですぞ。


「リアム君、最上階を調べに行こう!」


「了解です、師匠!」


 そうして崩れ掛かった大階段をすたこら登っていき、最上階の部屋へと辿り着いた我ら両名。


 中に入るとボロボロの天蓋付きの巨大なベットに、壊れてしまった家具や破れた絨毯、かつて豪華だったであろう内装の面影が垣間見える。


 ふと壁を見ると、旧バルバネス魔瘴国の紋章だろうか、そんな特徴的な図形が視界に入った。


 おもむろに手を置いて、魔力を流してみるが何も反応はしない。


 だがダンジョンマップを表示すると、確かにここに転移魔法陣があるのだ。


「師匠ー、どうしたんですかー?」


 不思議に思ったリアム君が声を掛けてくる。


「いや、ここの壁に転移魔法陣があるみたいなんだけど、全然反応しなくてね。何か特殊な魔道具か合言葉なんてものが必要なんじゃないかって思ってさ」


 頭にクエスチョンマークを浮かべて、うむむと唸るリアム君。


 するとしばらくして閃いたと言わんばかりに、ぽんっと手を突き語り出す。


「師匠? そういえば、じい様が転移石を起動するには瘴気が必要って言ってましたよ! この紋章も瘴気で起動するものなのではないでしょうか?」


 意外とまともな答えが返ってくるという。


 なるほど瘴気ね……、一理あるかも。


 そしてクリスタルを取り出して、瘴気の注入を開始すると、突如我々を囲うように大きく展開される魔法陣!


 手元のクリスタルを見ると、壁に描かれた紋章に向けて一筋の光を放っていた。


 げっ、いつものパターン!?


「なんで俺ってこうも()――」


 瞬間、ふっ……と輝く魔法陣。


 白い光が童貞たちを包むと、いつものように周囲の景色が一変していた。


「――(らい)を踏むかなぁ!?」


 見た?


 地雷慣れすると転移しながら愚痴も言えるんだぜ?


「師匠、ここは……どこでしょう?」


 キョロキョロと周囲を見渡すリアム君。


 転移した先は森の中に佇む、石造りの神殿のような場所だった。


 陽の光が届かない部屋の中にも関わらず、自生している草花や樹木などの植物。しかも小川のような水路まで流れている不思議な空間。


 一言、神聖。


 そんな言葉が自ずと浮かんだ童貞。


 部屋中央に設置された祭壇には、ジャスバールのダンジョンと同じような、巨大な白水晶が鎮座していた。


「ほえー、あれがドラクロアのダンジョンコアか。さすがにデカいな……」


 スタスタとダンジョンコアに近づいて行くと、ここで童貞の気配察知に二体の生物が引っ掛かっていることに気が付く!



 ――敵かっ!?



 そう思い、ばっ……と振り向くと、木の陰からこちらの様子を伺っている紫髪の少女と蝙蝠の姿を視界に捉えるではないか!


 思わず少女と視線がぶつかる童貞。



「「………………」」



 少し考えて、再び前を向く。


「師匠? どうしたんです? おしっこですか? うんこですか?」


 そんな童貞の行動を不審に思ったのか、リアム君が気を遣ってくれる。


 しかし、なぜ便意の二択なのか。


 仮に便意だったとしても、それを聞くのはどうかと思うよリアム君?


「いや、ちょっと疲れてんのかなと思ってね……、大丈夫だから心配しなくていいよ」


「なら、良かったです! 行きましょう師匠!」


「ああ、そうだ……ね?」


 チラッと少女の方へと視線を向けると、奥の木から手前の木へと移動していた少女。



 ――ちょっとずつ近づいて来てるぅーー!?



 え、もしかしてト◯ベリ? そんな可愛い顔してトン◯リさんなの? 近くまで来たら包丁で童貞の背中をプスリと刺すのかな?


 てゆーか、どうしよう?


 あの子、絶対普通じゃないよね?


 三百年間、誰にも見つけられなかったドラクロア城のダンジョンコア。そんな隠し場所にいる幼稚園児とかただのホラーでしかない。


 百歩譲ってダンジョンコアの妖精だったにしろ、童貞との接触の仕方よ。


 このままシカトを続けて背中からプスリなんてことになったら正直笑えない。


 で、あるのならば、こちらからコミュニケーションを取らねばなるまい。


「リ、リアム君ー? ちょ、ちょっと待ってくれるかなー?」


「どうしました師匠? やっぱりうんこでしたか?」


 そこにこだわんなや。


 とりあえずリアム君に手で"待て"のポーズを取りながら、背後の少女に声を掛ける童貞。


「こ、こんにちはー? お嬢ちゃん、こんなところで何してるのかなー?


 まさか声を掛けられるとは思ってなかったのか、少女の肩がビクリと大仰(おおぎょう)に震える。


 相手の出方をしばらく待ってみるが、残念なことに先方からのお返事はなし。


 警戒されているのだろうか?


「もしかして迷子とかなのかなー? 良かったらお兄さんが力になるから少しお話してみない?」


 それとなくお尋ねしてみたが、よくよく考えてみたら、ザ・変質者の常套句ではないか。


 童貞+ロリコンの合わせ技はダメだって。もはや犯罪臭しかしないもん。


 しかし、そんなザ・変質者の常套句が功を成したのか、少女に動きがあった。


 木の影から横にズザサーっとスライドして姿を現すと、ぺったんこな胸を張り、手は腰に、そして大きな声で叫ぶように語り始めた。



「ぶわっはっはっ! わちし……わたしのなまえはブルッ……、バルバネス・ニーナルシアだ! まおうプド……じゃなくて、パドスのむすめなり! ずがたかい! ひかえろー!」


 

「は、ははーー?」


 とりあえず相手のご機嫌を損ねても面倒くさいので、言われた通り平伏する童貞。それを見ていたリアム君も俺と同じように平伏するという。


 リアム君はやらなくても良かったのに……、彼の優しさが眩しい。


 するとニーナルシアと名乗る少女が、肩に乗っていた蝙蝠と何やらごにょごにょと相談をし始めた。


 "つぎなにするの?"、"なんていえばいい?"とか、何やら微笑ましい相談だった。


 というか、全部丸聞こえなんだが?


 そして途中で諦めたのか、肩に乗っていた蝙蝠が少女の代わりに語り始めるという。


「こら、よく聞け侵入者ども! この神聖なる間に入ったこと万死に値いする! 許して欲しければ、そのダンジョンクリスタルを置いてさっさと出てゆくがいい!!」


 え、どうしよう?


 蝙蝠にカツアゲされてんだけど?


 

 こうして俺は魔王の娘と名乗るバルバネス・ニーナルシアと出会うことになった。





【あとがき】

本日も異世界えぶりでいを読んでくださいましてありがとうございます。

伸ばしに伸ばされたニーナちゃん登場回です。

愛されマスコットキャラにしたいが果たして……。

明日も更新です!

よろしくどうぞ!

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― 新着の感想 ―
[一言] リアム君のメンタルって小学校低学年位ですかね ウ○コとか大好きだし、あの年頃w わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい で、ニーナちゃん 少女ってイメージしかしてなかったけど… …幼女で…
[良い点] リアムくん、トイレに行きたいのかな?
[一言] みんなのうらみ、ではなかったか。
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