2話 陛下の贈り物
「行方不明者の捜索に参加したいですとー!?」
王城の執務室で書類の整理をしていたイケオジに、先ほどの話をする童貞。
さすがのイケオジも、まさかこのような申し出が童貞からあるなんて思ってもみなかったようだ。
年甲斐もなく目をまん丸にして驚いてた。
「ええ、もしご迷惑でなければ、我々も捜索隊の一員として参加させていただければと思うのですが、難しいでしょうか?」
「いや、それは……、大変嬉しい申し出なのですが……いや、しかし……うーむ」
なにやら唸るくらい悩んでいるご様子。まあ、あくまでも我々の扱いは他国の使者、即ち来賓。
おそらくそんな使者様に、命に係わるような現場仕事を任せても良いか悩んでいるのではないかと童貞は予想する。
というか、普通に考えばダメだよね。むしろ、おまえ頭おかしいんか、と言いたくなる。いくら人が好いイケオジとはいえ、これはNOと言いかねない。
なので。
「スコルツ卿? 正直に話しますと、実は友人がダンジョン内に閉じ込められていることが判明しました。出来ることなら、その友人を我々は助けに行きたいのです。ですのでスコルツ卿のお力を貸してはいただけませんでしょうか?」
情に訴え掛けてみた。
「そう……でしたか。ご友人が。なるほど、それで捜索隊に参加したいと?」
「はい、私情を持ち込むのは良くないと思ったのですが、やはり居てもたってもいられなくなり、スコルツ卿を頼らせていただいた次第です」
「そういうことでしたらわかりました。我が国の恩人であるヨハン殿の頼みであれば一肌脱ぎましょう! 陛下には私の方から上手く話しておきます。すぐに全員分の入場許可証を発行させますので、出来上がるまでしばしお待ちください」
「スコルツ卿ありがとうございます!」
ふっ……計画通り。(ニヤリ)
やはりなんだかんだ言ってもイケオジはチョロイン枠だな。ゴリ押しでなんでもイケるような気がする。
「あとヨハン殿、ついでと言ってはなんですが、こちらも受け取っていただけますでしょうか?」
そう語るとイケオジは机の中から宝飾の施された長方形の木箱を取り出して童貞へと渡してきた。
「スコルツ卿、これは?」
「先日出現したユニークモンスターの討伐報酬となります。陛下からお預かりしていた物となります」
「陛下からですか!?」
まさかの陛下プレゼンツ!!
謁見なしでご褒美くれるなんて、めっちゃ良い人やん! うちの王様とは大違い!
「ええ、本来であれば正式な場でお渡しさせていただきたかったのですが、ヨハン殿も忙しくなる身。この場でお渡しさせていただきますね」
そうしてぱかっと木箱を開けるイケオジ。
中に入っていたのは一枚の金版だった。
「これは……なんでしょうか?」
冒険者プレートかと思ったが、以前フィリス見せてもらった冒険者プレートよりも一回りは大きい。
「ヨハン殿はご存じないかと思いが、これは我が国の手形となります」
「手形?」
「はい、此度のヨハン殿の働きは、まさに英雄の所業といっても過言ではありません。もしあのユニークモンスターを討伐出来てなかったら、我が国には一体何人の犠牲者が出ていたことでしょうか」
確かに……、残念なことにあのユニークに対抗出来る手練は、あの式典会場にはいなかった。
でもあの狼さんを倒せたのは、本当に運が良かったに過ぎない。もしもこちらが先に魔力切れを起こしていたら、やられていたのは童貞なのは間違いない。
「しかしまあ、ヨハン殿が我が国の貴族であったなら、どれだけの名誉と喝采を受けていたことか。それだけが本当に悔やまれます。陛下も同じようなことを仰っておりました」
「スコルツ卿。そう言ってくださり、ありがとうございます。本当に勿体なきお言葉です」
「いえいえ、本当のことですから! 我々としても窮地を救ってくださったヨハン殿には感謝してもしきれません。ですのでこちらの手形にヨハン殿が所望する金貨の枚数をお書きください。いつでもご用意させていただきます」
なにぃーー!?
手形ってそう言うこと!? 関所とか、VIPルームに入れるとかじゃなくてガチのやつ!?
というか、好きな枚数を書けって……、逆に気を遣って書けねぇよ!! 小心者の童貞をなめるな!!
「いや、しかし、スコルツ卿……さすがにこれは」
「ヨハン殿? これは受け取っていただかねば、私が陛下より叱られます。恩人をただで返すとは何事かと。ですので、気兼ねなくお受け取りください」
どうやらNOの選択肢はないようだ。
うーむ……、何か厄介な爆弾を受け取った感じだ。相手なりの誠意を見せたつもりなのだろうけど、逆に小心者の童貞にはこれは使えんて。
とりあえず受け取るだけ受け取っておくか。
「スコルツ卿、謹んで頂戴いたします。陛下にも感謝の意をお伝えください」
「承知しました。きっと陛下もお喜びになるでしょう。それではダンジョンの入場許可証が出来ましたら、届けますのでしばらくお待ちください」
こうして無事にイケオジとの話は付いたが、逆に手形という恐ろしい爆弾を懐に抱え込んでしまった童貞。
地雷にならないことを祈るばかり。
あれ、フラグか?
◇◆◇
その日の夜。
イケオジはしっかりと約束を果たしてくれた。
童貞の部屋へと届けられたのは、ダンジョンの入場許可証と陛下のご捺印付きの紹介状。
つーか、捺印付きの紹介状て。あのイケオジどえらいもんを寄越してくれたな?
でも、これさえあれば、とある御老公の印籠並みの重力操作が可能となる。
見せれば漏れなく全員ははーっとなる代物だ。一介の底辺貴族に渡して良い代物ではない。
「へぇー、意外と早かったのね。ま、でもあれだけの功績を残せば当然かしら」
ふふんっ……と、いつもよりご機嫌にツンデレを語ってくれるローズリリイ。
それもそのはず。
ツンデレお嬢様の剣帯には、先日狼さんよりドロップされた細剣が帯刀されているからだ。しかもこれがまた凄いアイテムときた。
――名を【炎剣ヴァルフレイア】。
真紅の鞘に、金細工の意匠が施されたナックルカバー。優雅な装飾剣のような見た目だが、まごうことなき魔剣の一本である。
既に王城の鑑定士にて鑑定済みだというオリバー氏の仕事の早さよ。結果、童貞の愛剣よりも断然価値が高く、そのアイテムランクは宝剣と称されるまさかの【A】ランク判定。
評価額はなんと金貨780枚!!
童貞の愛剣もBランク判定で名剣の類となるが、それでもAランクとの格差よ。
オリバー氏が帰国後に、金貨にてお支払いさせていただきます、とのお声掛けを頂戴したが、さすがにローズリリイにあげると言った手前、これは丁重にお断りさせていただいた。
しかし、日本円にして七億八千万円を女に貢ぐとは、童貞も出世したものだ。
なーんて、カッコいいこと言ってみたが、ただ単に詐欺られただけんですけどねー。
そう、新手のキスキス詐欺。
「隊長? じゃあ準備も整いましたし、ダンジョンの突入は明日からの予定で良いですか?」
そんなことを考えていたら、ルナ氏からお声掛けを頂戴した。あれ以来、ギクシャクすることもなく、通常運行に戻った我らの関係。
童貞に恋愛学校の飛び級は早過ぎたましたわ。
なんだよ、いきなりキスって。
無謀すぎだろ。
これからは無理に背伸びせず、モテる男三百選のマニュアル通りにことを運ぼう。
まぁ、これをやってモテた試しはないけど。せめて雑誌のすみにイケメン限定と書いておいてほしかった。
「ええ、そうですね。準備の都合もありますが、遅くても正午までにはダンジョンに入りたいですね」
そんな童貞の言葉に。
「何言ってるのよ、ヨハン? それじゃあ遅すぎるわ。朝一で潜るわよ!」
おい、こらツンデレ? それは早過ぎるわ。つーか、お前ただ単に試し斬りがしたくてしょうがいだけなんだろう?
目がもはや幕末の人斬りのソレだからな? もうすでにエンカウントするモンスターに同情すら湧いてしまってるよ。
「いやいや、リリイさん? 持っていく食料や備品などの準備もありますから朝一は無理ですよ」
「大丈夫よ! オリバーたちが準備した備蓄品が、まだ残ってるから準備にそう大して時間なんて掛からないわ」
俺が寝ている間に、準備しておいた備蓄品をイケオジに全て渡したってラウルから聞いてたが、こいつもしもの時のために少し手元に置いておきやがったな。
なんて勘の良い奴だろう。
こういう時の頭の回転だけは早いのな? 普段からこうであれば助かるのに。
「だとしてもです。今回のダンジョン探索は長時間潜ることになります。一日、二日で地上に帰還出来ない可能性すらあります。ですので用意はもちろんのこと、体力や気持ちを落ち着かせる時間は必要だと考えてますので、リリイさんもご協力いただけませんか?」
地下75階層以上もあるダンジョンだ。
フィリスがどこまで潜ったかなんてわからないが、シルバーランクならばそれなりの階層まで潜っている恐れもある。
探索するこちら側としても心身ともに万全の状態で臨みたいところ。
「仕方ないわね。ヨハンがそこまで言うのなら我慢するわ。確かに長期間潜るのなら、それなりの準備と心構えは必要ね」
ツンデレお嬢様の語る、心構えとはなんぞや?
階層内のモンスターを全殺しにするとか、そういう感じのはまじで勘弁してもらいたい。
奴ならやりかねん。
「ありがとうございます、リリイさん。ではこれから各自準備をお願いします。テントや食料、水など、今回は荷物が多くなると思いますので、手分けして持っていきましょう」
「「了解!」」
こうして初めてのダンジョンアタックの準備に取り掛かる我ら一同。
以前、経験した鉱山事故の時のような新規ダンジョンではなく、既に人の手によってあらかた探索されているマッピング済みのダンジョンである。
フィールド型ダンジョンが集中する上層部はもちろんのこと、迷宮階である8〜30階層までの中層域くらいまでなら余裕で潜れるだろうと考えていた童貞。
しかし、そんな甘い考えが、いきなり吹き飛ばされることなど知らずに床へと就く童貞だった。
【あとがき】
本日も異世界えぶりでいを読んでくださりありがとうございました♪
明日も更新です!
楽しみにお待ちください!
よろしくお願い致します♪




