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大将と姫様は性格の不一致?

 コーニング王国に入って6時間ほどでコルネル村という、人口300人弱の羊飼いを主な生業とする村に着いた。農家は全体の4分の1くらいだ。


「村があちこち壊れてます!」

「魔物に襲われたのかなぁ?」


 ユリアとカリンが馬車を降りてアタフタしている。大変だぁ。何とかしなきゃ! でもどうすれば? とでも考えてるんだろう。

 ユリアの言う通り柵や畑が荒らされている。破壊の規模は大きくないが、畑の被害は半分くらい駄目になってる。


「この辺りに魔物は居なかった筈だよ」

「あなた、ケビン、怪我をした方が居たら治療しますから集めて来て下さいね?」

「わかった! 母さん」


 冒険者だけあって、こういった事態には馴れてるらしい。庶民の間だと、この世界的に当たり前のことって知識はあるが、実際に見ると嫌な気分だ。

 魔物や盗賊、最悪だと国の兵士に襲われる村は結構あるらしいが、貴族はあまり当てにならない場合が多い。

 この領地の貴族も酷いと国境警備の兵士が言っていたし、お仕置きが必要かな?


「トール。炊き出ししてもいい?」

「ユリアもお手伝いします!」

「アタシも作る! お兄ちゃん、食糧使ってもいいよね?」


 リーゼの提案に張り切る2人。


「アルは何する? ごしゅじん、命令!」


 なんか俺が命令されてるみたいだな。


「俺とアルテミスは帰還の翼で王都に戻って食糧調達しよう」

「ん!」


 米は何ヵ月分も買っているが、補充しておいた方がいい。調味料もいっぱい買ってこよう。


 王都で買い物を済ませて戻ってきた頃には米を炊き終わり、おにぎりを作り始めていた。

 治療も終わって、ビリー達が事情を聞いているようだ。俺は帰還の翼の目印を回収してから、そちらに向かう。


「トール君。こちらが村長殿だよ。村長殿、リーダーのトール君です」

「いつ俺はリーダーになったんだ? 初めまして、トールだ」


 まあ旅の費用は俺が払っているし、方針も俺が決めてるからな。


「初めまして。村長のベイガーです。この度はありがとうございます。実は草原狼に襲われまして、羊や農作物が被害を受けたのです。ロクに食べてない所為で村人の怪我の治りも遅く、途方に暮れていました」


 草原狼は普通の狼より3倍大きな体格だが、一応動物だ。人間は食べないが家畜を襲う。狼なので当然群れで生活をする。害獣だな。


「俺はこの村に目的があって来たんだ。俺の店で働く人材集めだ。仕事を失った人間は雇うぞ」

「宜しいのですか?」


 話し合いの結果、全ての家畜を失った4組の家族、計21人が付いてくることになった。残りの村人は村の再建をするらしいので、見舞金に大金貨1枚をあげた。


「子供も連れて行けるなんて思ってもいませんでした! ありがとうございます!」

「しかし、いいのですか? 子供は大した仕事はできません」


 確かに労働力は低い。


「別に構わないぞ。俺の故郷では子供は働かないくらいだ」


 親達が吃驚しているので、おにぎりの完成まで子供達と遊んでよう。


 鬼ごっこで遊んでいるとおにぎりが2000個完成したので、リーゼ達が村人に配っている。


「お、おにぎりくれなんだな。ボ、ボクはお、おにぎりが好きなんだな」


 子供達を引き連れて、リーゼにおにぎりを貰いに来た。


「……その挙動不審な態度と変な格好は何よ?」


 ランニングシャツがリーゼには変な格好に見えるらしい。


「ボボ、ボクのく、国の裸の○将なんだな、ゆ、有名人なんだな」


 子供達と遊んでいたら綺麗な服に遠慮して触れてこないので着替えた。そしておにぎりとくれば……やるしかない!


「そんな挙動不審の将軍がいるわけないでしょ!? どれだけ平和な国なのよ!」

「しょ、将軍じゃなく、が、画家なんだな。お、おにぎりください」


 両手を突き出してちょーだいのポーズをする。


「お兄ちゃん! 上手だよ!」


 カリンには好評だ。


「……夫婦生活が不安になるくらい訳がわかんない……」


 リーゼが疲れたように項垂(うなだ)れている。破局の危機になる前にやめるか。

 ユリアとビリー達が草原狼を退治に行っている間におにぎりを食べる。


「おいしーっ!?」

「2日ぶりのご飯だ~」

「お腹がへって死んじゃうかと思ったよ」


 食糧も半分くらい食い散らされたらしく、食糧調達の当てができるまで節約していたらしい。最近は3日に1回の食事だったらしい。高いお米のご飯は初めて食べるそうだ。

 お米は生産に手間が掛かるので庶民には縁がない。使用人達も最初は驚いて、自分達が食べてもいいのかとオドオドしていた。


 大人達は恐縮しっぱなしだ。いちいちペコペコするので、鬱陶しいからやめさせた。

 次の村でも生活が苦しい村人を雇って、街に着いたら領主をシメテから店を探そう。

 どこかの店舗を買い取るか、バカ領主と繋がりがある悪徳商人から奪おう。

 商売を正しく行うには、領主と悪徳商人を両方潰さなければならないので早めにやろう。


 あとは女王に謁見して遺跡の場所を確認する。王家とエルフしか場所が判らないので仕方ない。

 他の国は、まだ手紙の返事が来てないのでコーニング王国が1番最初に向かう国になった。手紙がまだ届いてない国もある。

 コーニング王国の女王はいち早く遺跡にエルフと兵士を送ったが、パーヴェルの手下らしき奴に遺跡に着く前に皆殺しにされたらしい。

 自分達では無理だと判断して俺達を招いたそうだ。なかなか決断力がある女王だな。

 馬や羊毛の輸出で潤っている国なので、他国と喧嘩はしたくないんだろう。意地を張ってもしょうがないからな。



 ユリア達が無事に帰って来たので出発する。次のセイル村までは馬車で3時間くらいだそうだ。

 街で食糧を買う為に村の男達も何人か付いて来た。商人に配達を頼むらしいので人数は少ない。


「悪いけどケビンは御者席で休んでくれ。女子供を馬車に乗せたいんで俺は歩くけど、ケビンは操車があるからな」

「分かった! トールも武装はしとけよ?」


 裸足の子供達は汚れているので、母親と一緒にシャワーを浴びて貰って2階に上げた。

 アルテミスが得意気に教えたが、解りにくいのでユリアが教え直したので、アルテミスがどんよりしてしまった。


「子供と妻を乗せる為に旦那様が歩くなんて……すみません」

「俺は体力有るから大丈夫だ。気にするな」


 歩くスピードに合わせるから、次の村に着くのは5時間くらい掛かるそうだ。

 暇は大嫌いなので、闘気と魔法の修行をしながら歩く。光を纏う俺は目立つので盗賊達も警戒するだろう。

 武装させてはいるが、足手まといが居る時に襲われたら面倒だし、襲われたらライフイーターで問答無用に倒すかな。


 次の村も税金のせいで暮らしは貧しい。村共同で馬を育てて売っているが、税金で取られてギリギリの暮らしになっている。

 なので村の生活に嫌気が差した家族や孤児などが計26人付いてくることになった。


「どこも貴族の横暴が問題になってるわね…………あたしの国もトールが居なかったら」


 村での休憩中にリーゼは自国の貴族を思い出して腹を立てている。リーゼの立場では内政干渉になるので何も出来ないのが悔しいのだろう。


「にーちゃん! スカートめくりに失敗した! 助けてくれよー!」

「よし任せろ! パンツに関してはうるさいぞ!」

「人が悩んでるのにバカなことするなー!」


 リーゼに怒られてスカートめくりは失敗してしまった。


「暇なんだ。遊んでくれ」

「子供か!? 未来の妻が悩んでるんだから、どうしたの? くらい聞きなさいよ!!」

「……聞かなくても解るさ。悩まなくてもその内なんとかなるって」


 俺がむかつく奴を放置する訳ないからな。


「もう……ノンキなんだから」



 1時間ほど休憩してから、この領地の領主、アルクス伯爵の街に向かう。徒歩だと丸1日は掛かるだろう。

 今日は3時間ほど歩いて夜営の準備を始めた。夜営なのに料理しかすることが無くて男達は居心地悪そうだ。

 俺はこの間に寝て、不寝番に備えた。人数が多いので料理ができるまで3時間は眠れた。

 鍋や食器が足らないから順番に食べたので、俺が食べ終わる頃には夜になっていた。


 いつものように修行をしながら警戒する。馬車で全員は寝れないので村人達はテントを張って寝ている。

 ユリア達は馬車の2階で寝させた。子供達を2階に寝かして自分達はテントで寝るつもりだったが、姫君に何かあったら逆にコーニング王国に迷惑なので説得した。

 ユリアも封印強化に欠かせないので安全には気を付けなければならない。個人的にも大事にしたい。


 闘気の修行をしながら奥義書を読み込む。理解の出来ない部分もあるが基本の必殺技は理論は解る。

 まあ奥義が簡単に覚えられる訳がないので焦らないように地道に修行しよう。

 闘気や魔法のスキルレベルを上げるだけでも威力が上がるので無駄にはならない。俺は朝まで修行をして、朝飯を食べたら馬車の屋根の上で昼寝をした。


 それから何事もなく進めた。さすがにこの人数に仕掛ける奴は居ないらしい。

 何人かの気配を感じたが、数十人の武装集団を見て引き返すようだ。

 追って殲滅を繰り返していたら大金貨3枚くらいの儲けが出たので気分が良い。悪党退治と金儲けができると気分爽快だな。



 夕方になる頃には街に到着できた。その際に門の守備兵士が騒いだので、村人達に俺達の素性がバレてしまった。

 知らずにご無礼を! とか言い出したので業務命令で禁止した。

 領主から招待されているそうだが断って兵士に宿を紹介して貰い、宿に向かった。


 村人達はヘトヘトになっているので、幾つかの宿屋に分けて泊まらせる。

 1つの宿に全員泊まるのは部屋が足りないし、俺達が泊まる宿屋は大きくて部屋も空いていたが、高過ぎて村人達が遠慮したので複数の宿に泊まることになったのだ。

 経済的には1ヶ所で金を使うより、いろんな所で金を使う方がいいので良かったかもしれない。


 馬車を預けて部屋に案内して貰う。俺とユリアとアルテミス、リーゼとカリン、ビリー達一家の3部屋に分かれた。


「ご主人様、お疲れ様でした。お風呂でマッサージしますね!」


 ユリアがすぐに服を脱いでお風呂の準備を始めた。アルテミスもつられて脱いだが、お風呂の入れ方が判らないのでキョロキョロして困っている。


「ユリア、アルテミス。俺は今夜出掛けるから、夕飯のあとは先に寝ててくれ。お風呂は3人で入ろうな」

「はい! 分かりました!」

「ん! フロ! ご奉仕する」


 夜のうちに領主を懲らしめないとな。命令を聞かないなら殺すしかないけど、息子が居ないらしいので領主が替わると法まで変わりそうだしマズイよな。

 命令を聞かないなら奴隷の首輪でも付けるかな? ユリアを助けた時のがあるし、皮ベルトは切ったけど直せばいいよな。


 そんなことを考えていたら、お風呂の準備ができたので3人で入った。

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