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コーニング王国へ出発

 パーティの翌日に居住性を高めた馬車が出来上がった。以前は盗賊などに襲われることを考慮して幌馬車だったが、返り討ちにしてレベル上げと資金調達を兼ねる為に2階建ての箱馬車だ。

 一応姫君も居るので、対外的にも必要な見栄だと思う。

 何より、現代人の俺には普通の馬車は揺れすぎて嫌だというのが判明したので注文しておいた。


 キャンピングカーのように1階にはシャワー室とトイレも付けた。排水の仕掛けに苦労したらしい。2階は女の子の寝室にする。

 大きいけど街の大通りの道端は8メートルくらいあるので問題ない。

 1階にはソファーを置いたので座り心地が良い。馬車を牽くのはパパりんがくれた軍馬4頭だ。

 御者はビリーとケビンが交替でする。荷物は全員のアイテムボックスに分けて入れた。

 万が一はぐれても食糧や水に困らない。


「ご主人様、すごい馬車ですね!?」

「ああ。旅は快適にしたいからな」


 悪党が寄ってくるなら餌食にしてやる。


「お兄ちゃん。コーニング王国ってどこにあるの?」


 地図を見せて説明した。この大陸の最南端にこのレクス王国は存在する。その北西にコーニング王国、北東にレジェ王国が在る。

 2つ共レクス王国より人口が少ない小国だ。国土も2つ合わせてレクス王国と同じくらいしかない。


 これから行くコーニング王国は広い草原が多いので、馬と羊毛の産地として、小国のわりに金が有る。

 支店を出して商売の手を拡げるつもりだ。奴隷をいっぱい買おう。奴隷は俺の商売に欠かせない人材だ。


「準備はできたわ! お父様達に挨拶も済ませたし、出発するわよ!」


 ポニーテールを(なび)かせた胸当てにミニスカート姿のリーゼが宣言する。


「馬の方も問題ない。いつでも出発可能だよ」

「最初は父さんが御者を頼む。街の中だとオレじゃ無理だ」


 ビリーとケビンも問題ない。


 魔女っ娘帽子をかぶり、杖で地面をトントンしていたアルテミスも、馬車が気になるのか時々ミスって自分の足を突いている。


「それじゃあ乗ってくれ。乗る前に魔力登録をしてくれよ。登録してないと警報が鳴るし鍵も開かない」


 金剛貨5枚費やして完成した馬車だ。金属製だが重さは魔道具で軽減してあるので、普通の馬車と変わらない。

 防犯にも気を使ったので、登録した人間以外はドアすら開けられない。


 使用人達に見送られて出発する。揺れは箱の部分を数㎝浮かせているので揺れは少ない。この部分には魔法結晶を20個も使った。

 馬車の中は前部分がソファーを2列並べ、後ろ部分に2階への階段とトイレにシャワー室が在る。

 明かりを生み出す魔道具のお陰で内部は明るい。俺はシティボーイなので、これくらいじゃないと嫌だ。

 俺の現在の月収は金剛貨7枚くらいなので、金を使って経済に貢献したい。お大尽遊びもしたい。

 かのジャッ○ー・チェンも稼いだら社会に感謝するように言っているらしい。


「ご主人様。窓を開けてもいいですか?」

「アルも外、見たい!」

「いいぞ。危険そうなら閉めろよ」


 馬車には全方向に1つずつ窓が付いている。ガラス製ではなく、壁が開けられるだけだ。防犯を考えてのことだ。


「リーゼ、隣の国まで何日掛かるんだ?」

「今いる王都は国のまん中くらいにあるから……最短で3日くらいじゃないかな? 街や村に寄って行くと5日から7日だと思う」


 貴族とやり合ったし、揉め事は嫌だからコーニング王国に入るまで寄らずに行こう。居住性の高い馬車だから大丈夫だろう。


「ごしゅじん! アレは食べ物?」


 アルテミスが指差しているのはジャイアントラビット、筋肉が凄くて食べられたもんじゃないが、体高3メートルの巨体のわりに大人しいので乗り物として利用する人もいる。すげえ酔うらしいけど。


「ますたー、魔法撃っていい?」

「イヤ、なんでだよ!」

「ジャイアントラビットさんが魔物に襲われました!」


 ユリアの焦った声で理解した。戦闘だからマスターと呼んだらしい。


「撃っていいぞ。ビリー! 停まってくれ!」


 馬車が停車し、窓から突き出した杖から電撃が(ほとばし)る。

 速度と指向性が有るので狙い撃ちしやすい。極めた雷魔法は一撃でコボルトの集団を消し炭にした。


「ますたー、ウサギ助けた。ん!」


 得意気に頭を向けてきたので、抱っこして撫でる。


「ん~、ごしゅじんもっと!」


 再び走り出した馬車の中で微妙に険悪なムードが漂う。アルテミスの頭を撫でるだけでは俺がつまらないので、お尻も撫でたらリーゼが俺の脇腹をツネっているのだ。

 しかしお尻の魅力には抗えないのでツネられるしかない。ユリアは外を見て足をパタパタさせているし、カリンとマリンは前の席で世間話に夢中だ。


 ケビンは交代に備えて眠っているので援護は期待できない。当のアルテミスはお尻を撫でられても嬉しいらしく半眼のままで頬を染めている。他人と触れ合うのは久々なので嬉しいそうだ。

 だからリーゼもツネるだけで怒鳴れないのだ。優しい嫁で嬉しいけど俺にも優しくして欲しい。

 アルテミスは撫でられるのが好き、俺はお尻を撫でるのが好き、一緒じゃないか。


 そうだ!! リーゼのお尻も撫でれば機嫌が直るかもしれない! アルテミスだけ撫でるから拗ねるんだろう。

 隣に座っているリーゼのお尻を撫で回す。お詫びの気持ちと愛を込めて。


「リーゼ、愛してる」

「じゃあ他の娘のお尻を撫でながら言うな!」


 パーンと俺の頬が鳴った。その音で寝ていた奴までこっちを見たほどだ。



「う~む。なぜ怒る? 未来の嫁のお尻を撫でて悪いのか?」


 シャワーを浴びながら考える。1畳くらいの広さだがシャワーを浴びるには充分だ。


「ごしゅじんのコレ! 伸びた! なぜ?」


 俺の1番大事な所を引っ張って上目遣いで訊いてくる。


「アルテミスのお尻を撫でたから伸びるさ! だって一生懸命生きてるんだから」

「お~、ごしゅじんは生き物を飼ってる! エサは?」


 見上げるその瞳には何の(けが)れもない。


「可愛い女の子のパンツとか見ると伸びるぞ! 超元気だ!」

「パンツ……脱いだのある! 食べる?」

「こいつは食べないんだよ」

「……不死身の生き物?」


 とても打たれ弱いので大事にしてくれ。

 レベルが上がると身体は強くなるが、コレだけは無理だ。

 生命力も上がって一晩で何人も相手にできるのに。耐久力だけは上がらない。早くはないが!


「取り敢えず身体を洗うか」

「ん! 奴隷のシゴト! アルにおまかせ!」


 アルテミスが手拭いに石鹸を擦りつけ泡立てる。


「ソコは俺の1番大事な所だからな? 命を失うより失いたくないモノだ!」

「ん! 優しくする」


 俺も手に泡立てるとアルテミスの身体を洗う。念入りにお尻を洗う。1時間掛けて洗った。


「身体をちゃんと拭けよ? 風邪引くぞ」

「ごしゅじんが先」


 両手で手拭いを持ち、背伸びしてゴシゴシするのが可愛い。風邪を引いてはマズイので拭きっこする。

 アゴの辺りまで長さの髪を拭いてやると、両手をペンギンみたいにパタパタさせてご機嫌だ。

 シャワー室から出るとカーテンで作った脱衣所で着替える。女の子がパンツを穿く仕草は脱ぐよりエロいと思う。

 暑いので浴衣に着替えてカーテンを開けた。


「上がったか? 次はオレが…………寛ぎ過ぎだろ……その格好は」


 敵が来てもこのまま戦えば良いさ。俺には闘気がある。早く戦気を覚えてお師匠を超えたいな。


「そろそろ昼飯の準備をするか! 腹も減ったし」

「アタシが作りたい! お兄ちゃん、覚悟してね!」


 覚悟しなきゃならん料理なのか?


「違うの、トール君。カリンちゃんと男の子は胃袋からって話をしたから」


 俺の微妙な顔を見てマリンが補足説明をしてくれた。


「ユリアもお手伝いしますね? カリンちゃん」

「あたしの手料理を食べたいなら作ってあげるわよ」


 リーゼもさっきのことでやり過ぎたと思ったのか、腕を組んでソッポを向いたまま提案した。頬が赤い。


「じゃあ頼む。嫁さんの手料理は男のロマンだ」

「そうよね! 頑張るわ」


 停車して、魔道具を用意する。魔力を流すと熱を持つコンロのような魔道具だ。魔法結晶を使っているので魔力が無くても大丈夫な高級品だ。屋敷にも備え付けてある。


 食糧と調理器具と机を取り出して下拵えを始めるカリン達。岩の上に座って眺める俺とアルテミス。馬の世話をしているビリー。

 料理ができないとやることないな。


 カリンは肉じゃがを作るつもりらしい。ジャガイモを剥き始めた。ユリアがお湯を準備してから肉を切る。

 マリンは土鍋で白米を炊いている。30分もあればできるそうだ。

 リーゼはスープを作り出した。出汁を取っている間に具を切っている。意外に手際がいいな。

 何気なくステータスチェックをすると、カリンとリーゼに料理スキルが付いていた。

 練習したから張り切っていたらしい。たぶんレパートリーは少ないだろうけど。


「上がったぜ。なんか手伝うことはあるか、母さん?」

「大丈夫よ。魔道具が便利だから」

「それじゃ父さんを手伝うか」


 よく働くな。


「ん? 気配をなんとなく感じるな」

「気のせいじゃないぞ、トール君。ケビン、戦闘準備だ」


 ビリーは気配察知2だからな。俺は修行してるけどまだ1だしな。ビリーほど明瞭に感じ取れない。


「俺がやるよ。暇だし働かないと飯が食いづらい」


 剣を腰に()げて森の方に行く。


「てっ、てめえっ! 近付くな!」

「それ以上近付いたらぶっ殺すぞ!」


 30人くらいのレベル10前後の小汚ない男と女が殺気を放つ。


「ところで、網タイツってエロいよな?」


 俺は魅了の呪文を唱えた。


「な、何言ってんだ? このガキは」

「頭がおかしいんじゃないか?」

「でも網タイツはエロいよな!」

「確かにエロい!」


 盗賊は魅了された。更に唱えよう。


「むちむちの太ももが網の間からハミ出して最高だよな?」


 盗賊達はウンウン頷いている。女盗賊は呆れているが。


「たまんねぇな!」

「まったくだ!」

「ガキのくせに分かってるじゃないか!」


 俺はニコニコして剣も抜かずに近付いた。


「オッサン達の好みは何だ?」

「そりゃオッパイだ!」

「おう! オッパイは良い!」

「でもオッサン達には勿体ないな」


 抜き手も見せずに一振りで首を3つ刎ねた。

 血が噴き出す前に盗賊達の間をすり抜けて次々に斬り落とした。

 返り血が掛からないように、常に動き続けて距離を取る。闘気で身体を強化すると、動体視力も上がるので噴き出す血が止まって見える。


「エロ話は好きだけど悪党は嫌いなんだ…………命令だ、死ね」


 俺の好き嫌いの激しさは手に負えんぞ。

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