武器屋で装備を整える
一晩ぐっすり寝た俺は、早速戦利品を物色した。手に入れた品物を部屋に並べて、テーブルの上に硬貨を種類別に分けた。
お金は全部で小金貨7枚、大銀貨18枚、中銀貨6枚、小銀貨25枚、大銅貨56枚、中銅貨359枚、小銅貨224枚も有った。
物価や人件費を考えると、日本円にして銅貨は其々1枚、100円、500円、1000円。
銀貨は其々1枚、1万円、5万円、10万円。金貨は其々、100万円、500万円、1000万円。
金剛貨は1枚1億円くらいの感覚だろう。お金は種類別に袋に分けて入れて措こう。買い物の時に便利だ。
あるいは、少し高いが魔法の財布を買ってみるのも良いかもしれない。
小金貨1枚もするが、硬貨が1万枚まで入る上に手を入れて念じるだけで好きな枚数取り出せるので、金が増えて来たら買っても良いかもな。
品物は宝石類が242個、絵画や金の女神像などの美術品が52点、魔法石などのマジックアイテムが11個、回復ポーションが27個、武器防具が63個、スキルブックが2冊と盗賊20人が10日は食べて行ける食糧だ。
これだけ有れば暫くは問題無いだろうけど、俺は金を手に入れて好きに生きたいので盗賊団を潰して根刮ぎ奪って、道場とかで剣術の練習や戦闘訓練を受けながらレベルアップをしよう。
空間魔法を封じ込めた魔法石は便利なので、MPを回復しながら魔法石の数だけ作って措こう。
売って稼ぐのも良いかもしれないが、金に困ったらで良いだろう。
盗賊から奪った武器防具は安物なので、店で売ってから新しいのを買おう。手入れの方法も店で訊こう。
朝食を摂り、買い物に行く事にした俺は、頑固だけど鍛冶師として有能な者が多いドワーフの武器屋を探して道を歩く。
宿屋で訊いた限りでは金持ちの区画には居ないらしく、ごちゃごちゃした下町に好んで店を構えるそうだ。
なんでも、いけ好かない金持ちとトラブルになる事が多いために、職人気質なドワーフ達は街の中心部は避ける傾向に有る。
「職人気質だもんな~。金に任せた武器の事が判らん金持ちに、自慢の武器を売りたく無いだろう。期待出来るな~」
強くてカッチョイイ武器が欲しい!修行が必要だけども!
「武器くれ~」
裏路地のそれっぽい武器屋に入るなり、俺は武器を注文する。
「冷やかしなら帰んな!!!」
おおー、職人気質のドワーフっぽい台詞だ。益々期待出来そうな雰囲気だ。
所狭しと並んだ凄みの有る武器に、ワクワクしながら声の主を見た。
「って!人間かよ!!」
ドワーフだと期待したのに筋骨隆々で禿げ頭の人間のオッサンだった。すげーガッカリだよ!
「人間じゃ悪いのかよコラ!?」
「ああ悪い!俺はドワーフの武器が欲しいいんだ!ドワーフの武器屋って書いて有るのに詐欺か!」
仕入れた品じゃ無く手造りって看板に書いて有るのに。
「勘違いするな、俺は只の売り子だ」
オッサンの売り子もガッカリだよ!!女の子にしろよ!!
「…………まあ良いか。造っているのはドワーフだよな?」
無理矢理自分を納得させてオッサンに訊ねる。
「ああ、当然だろ?全部俺のかみさんの手製だ」
嫁がドワーフなのか。珍しいっちゃ珍しいが、ドワーフの武器なら何でも良い。
ドワーフは鍛冶に誇りを持っている種族らしいから、出来の良い武器じゃなければ売り物にしない。
「んで?その嫁さんは何処に居るんだ?」
気になってキョロキョロ見回す。
「かみさんなら鍛冶に飽きて何処かで呑んだくれてるよ」
「何回ガッカリさせる気だよ!!!」
この店は俺をバカにしてるのか?
「まあ安心し「出来るか!!」ろ」
やっぱり嘗めてるだろ?このオッサン。
「大丈夫だって。作っておいた武器がこんなに有るんだからな。それに今は娘が修行中でもうすぐ一人前になるから」
なんか色々不安だが、置いてある武器は立派なので心を落ち着けよう。
「何にせよ娘を紹介しよう。武器に関しては俺より娘の方が詳しいからな。娘に聞いてくれ」
もう売り子の意味ねぇな!オッサンは何に詳しいんだ?武器しか置いて無いのに。嫁といい残念な夫婦だ。
娘も残念だったらこのオッサン殴ってやるからな!ごめんなさいするまで殴る!
「おーい!リリ~。お客さんだ!武器を選んでくれ!」
野太い声でオッサンが娘を呼ぶ。絶対期待しないぞ、もうガッカリしたくない。
「ちょ、ちょっと待ってて~。お風呂上がりで着替え中~」
おいおいおいおい!期待させる様な事すんな!
「どうだ?可愛い声だろ?」
だから期待させる様な事を言うな!オッサン!
「お待たせ~。ボクに任せて~。」
カウンターの奥の部屋からほんわかした話し方の美少女が現れた。
身長は150㎝有るか無いか、薄茶色のボブカットに、クリクリした好奇心旺盛な紅い瞳と小さなトンガリ耳。
華奢な肩で中くらいの胸、ジャンパースカートから見える足は細過ぎず太過ぎない綺麗な太もも。
大きめの靴を履いてペタペタ歩いて来ると両手を腰に当てて胸を反らした。
「こっ、この娘は!その顔、良く見せてくれ!」
「ふえ?ボクの顔がどうしたの?」
「何だ?知り合いか?」
俺はカウンターを飛び越えて少女の肩を掴み、近くで顔を確かめる。
「やっぱり、この顔は…………」
近くで見れば一目瞭然だ。
「オッサン!この娘がオッサンの娘か?」
確認する様にオッサンの顔を凝視する。
「あっ、ああ。間違いなく俺の娘だ」
神妙な顔でオッサンが断言する。
「…………そうか」
呟いて少女の顔を見詰めていると、少女の頬が真っ赤に染まった。暫し見詰めてから俺は口を開いた。
「オッサン!この娘、すげー好みだから俺にくれ!」
「やるかアホ!!紛らわしいな!因縁でも有るのかと思ったらそんな理由か!真面目に馬鹿かよ!」
「オッサンのケチ!くれ!」
「子供か!初対面の男に娘をやらないだけでケチ呼ばわりすんなよ!」
「俺の言うこと聞いてくれない奴はみんなケチだ!」
「自己チューにも程が有るな!未だかつて無いビックリ発言だよ!」
「良いじゃん、くれよ~、大事にするからさ~」
「えーい揺するな!玩具売り場の子供か!」
これだけ頼んでるのにケチなオッサンだ。
「チッ、顔に似合ったケチ臭くて貧相なオッサンだ」
不貞腐れながら呟く。
「お前、さらっとすげー毒吐いたな。少し傷付いたぞ」
「おと~さん、この人にはなんか敵いそうにないよ?無の境地だよ!気にしたら敗けだよ~」
微妙に涙目になったオッサンが娘に慰められてる。
「俺はな、我儘に生きるって決意したんだ!!協力してくれ!」
剣を抜いて高らかに掲げて宣言した。
「その駄目な決意に俺が関係あんのか?誰の頭にも過るで有ろう素朴な疑問だが」
冷や汗を垂らしながらオッサンが訊いたので正直に答える。
「関係無いけど俺我儘だから」
「メッチャ酷い言い訳だ!言い訳になって無い言い訳だよ!開き直りの極みだな!」
なかなか理解が得られないのでオッサンの渾名はケチなオッサンにする。口に出さないが。
「お前……、口に出さなくても目が何よりも雄弁に語ってるぞ」
結構根に持つオッサンだ。
「仕方ないから今日は引き下がるけど、剣はこの娘に作って欲しい」
「ん?ボクが!」
「オイオイ……娘はまだ半人前だぞ?命を預ける武器なんだ、真面目に選べよ」
男のくせに解ってないオッサンだ。
「お義父さん、美少女なら良いんです!!!!」
「すげー格好いい表情ですげー格好悪い事言ったぞコイツ!」
「エヘヘ、美少女なんて照れちゃうよボク」
「美少女!!それは世界の宝!!美少女!!それは全て俺のもの!!」
「コイツの迫力に忘れ掛けたけど、お義父さんって何だ!」
「そんなに求められたら、恥ずかしいけどクラっとしちゃうよ~」
「さぁ俺のものになるんだ!美少女!!…………あっ剣はバスタードソードをくれ!」
「いきなり素に戻るのかよ!!」
「やだ、1人でその気になって恥ずかしいよ~」
頬に手を当て赤くなってクネクネしているリリーの尻を撫でていたら、店のドアが開いて見回りの兵士がやって来て近所から煩いと言う苦情が来たと怒られた。
みんなケチ臭くて嫌になる。
「で、バスタードソードだったな?リリー、見繕ってくれ」
「わかったよ~。えっと、お尻撫でるのやめてくれないと」
仕方ないので撫でるのを止めると、剣の置いてある場所にとてとて向かった。
「つーか、まだ撫でてたのかよ?執念と迫力と勢いは認める」
「ふんっ、例え腕を斬り落とされようと撫でるのが俺の正義!」
「この分からず屋め、みたいな目でアホな事言うな!気持ちは解るが娘の尻を撫でられたら同意しづらいわ!」
「気持ちが解るなら何も言うな……オッサン。美少女が俺を待っている!俺に撫でられるのを!」
「人間的に駄目な奴だけども自信がすげぇな」
ドワーフなだけあって何本も剣を持っても大丈夫らしく、ハーフでも力が強い。
「この中から選んでね?体格に合いそうなの選んだから~」
何が楽しいのかニコニコ剣を差し出して来る。その中から1番デザインの気に入った物を手に取った。
「それは少し刃が薄めで切れ味を高めた玄人向けだよ?」
自分で持って来たのに、俺の手に取った剣に不満が有るのか?俺の場合は魔力で強化出来るし、折れる事は無いだろう。
バスタードソードにしては刃渡りが少し短く80㎝くらいの長さで、柄も両手持ちが一応出来るくらいの長さだ。
全長が110㎝くらいで、剣幅は4㎝くらいだ。振り回してみると結構しっくり来たので、この剣を買う事にした。値段は大銀貨5枚だった。
「そう言えばオッサンの奥さん、純ドワーフだよな?」
帰り際に気になって訊いてみた。
「ああ、そうだぞ?それがどうした?」
「じゃあオッサンは幼女好きの変態だな!」
「テメーにだけは変態なんて言われたくねぇよ!!」
リリーとついでにオッサンに再会を約束して店を出た俺は、スキルブックを買いにマジックアイテムショップに向かった。
「悪いリリー、聞き忘れた事が有った!」
大事な事を忘れていたので慌てて戻って来た。
「何だ?手入れの方法か?」
「手入れの方法ならボク教えてあげるよ~」
嬉しそうに寄って来たリリーの細い肩を掴みながら重大なミスを恥じた。
「俺とした事が、リリーのパンツの色を聞き忘れた!」
「もう帰れ!!」
「ピンクだよ~」
「もっと恥じらいを持とうな!娘よ!」
名前を名乗り忘れたがエロ以外は面倒なので、再び戻るのは止めた。