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異世界えぶりでい ―王国兵士の成り上がり―  作者: バージョンF
七章 どうも新米領主のヨハンです
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1話 廃城ドラクロア




 ――翌朝。


 チュンチュンと小鳥が囀り始めた頃合い。


 山間(やまあい)から白い太陽の光が差し込み、大地を暖かく照らし始めた。


 なんという清々しい朝だろうか。


 凝縮されたマイナスイオンを感じる。


 両手を広げて盛大に空気を吸う童貞だが、そんな隣で大きな欠伸をする一人の少年。



「ふわぁぁあ、師匠……、僕はまだまだ眠いです」



 ゴシゴシと眠そうに目を擦るリアム君。早起きが苦手なのか、まだムニャムニャしている。


 というのも、童貞とリアム君は早朝から転移石で、以前兄貴(オーキス)が破壊の限りを尽くした旧オークの集落へとやって来ていた。


「リアム君、こんな朝早くから俺の頼みを聞いてくれてありがとう。さっそくだけど昨日話してた例のアレ(・・)、見せてもらえるかな?」


「むにゃ……、わかりましたぁ……、頑張ります……むにゃむにゃ」


 襲い掛かる睡魔と、師匠である俺からの頼み事を履行しなければという思いが、彼の中で果てしない死闘を繰り広げているようだ。


 頑張れ、リアム君!


 童貞は応援しか出来ないぞ!!


「うーん……、ほいっ、竜化(ドラゴンフォルム)!!」


 応じてリアム君の足元に顕現する銀色の魔法陣。


 魔法陣から発せられる眩い光がリアム君の身体を包み込むと、あっという間に銀竜へと変身した。


 これが竜人族(ドラゴニュート)が持つ種族スキル【竜化(ドラゴンフォルム)】である。


 読んで字の如く、ドラゴンに変身するわけだが、まだまた成長途中のリアム君は体長二メートルほどの翼竜(ワイバーン)サイズ。


 しかし人一人乗せて飛ぶ(・・)には問題のないサイズだ。


「おお、リアム君めちゃくちゃカッコいいな!」


 白の(たてがみ)に、銀色のボディ……。


 どことなく例の青い眼のドラゴンを思い出す童貞。


 しかもなぜか幻聴で”滅びのバァァァァーストス〇リーム!!!! ふははははは!!!!”なる声まで聞こえてくる。


 某若社長の残影が浮かんだ。


「ほんとですか!? この姿を見せるのは、じい様に続いて師匠が二人目です!!」


 童貞の言葉にぱぁっと明るくなるリアム君。


 どうやら眠気も吹き飛んだようだ。


「じゃあ、リアム君? さっそくだけど乗せてもらってもいいかな?」


「はい、師匠!」


 くいっと長い首を下げて屈むリアム君。


 そしてその背に跨る童貞。


 まさかこんなところでリアル竜騎士になれるとは。


 これまた感無量です。


「では、飛びます!!」


 応じてバッサバッサと大きく羽ばたくリアム君。


 次第に童貞の視線はグングンと空へと昇って行く。


 そしてある程度高さまで上昇すると、リアム君は翼を広げて滑空を始めた。

 

「うわぁ……、気持ちいーー!!」


 身体全体に感じる風、眼下を流れる様々な景色。


 ビュンビュンと映り変わる景色は、まるでハンググライダーに乗っているような感覚に近い。


 うん……、ちょっとどころではなく、震えるくらい感動した!!


 これは良い!! まじで!!


 某若社長の"全速前進DA!!"、そんな幻聴まで聞こえてくるほどの圧倒的満足感。


「師匠ー、乗り心地はどうですか?」

 

 飛行姿勢が安定したのか、リアム君がそんなことを聞いてくる。


「すっごくいいよ、リアム君!! 最っ高!!」


「やった! 師匠に喜んでもらえて僕も嬉しいです! では、もっとスピード上げますね!」


 そう語るとぐんぐん速度を上げてくリアム君。


「うぉー、はっや!」


 そう、これが童貞の考えていた秘策、”転移石でハーフベル付近まで移動してドラクロア城までリアム君に乗せて行ってもらおう作戦”である。


 正直、道なき道を馬車で進むには限界がある。


 ローズリリイは、ああ言ってはいたものの、やはり現実的ではない。


 野盗はもちろん、野生のモンスターも出るからね。


 であるならば、童貞とリアム君のコンビで空からドラクロア城を目指した方が、時間もリスクも圧倒的に少なくて済む。


 ローズリリイがブーブー言うだろうが、もうめんどくさいので対応は未来の俺に託す。


 必殺、問題先送り、頑張れ未来の俺!


「じゃあ、リアム君? このまま真っすぐ進もうか?」


 木版に描いた地図を片手に、ドラクロア城を目指す我ら両名。


 さて、我々は無事に辿り着けるのだろうか……。




 ◆◇◆




 なんてカッコいいこと言ってましたが、なんのトラブルもなく、ものの三時間ほどでドラクロア城らしき場所まで辿り着いたという。


 やはり空からの移動は圧倒的に早い!


 そして楽!


 ドラコン飛行便なんてもの開業出来たら、ほんとボロ儲けだろうな。


 なんなら既に欲しいもの、自家用ジェットドラゴン。


 カードでドローしたら即召喚なんてこと出来ませんかね? 俺のターン、ドローみたいな。


 でもまあ、そもそもドラゴンなんて地上最強生物をリアルで使役なんて出来ませんけどね。


「師匠ー、野生の角獣兎(ホーンラビット)を捕まえてきましたー! ご飯にしましょー!」


 そんなどうでもいいことを考えていると、リアム君よりお声掛けを頂戴した。


 長距離移動で疲れたであろうリアム君を労うため、しばしの休憩を設けた童貞。


 しかし、なぜか休んでいたはずの彼の手には、鋭く長い角を生やした兎さんが握られていた。


「えーっと、リアム君? それはなんだろう?」


「ご飯です!!」


 それとなくお尋ねしたところ、キラキラと屈託のない笑顔でそう答える少年。


 なるほど、ご飯かぁ……、ご飯ねぇ。

 

 きみ、ダンジョンで長いこと引き篭りしてたのに、やることなすことワイルドすぎへん?


 ヒキニートの野生化とか童貞も対応に困る。


「リアム君? 離しておやり、ご飯なら……、ほらサンドウィッチがあるから」


 荷物を入れてきたリュックをごそごそと漁り、母アマンダ特製のサンドウィッチを出した。


「わぁぁあ!? 美味しそう!!」


 殊更、目を輝かせるリアム君。


「いただきまーす!」


 持っていた兎さんをポイっと投げ捨てて、童貞が渡したサンドウィッチを貪り食うという。


 やはりまだまだ行動が幼いな。


 そう、彼の幼い原因……。


 考えられることがあるとすれば、リアム君は今まで学校教育を受けていない。


 そのため、本来であれば自然と身につくはずの善悪の区別があやふやなのだ。でなければ、あんな可愛い兎さんを放り投げたりはしないよね?


 まさか兎さんも自分が投げ捨てられると思ってなかったのか、助かったのにも関わらずドン引きしてたし。愛くるしい兎さんが、あんな悲しそうな顔をするのそうそう見られるものではない。

 

 ホールキンさんもある程度の常識や知識をリアム君に教えたようだが、やはり集団生活って大事なんだなと痛感したわ。


 というわけで、リアム君には王都の学校に通ってもらおうと思う。


 それが彼のため。引いては童貞のため。彼の槍が誰かのケツの血で染まらないようにしてやらねば。帰ったらさっそくゴードンさんに相談しよう。


「師匠ー、ごちそうさまでしたー!」


 あっという間にサンドウィッチをペロリと食べ終わり、両手合わせて頭を下げるリアム君。


 こうしてちゃんと挨拶やお礼を出来るのは彼の良いところ。童貞が彼の長所を伸ばしてやらないと。


「お粗末様でした。美味しかったかい、リアム君?」


「はい! 師匠のお母さんの手料理は最高です! あれなら毎日でも食べられます!」


「うんうん、じゃあ帰ったら一緒に母さんにお礼を言いにいこうな? 今みたいにちゃんとお礼を言うと、作り手の人も喜ぶからさ」


「はい、師匠!」


 大変、素直でよろしい。きっと弟が出来たらこんな感じなんだろうな。


「じゃあリアム君、そろそろ城まで歩こうか!」


 そして目の前にある瓦礫と化した城門から中へと入ると、そこは廃墟と化した街があった。


 かつて繁栄していたのだろう、並び立つ建物には雑草が生い茂り、軒並み崩れ落ちている。


 そんな町の中心部にそびえ立つ巨大な廃城……。


 おそらくあれが我々の目的地であるドラクロア城なのだろう。


 先ほど上空からも見たが、町の大きさだけで言えば王都アウストラにも引けを取らない。


 これを真面目にコツコツと再建するとなると、いったい何十年掛かることやら。


「あ、師匠! スライムです! えいっ!」


 グミのように丸くて愛らしいフォルムのスライムを、無邪気に躊躇いもなく踏みつけるリアム君。


「きゅぴーー!?」


 いや、鳴くんかい、おまえ!?


 スライムってこんなんだっけかなー、以前兄貴の訓練で倒したスポーンのスライムは鳴きもせず、そのまま瘴気となって霧散したような覚えが……。


 やはりスポーンと野生の違いと言うのだろうか、愛玩モンスターを倒すと少し良心が痛い。

 

 "僕は悪いスライムじゃないよ"なんてことを言われた日には、間違いなく家に連れ帰ってペットして飼ってしまうと思う。


 ほんと魔物使いのスキルがなくて良かった……、きっと童貞は家をモンスターパークにする自信がある。

 

「廃墟とはいえ街中(まちなか)に、モンスターもいるみたいだし、少し警戒を強めるか」


 一応、気配察知は常時発動しているのだが、練度1での運用となる。


 常に人の気配など感じていたくはない。


 気配に温もりを感じるとか、童貞はまだその域の変態には達していないのだ。


「とりあえず気配察知練度【10】発動しとくか」


 そして爆発的に広がる童貞の察知範囲。


 次いで。


「うぉ!? めっちゃモンスターいるじゃん!?」


 童貞の気配察知に引っ掛かる、多種多様なモンスターの数々。


 これを全部駆除するのは正直面倒い。


「リアム君? ところどころにモンスターの巣があるから下手にモンスターを刺激しないようにね? とりあえず今回はスルーしてお城を目指すから」


「わかりました、師匠ー!」


 そしてモンスターを避けながら、とぼとぼ歩き出す我ら両名。


 しばらく大通りを歩いていると、城の正門の前まで到着した。


「ここがドラクロア城か。かつての魔王の居城……」


 時代を感じさせる石作りの城。


 街の建物と同じようにところどころ崩れてはいるものの、未だその尊厳ある姿は健在だ。


 さすが魔王城というべきか。


 迫力が半端ない。


 少しビクつきながらも、我々はダンジョンコアを探しに城へと入るのだった。




【あとがき】

本日も異世界えぶりでいを読んでくださいましてありがとうございます。

更新ない期間もブクマや評価いただいている読者の皆様、そして継続して読んでいただいている読者の皆様、本当に感謝です!

そして、誤字脱字を訂正いただけました紳士淑女の皆様、非常に助かります。

これからも何か変な部分がありましたら、バンバン報告いただけると作者は泣きながら裸で喜びの舞を踊り狂います。

とりあえずこんな感じで七章を始めますので、またエピローグまでお付き合いください。

明日も更新です。

よろしくどうぞ!

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― 新着の感想 ―
[一言] リアム君いい子… 真っ直ぐ育ってほしい… くれぐれもヨハンの後側の何かを狙うような育ちかたは… それは兎も角、この領地を統治するなら魔物使いのスキルがあった方が何かと便利だよね 生えろ~…
[一言] これを褒美の領地だと言い張る王様凄いな。 金貨万枚単位で増やして欲しいわ。
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